2017年10月06日

猫町旅日記ーバリ島編7(最終回)

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いつの間にか眠りに落ち、昨日と今日が重なりうように入れ替わり、日の出前の鳥のさえずりと広場からのお経と音楽で目が覚めたバリ島滞在最終日(9月14日)。この日もウソみたいにきれいな朝焼けに目を奪われていたら「ミャー」と高く澄んだ声でタマが鳴いて擦り寄ってきた。期せずして出会った可愛い猫との別れを惜しむ時間。この日僕はデンパサールからの最終便で帰国することになっていた。出発までに約半日の時間があるので、遠出はせずに、ここから歩いて回れる範囲でバリの村の風情と雰囲気を楽しんで過ごすことに。バリ島にはガイドブックに載るような特別な観光地ではないエリアにも古い仏塔やバリらしい門構えがたくさんあって、どこを眺めても飽きることがない。色鮮やかなチャナンがあちこちに供えられて、本当にそこかしこに神様がいるように思えてくる。

朝食のあと、歩いて朝市まで出かけることにした。まだ正午前だが太陽は高く昇り色濃い影を映しながら容赦なく降り注ぐ。暑さと汗と湿度を噛み締めながらマーケットを往復してたくさんのお土産を買う。コンビニ事情も知りたくて入ってみたのはインドマレット(Indomaret)。バリにはサークルKやアルファマート、ミニマートとたくさんのコンビニがありましたが、インドマレットはインドネシアで一番大きなチェーン店だそう。ぱっと見た感じは日本のコンビニとそっくりなんだけど、やっぱりよく見れば文化の違いが面白い。調味料売り場にはインドネシア名物サンバルの小分けパックなどがたくさんあってお土産にちょうどよかった。コーヒーとかお茶などの暮らしに密着したものの微細な違いも興味深い。インドネシアのお金はルピア、日本円の100分の1という感覚。ゼロの数が多くて最初戸惑ったけれど一番高額な10,0000ルピア紙幣が約1000円だと考えるとすぐに慣れました。

友だち連中に配るお土産として買ったのは前述したサンバル、お香、石鹸、豆菓子なんかも日本には売ってなさそうな、美味しそうなやつが多かった。ここぞとばかりに散財。マーケットの一角には趣向を凝らした木細工屋さんがたくさんあって、猫の形をした秘密箱が可愛くて購入、父親への土産に。バティック(バリ特産の布)で織られた部屋着によさそうなムームー的なワンピースを母親に。自分用にいかにもバリ的な、なにか形に残るものを探していたんだけど、僕の心を撃ち抜いたのはシャムみたいな柄の猫が瞑想している木の人形でした。

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買い物をたくさんして満足。英語がほとんど通じないはずなのに、身振りや指先の仕草で3日前よりうまく意思疎通ができるようになっていることに気づいてハッとした。炎天下、日陰を探しながらゆっくり街歩きを楽しみました。放し飼いの犬、スマートな猫、咲き誇る花、クスクスと笑いあっている子どもたちが「ハロー」と僕に手を振るので「ハロー」と手を振り返すと、またクスクスと笑って走り去っていった。昼食は町の屋台で買ったナシチャンプルー、とても安くて美味しかった。お昼過ぎに家に戻り、僕は名残惜しくて、またぷかぷかとプールに浮かぶ。水に疲れたら日陰で本を読んで、眠くなったら寝るという至福の数時間。トシコさんのお気に入りだというマッサージ師を呼んでくださったので、僕も旅の疲れを揉みほぐしてもらった。完璧なバカンスである。

今回の旅に僕はギタレレを持参していた。なにか思い立ったらすぐ楽器に手を伸ばせるようにしていたのだけど、そんなに簡単に音楽の神様は褒美をくれない。しかし旅の最終日にこのギタレレが役に立つことになろうとは…。午後の微睡みの時間を過ごしていた僕の耳に「キャッキャッキーッ!」と奇声が聞こえてきたので窓の外を見ると、野生の猿が10匹ほど徒党を組んで庭を闊歩していた。ここ最近野生の猿が悪さをして花や果物のつぼみを食べ散らかしてしまうことが続いているらしかった。「また来たわ、猿たち。こら!こら!!」とトシコさんがパンパン手を鳴らして猿を追い払おうとするも、猿たちは遠巻きにまだこちらを覗いている。ここは東洋から来た男が威厳を示さねばなるまい。僕はギタレレを片手に庭へ出て、E/F/Eとフラメンコみたいな調子でジャカジャカとかき鳴らしながら近づいていくと猿たちは「は!?」という顔をしてひるんだ。そしてギタレレのボディをバンバン叩いて庭を駆けると猿たちは散り散り四方へとに逃げ帰っていったのでした。「これでもうしばらくは来なくなるかもねえ」とトシコさんにも喜んでもらえた。この5日間の旅の間で一番息を切らした瞬間でした。

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最後に早めの夕飯に美味しいちらし寿司をいただく。あっさりした味が僕をスムーズに非日常から日常へと誘ってくれるような気がした。僕は最後にリビングで歌を数曲歌ってこの数日間のお礼を。ここでもギタレレが役に立ちましたね。本当に夢のような時間、どれだけ感謝しても足りない。お世話になったトシコさん邸を出発。空港までの道はエヴァンさんが車で送ってくれる。「指差しインドネシア語会話」という本で憶えた言葉で「ラジオつけてください」と言うと、エヴァンさんはニコっとしてご機嫌なチャンネルを鳴らしてくれた。もっといっぱい喋れるようにメモしてたんだけど、うまく切り出せなかったな。40分ほど走ったらデンパサール空港に到着。最後の最後に「Sampai jumpa lagi!(サンパイジュンパラギ=また会いましょう)」とちゃんと言ってエヴァンさんとハグすることができました。帰りの飛行機のなかから見た星がびっくりするくらいきれいで、このまま起きていようかと思ったけれど、気づいたらちゃんと朝まで眠っていました。

たった5日間の旅でしたが、自分にとってはとても良いタイミングでの心の開放だったような気がします。東京に帰ってきてからモノの見え方が変わった気もする。出会ったすべての皆さん、お世話になった方々に感謝。サンパイジュンパラギ、またすぐに会いましょう。以上、猫町旅日記バリ島編でした。

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2017年10月03日

猫町旅行記ーバリ島編6

まだまだ終わらない旅日記、滞在2日目(9月13日)を振り返ります。クロボカンでショッピングを楽しんだあと、そこからバリ島の南部バドゥン半島の断崖にあるウルワツ寺院へと向かう。車で1時間ほどの距離のはずがものすごい渋滞で車が進まない。僕はどんどん眠くなっちゃって気がついたら車窓の外はオレンジ色がかった夕方の空気。空気にも色があるなあとバリに来て何度も感じた。なんとか日暮れ前に到着、エヴァンさんが運転を頑張ってくれた。ウルワツ寺院からはインド洋を見下ろす雄大な景色がのぞめ、海へと沈む夕陽、そして伝統のケチャダンスが一度に楽しめる場所。

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ウルワツ寺院はとにかく風景のスケールが大きくて言葉でうまく表せないほど。一気に目が覚めた。寺院拝観料を払って、肌を隠すためのサロン(腰布)を巻いて気分が盛り上がる。寺院のなかにはは名物の野生の猿がたくさん。メガネを取られたりペットボトルを取られたりする被害が多く、この日も髪の毛を引っ張られて悲鳴を上げる観光客もいた。ここでは猿は神の使いだそうで、猿のやりたい放題なのです。断崖絶壁からの眺め、「インド洋の荒波」と呼ぶに相応しい白い泡を立てた波が無限に打ち寄せてくる海は圧巻だった。

メインイベントはなんといっても日没のタイミングで行われるケチャダンスだ。岬の突端、屋外に作られた円形のコロシアム状の会場へ入場するとすでにたくさんの観衆がダンスの始まりを待っていた。ケチャダンスとは数十人の半裸の男性が、座った状態で円陣を組み、リズミカルな「ケチャ、チャッ、チャッ」という合唱に合わせた舞踊。大きな鉄琴を叩き鳴らすガムランと違って楽器が使われずすべて声で構成されるのが特徴。きらびやかな衣装を来たダンサーたちが主役だが、その物語は前日に観たレゴンダンスとほぼ同様だったので、内容含めて面白く観劇できました。王宮での厳かなレゴンダンスに比べるとお客さんいじりの一コマがあったり、刻一刻と変化していく空の下で観ている一期一会感に興奮しました。燃え盛る炎の上を歩くファイヤーダンスもすごかったな。ただ日が暮れていく1時間の美しさ、かけがえのなさのようなものを味あわせてもらったような気がします。

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興奮冷めやらぬまま人の波に揉まれて会場を出ると、また何食わぬ笑顔でドライバーのエヴァンさんが簡単にこちらを見つけて車に乗せてくれた。僕は「テレマカシ(Terima Kasih)」と、ようやく憶えた感謝の言葉を笑顔とともに返す。また車に揺られてサヌールという町へ。今日は夕飯にインドネシア料理以外のものを食べようということになって、マッシモ(MASSIMO)というイタリアンレストランへ。地元で暮らすトシコさんは「毎日バリ料理食べてたら体が持たないわ」とおっしゃっていただけど、僕のおなかもちょうど一休みするタイミングだったかもしれない。人気のお店なのでパスタもピザも美味しく、まわりの顔を見渡しても世界中から旅人が集まっている感じがして居心地がよかった。自分もストレンジャー気分なのが良い。こっちではもっぱらビンタンビールを飲みました。とても飲みやすくて美味しい。帰ってきてからいろいろ探してるんだけど日本にはあんまり売ってない。

バリ島は市街地は夜遅くまでお店が開いていて明るくて賑やか。誘蛾灯におびき寄せられるように旅人たちがあちこちにたむろしている。夜更かしな町だなあと眠い目をこすりながら、車の窓を開け放って虫の鳴き声を聴きながら宿まで。さすがにこの日は予定を詰め込みすぎて、もうフラフラ。また気づいたら夢のなかにいて、夜明け前の五時に目が覚めたのでした。いよいよバリ島最終日となりました。(気まぐれに続く…)

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2017年09月29日

猫町旅行記ーバリ島編5

王宮のレゴンダンスを観てから宿に帰ってきたら、いつの間にか寝ていた。夜が明ける前から起き出して昼寝もせずに濃厚な時間を過ごしているから当然だ。この日はポチ実が夢の中に出てきた。今回の旅の間、我が家に若き猫番くんが泊まり込んでくれている。あの人見知りなポチ実が彼には慣れてしまって、庭の散歩をしたり甘えたりしてる画像が東京から送られてきて、僕はなんの心配もなく旅を楽しめた。これを2017年留守番革命と名付けたい。

2日目の朝も空が暗いうちに起床。村のお寺から聞こえてくるお経と音楽に、もはや熱心に耳を澄ます僕がいた。虫の鳴き声の響く庭に小さな影があった。目を凝らしてみるとそれは猫だった。首輪をつけたかわいい猫はお隣のおうちに飼われているタマという猫らしい。近づくと寄ってきて「ニャア」と高い声で鳴いた。スタイルが良くて、ちょっとエキゾチックな顔つき。やっぱり少しポチ実が恋しくなった。トシコさんの家のお隣はジャカルタで暮らす華僑の方の別荘、せっかく日本から来たのなら、とそのお宅を拝見させていただいた。水が漲るプール、アウトリビング、川と渓谷を見下ろす風景も素晴らしいし、門構えも立派でため息が出た。常夏の島で暮らす日常を夢想しながら、さんさんと太陽の光を浴びてプールに浮かぶ。素晴らしい時間。

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この日はバリ滞在中もっとも体力的に無茶なスケジュールを組んだ。海に沈む夕陽が見たいと僕がリクエストしたから、移動距離も増えることになった。まず車で走っている途中で気になったギターの看板を掲げたお店を覗きに。安物のウクレレにインドネシア風の絵を描いたものをお土産物屋でたくさん売っていたのだけど(きっとハワイにも台湾にも同じものがあるんじゃないかな)そういう類のものを予想していた僕らには圧倒的なギター工房だった。ブルーベリー・ギターズ(Blueberry Guitars)というそのお店、もともと仏壇職人だった方がギター作りをアメリカで学び、今では世界に名だたるプレイヤーにオリジナルギターを製作している。笑顔が優しいワヤンさんは「むかし徳島にいて仏壇を作っていたんだよ」と流暢な英語で話した。ギターの鳴りも素晴らしく、値段を聞いて納得した。「マーティンやギブソンは素晴らしいギターだけどただのギター。僕のは素晴らしいギターであり芸術品!」とニッコリ。

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ギター工房を出発して次に向かったのはバリの中心地デンパサール近くにあるクロボカンというエリア。家具屋やハイセンスなショップが並ぶ、ショッピングにも最適な街だそうだ。ワルン(warung)という庶民食堂でナシチャンプルを。ナシチャンプルとはごはんと数種類のおかずが一皿に盛られたワンディッシュプレートのこと。バンブク(Bumbuku)というお店に辿り着いて、美味しいランチに舌鼓を打った。昔は辛いものが苦手だった僕もなぜかこの10年ですっかり辛党になってしまって、バリ島のご飯は何もかもが美味しい。サンバルマタという唐辛子やレモングラス、シャロットなどを炒めずに作ったチリソースはくせになる。値段も本当に安くてびっくりする。ここでも細面の美しい猫に出会った。

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そこからしばらくショッピング。流木にガラスを吹き付けた花器がなぜか猛烈に欲しくなった。FOCUS
DESIGNというお店、ひとつひとつ形が違うなかから直感的にピンと来るものを時間をかけて選びました。レコード屋さんもあった。僕はガムランのカセットテープが欲しかったんだけど、もうテープの文化は終了しているみたいでCDがたくさん。欧米のレコードもたくさん置いてあって、R.E.M.もちゃんと2作品あることをチェック。CDはだいたい日本円で800円くらいかな。ペット用品店があったので入ってみたら「こんな地元の小さな店に何しにきた?」っていう顔をされたんだけど、ポチ実へのお土産に猫用のスナックを購入。バリにはとにかく犬がたくさんいる。道端を紐もつけずに我が物顔で歩いている犬天国だ。バリ島の代表的な産物としてバティック(Batik)と呼ばれる布がある。バティックとは「ろうけつ染め」のことで、布に“ろう”で模様を書き染料につけて布を染め独特の風合いを醸し出す。バティックも時間をかけて吟味して選びました。とにかく天気が良い日で、ちょっとこのとき僕は日差しにやられて熱中症寸前だったかもしれないな。

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一日が長い…。歩きまわってくたびれたところでエヴァンさんが車でピックアップしてくれた。道路はものすごい渋滞。ウルワツという岬にある寺院まで移動するのだけど、僕は車のなかでもう全然起きていられなかった。1時間ちょっとの道程だっただろうか、ハッ!と目が覚めるとさっきまでの街なかとは全然違う景色のなかにいた。(気まぐれに続く…)  
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2017年09月26日

猫町旅日記ーバリ島編4

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バリ島ではここ1週間くらいアグン山が噴火するかもしれないという不穏なニュースが連日届くけれども、旅日記の続きを続けます。まだ到着翌日の実質1日目(9月12日)のことを書き連ねています。スーパーマーケットでのショッピングを楽しんだあと、再び車に乗ってKARSA SPA(カルサスパ)という、ウブドゥで一番人気というスパへ向かう。街なかから結構な距離、景色はどんどん田園風景になっていくけれど、道を歩いている旅行者が多い。ロングステイしている西欧人はとにかくよく歩くらしい。1時間くらいの距離なら足で移動するみたい。たどり着いたのは蓮の池に花がきれいに咲く素敵なロケーション。見たことのないような花も咲いている。東京にいるときも整体やマッサージは比較的よく受けるほうだけど、こういうところでの本格的なやつは初めて。

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メニューの一番上に書いてあったコースを選び、すべてを流れにまかせる。とにかく忙しかった初夏から盛夏、僕の肩や背中はがちがちにこり固まっているから、なにをされたって気持ちがいいに決まっているのです。寝てしまうと気持ちがいい感覚を味わえないから、と貧乏根性で必死で起きていようと頑張ったけどやっぱりいつのまにか夢のなか、ハッと気づくと90分が過ぎていました。全身、頭も顔もふにゃふにゃに。「いいな!バリ島、なんか最高だな!」と、このあたりからもう旅が終わるのが寂しくなって、2回目のバリ島旅行のことすら妄想するようになっていました。

ウブドゥの町に戻って通りを歩く。ずっと車移動だったのが、ようやくここへ来て自分の足で闊歩。雑然としていて賑やかで色鮮やかで、強烈な異国情緒がある。印象的なのはチャナンという椰子の葉と花で作られたお供え物が至るところにあり、頭の上にチャナンをたくさん持った人が仏塔などにお供え物を置いてお線香をひとふり一礼している姿。車やバイクにもチャナンが結び付けられている。神がいたるところに存在するとされるバリヒンドゥー教ならではの風習だそう。

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賑やかな町を何往復かして、アルミの小箱やらざらっとした懐かしい手触りの紙と封筒とかを買ったりして、コーヒーを飲んで一休み。となったら猫好きの僕はコピルアックを飲まなければならないだろう。「kopi」は「コーヒー」、そして「luwak」(ルアック)は「ジャコウネコ」の意味。コピルアックは、ジャコウネコにコーヒーの実を食べさせ…それ以上の詳細は検索して調べてみてください。とにかく美味しくて貴重で高価と言われているコーヒー。普通のコーヒーの3倍くらいのお金を払って飲んでみました。濃厚、ベトナムコーヒーっぽいけど、まあ、普通。普段自分がいかに美味しいコーヒーを飲んでいるかということをいつも旅先では実感しますが、バリ島でもそうでした。夕飯は現地の人が演奏するジャズの生演奏を聞きながらサテ(焼き鳥みたいなやつ)。これも美味しかった。

そしてこの日のいくつかのメインイベントのトリを飾る、王宮でのレゴンダンスへ。ステージの左右にガムランが並ぶ様にワクワクする。あっという間に屋根がある半屋外の会場は満員になり、19時にガムランの荘厳な音楽が鳴り始めた。目もくらむような民族衣装を身に着けたダンサーたちが登場、その指先の動き、しなり、所作に釘付けになった。パンフレットにだいたいのあらすじが書いてあったので、ストーリーもだいたい把握。どんどん盛り上がっていく音楽と踊りにこの島のもうひとつの熱狂的な一面を見た思いがしました。美しかったなあ。宴が終わっても耳にはじんじんと金属音の響きが残っていました。

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スマホで連絡を取り合っているわけでもないのに運転手のエヴァンさんは完璧なタイミングで僕らを見つけてくれる。帰る道すがら、さすがにもうクタクタの僕は夢とうつつを行ったり来たりしつつ、カーラジオから流れてくるインドネシアンポップスに「これはWEEZER風、これはテイラー・スウィフト、これは韓流風?」と聞き耳を立てていました。車の窓を開け放ったままで。(気まぐれに続く…)  
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2017年09月24日

猫町旅日記ーバリ島編3

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バリ島で初めての朝、まだ夜が明けていない4時に目が覚めた。正確に言うと、外から聞こえてくる不気味な呪文のような声に起こされたのだ。それはお経?それとも酩酊したおっさんの叫び声?とにかく地の底から響くような声だった。僕は暗闇に目を凝らし、iPhoneのボイスメモにそれを記録した。そしてそこに音程のある打楽器の規則的なリズムが加わった。竹の筒を叩いているような軽やかな音。だんだん明るくなっていき、真っ赤な朝焼けの空がとてもきれいで一気に目が覚めた。呪文のような声は歌に変わった。異国にいる感覚が僕を包んでいく。「最高やんか…」僕はひとときもこの島にいる歓び愉しみを無駄にしたくないと思った。

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リビングに隣接したバルコニー、アウトリビングで朝ご飯。お香の匂いと蚊取り線香の匂い。パンとサラダ、そして極彩色のフルーツ。この日はお昼前には街へ出かけようということになっていたけど、朝食が終わった時点で8時。なんとゆったりとした時間。お庭に小さなプールがあるということを聞いていたから水着を持ってきていた僕、いったい何年ぶりの水浴びか。常夏のバリ島は、9月は乾季で昼間は30度になる。鳥のさえずり、虫の声を聞きながら浮き輪で浮かんで青い空と形を変えていく雲を眺める至福。日差しは熱く降り注ぐけど日陰に入ると涼しい風が心地良い。「地上最後の楽園」と呼ばれる理由がだんだんわかってきた。

お昼前に出かけて、トゥグヌンガンの滝(Tegenungan Water Fall)へ。ウブドゥの南スカワティを流れるプタヌ川下流にある落差20mのこの滝の存在は、以前から地元の方に知られていたが、滝つぼまで下りる道が急なけもの道しかなかったため、遠くから眺めるだけの観光ポイントだったそうで、あまり人気がなく、知る人ぞ知るといった場所だったのが、近年滝つぼまで行ける道や駐車場などが整備されたことにより、観光客が立ち寄る、人気観光スポットになったらしい。

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バリ島はどこを眺めても緑が色鮮やかで目がすーっとする。トゥグヌンガンの滝を見下ろすこのあたりも言ってみればジャングルみたいなものだ。「滝つぼまで行きますか?」「降りて戻ってくるだけで小一時間かかるよね(そして足腰が終わっちゃうよね)」「んん、また次回で!」とその壮観な風景をこの目に焼き付けました。ここでの時間はゆっくり流れるけれど、やっぱり限りがあるものだから。お昼ご飯を食べにウブドゥへ移動。世界的に有名なアマンリゾーツが1989年、タイのプーケットに続いて2番目にオープンさせたアマンダリは宿泊するにはため息がでるような豪勢なホテルなのだけど、ここのレストランで美味しいご飯をいただくことができるのだ。プールで泳ぐ宿泊客を眺めながら(日本人客だった)僕はナシゴレンとノンアルコールのジンジャービアを。ひとくち食べてその複雑で奥深い味にびっくりした。ナシゴレンってだいたいフェスとかでしか食べたことなかった。1990年代に渋谷のモンスーンカフェでレコード会社の人に食べさせてもらったのが最初だったかな。これがリアルナシゴレンなのか!と目からウロコ。ジンジャービアもジュースみたいな味で最高。

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「バリ島のスーパーマーケットに行ってみる?」と問われ「Ya!(はい!)」と即答。ビンタンスーパーマケットに連れていってもらって、あれこれ日常品を買い物。ペット用品売り場ももちろんチェック。2階にはお土産品が並んでいた。やっぱり猫モチーフのものに目がいく。インドネシアの猫の置物は意匠に特徴があって、尻尾が長くて、ちょっとファンシー。町では太った猫を一匹も見なかった。外国のスーパーマーケットってとにかく楽しい。現地で暮らす人々の生活が垣間見えるし、色鮮やかで眼福。バリ島の一日、いろいろ詰め込んで堪能しているけれど、この時点でまだ14時。太陽は高く容赦なく降り注ぐ。(気まぐれに続く)

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2017年09月18日

猫町旅日記ーバリ島編2

バリ島デンパサール空港に到着、入国手続きを済ませてロビーに出るとさっそく熱気と街の喧騒が僕の目の前に押し寄せてきた。日本から朝8時の飛行機に乗ってバリは15時、まだまだ太陽は高いところにある。ホテルのネームプレートを持った大勢の群れ、タクシーの客引き、日本語も巧みに話しかけてくるのを「こっちにフレンドがいるから」と断りながら歩く。むっとした湿気にわくわくしてしまうのは日常を離れた異国にいるからだ。そうこうしているうちに運転手のエヴァンさんと落ち合うことに成功、荷物も運んでくれた。この旅の移動はずっとエヴァンさんにお世話になることになる。ハローとサンキューくらいで、エヴァンさんはほとんど英語を話さないから、ずっと僕らはニコニコと笑顔でお互いの気持ちをあらわした。バリ島ではサヌールとウブドゥの間にある小さな村にあるトシコさんのお宅に泊めてもらうことになっていて、まずは空港から40分ほどのお宅へ向かう。

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ものすごい数の車、バイクに圧倒された。走り出してすぐにバリ島独特な石造りの寺院やシンメトリーの門、彫刻の数々が流れていく。僕はずっと窓を開けて眺めていた。都市部を離れると信号がほとんどなくなって、車同士はクラクションを鳴らしながら走っている。普段の暮らしで聞きなれれたヒステリックな警告とは違って、まるで路上での会話のように感じる。だんだん黄昏れていく空を見上げると鳥の群れが旋回、と思ったらそれはいくつもあがった凧だった(インドネシア語では Layang layang ラヤン ラヤンと呼ばれる風物だそう)。バリでは乾季(5月から10月)にたくさんの凧揚げ大会が開催されるらしいので、その練習に余念がないのかもしれない。息を大きく吸い込むと街独特の甘い匂いが胸いっぱいになる。学生時代によく友だちが吸っていたガラムの煙草を思い出した。



トシコさんとは日本でも何度もお会いしているのだけど、春以来の再会が嬉しい。噂に聞いていた以上の素敵な邸宅でため息が出る。リビングから見える庭、プール、その向こうの空は夕焼けに染まっていた。まずはなにより腹ごしらえ、夕飯を食べにいこうということになりウブドゥの街へ。ウブドゥ村はデンパサール空港から北に20キロ、小さな村をひとまとめにした地域全体が「ウブドゥ」と呼ばれることが多い。バリの芸能・芸術の中心地として急速に観光化が進んできた街。杉真理さんからも「ウブドゥは最高」と聞いていたが、その何とも言えない、懐かしいような、実は見たことのないような風景は僕を一気に旅人気分にさせた。

アヒルを食べましょう、と向かったお店はBebek Tepi Sawah(ベベク テピ サワ)。広大な敷地のなかに田んぼがあり、薄明かりの雰囲気もバリで最初の食事には打ってつけだった。カリカリにあげたクリスピーダック、焼き鳥のようなサテ、一気に口の中の世界を塗り替えるサンバル、何もかもが美味しい。とっぷりと暮れた夜空にはきれいな星が見えた。インドネシアならではのビンタンビールも最高。「ビンタン」とはインドネシア語で星を意味するのだった。バリ島の街は夜遅くまで店が開いていて明るいが、それでもトシコさんの家まで戻ってくると漆黒の闇のなかで懐中電灯で照らして扉を開ける。寝室から見えるのは手の先も見えないくらいの夜の風景だ。それでも怖くないのが不思議だった。なんの虫だか分からない鳴き声、そして時折聞こえてくる獣の遠吠え。バリ島で最初の夜、僕はいつの間にか眠ってしまっていた。(気まぐれに続く)

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