昨年の冬にはすでに開催が決定していたGOMES THE HITMAN《まちづくり三部作》完結から15週年を記念したスターパインズカフェ公演、ずっと先のことだと思っていても時間は一定の早さで進み、いよいよライブ当日になりました。4月25日のことを振り返りたいと思います。16時開場という早い時間設定のためメンバー・スタッフ入りは11時。僕は7時に起きてコーヒーを煎れ、朝の連ドラ「まれ」を観て指差し点検で機材や必要事項をチェックしてスターパインズカフェで出かけました。吉祥寺でのライブは他の街のライブとは違う(近くて便利ということとはまた別に)。
機材搬入。今回はグランドピアノを使わないセッティングでステージを広く。前回と反対に堀越がステージ上手に移動、これCLUB Queなどのライブハウス時の定位置。高橋はマイドラムを持ち込んで、僕は15年前当時と同じTakamineのPT406Mという小さなアコギとFenderシンライン、そしてHarmonyのstratotone(タキシード)で。この日のためにわれわれは24時間のリハをしたわけだが、あとで聞いたらサポートギターの橋本哲さんは個人練習でスタジオに30時間入って研究したらしい…!ものすごいGOMES愛。
リハーサル。時間もないし確認程度に、と言っていたのにガッツリと最終練習。真面目なのか、悪あがきなのか…、いつだってバタバタでぎりぎりになるのは変わらないところ(逆にソロのバンドのときは当日リハーサル中に休憩すらあるんだけど)。「maybe someday」のエンディングなど最後の最後でのアレンジ変更などしつつ、16時開場がかなり押してしまい、長蛇の列になってしまって申し訳ありませんでした。さあ、最終の指差し確認でいよいよ開演!GOMES THE HITMAN、1999年「new atlas ep」に始まり2000年の『cobblestone』「maybe someday ep」と季節をかけて作り上げた《まちづくり三部作》の完全再現です。
ステージ上には当時の名物キャラクターこぶるくんが花を添え、登場SEはいつものスタックリッジではなく、The Millenniumの「Prelude」を。2000年というミレニアムの年を回想しつつ「序章、兆し」という意味のタイトルのインストゥルメンタルに思いを込めました。
まずは「new atlas ep」セクション。当初哲さんはゲストプレイヤー扱いで、このパートは4人だけで演奏しようと思っていたのだけど、リハ1日目の最初の演奏で「僕たちのニューアトラス」イントロのアルペジオを二人のギターで弾いたときの爽快さと衝撃に僕自身がノックアウトされて、最初から5人編成で挑むことに。続く「街をゆく」で早くもハイライトかという熱演。「北風ロック」のハープは15年前と同じく哲さんに吹いてもらった。「夜に静かな独り言」のあと、CDではシークレットトラックとなっている朗読曲は「深夜便」というタイトルで僕らの間では呼ばれた。当時レコーディングが終わった深夜にタクシーで帰るときのカーラジオでよく聴いたNHK「ラジオ深夜便」に由来する。たくさんやったリハのなかで一番練習したのが実はこの曲でした。完全再現というのは「全部やる」ということなのです。
そして『cobblestone』は静かな「自転車で追い越した季節」からアップテンポの「言葉はうそつき」へ。「北風オーケストラ」の演奏は雪を溶かす熱のよう。CDでは子どもたちの声が印象的な「springtime scat」に導かれて「春のスケッチ」を演奏したのは多分15年ぶり。会場のコーラスもハンドクラップも高らかに響きました。そして「思うことはいつも」はこの日これまでで一番いい演奏だったのではないでしょうか。演奏しながらそのテンポ感に揺られてとても気持ちよかった。最後の「ラララ」のコーラスでは会場の声も重なる。哲さんは「思うこと」のとき歌う客席を見て「みんなゴメスのことが好きなんだろうけどおれも負けない!」という気持ちでコーラスしたそうです。
この日の朝、杉真理さんから「今日行けないけど頑張って!」というメールが届いて、それに返信して「みんなにメッセージを」とお願いしたのがCOB-WAVEハガキ紹介のコーナーの文面。きちっとオモシロをいれてくれてさすがナイアガラ直系の大御大です。「7th avenue」もよかったなあ。ずっと続けていたかった。「nighty-night」で夜が明けたらそこには真夏の太陽、「太陽オーケストラ」は人生で1度しか書けないサマーアンセム。
続く「シネマ」から「keep on rockin'」という繋がりは背伸びした大人っぽさと思春期終盤の焦燥感が合わさって『cobblestone』のハイライトという感じ。「プロポーズ大作戦」でステージ上はメンバーだけ4人に。リラックスして部室でのバカ話のようなMCが40歳を越えてもできるのは嬉しいし幸せなことだ。19歳で組んだバンドで41歳になっても歌っている自分というのは当時想像できなかった。須藤さんはアコギ、堀越さんはアコーディオンで、けっちゃんはパーカッション。僕が日本語で書いた初めての曲を2015年に演奏している風景。
僕以外のメンバーで演奏する「6 bars interlude」から街の音が聞こえてきて「午後の窓から」、そして「epilogue」へ。あらためて、楽曲も曲順も不変で普遍、『cobblestone』が備えるエバーグリーンな耐久性は相当なものでした。舞台は郊外の街へ。虫の声を聴きながら「僕らの暮らし」が始まり、最終章「maybe someday ep」へ。間奏部分のラララ、客席の顔もラララと歌う風景は至福。「緑の車」は本当に演奏するのが楽しいし、いまだに大学時代を思い出す。まさに音楽はタイムマシンだな。そして「maybe someday」、物語はここに向かって進んできた。コーラスワークや曲構成など2000年時点でのGOMES THE HITMANサウンドの象徴のような曲。「最後まで付きあってくれてありがとう」と始まる後半部分で静かに感動。一度曲が終ってからもう一度ラララを繰り返したのもCDのシークレットトラックを踏襲。《まちづくり三部作》完全再現完了!そして延長線、アンコールへ。
15年の時を越えて陽の目を見た小説「コブルストーン」文庫本のことやメンバーの充実した活動を紹介。堀越、須藤もソロアルバムを作ったので次は高橋、と盛り上がる。最後になにをやるか、みんなが聴いたことのない曲がいい、ということで「everyday, new day」という未発表曲を。実はこれ、今年最初の下北沢leteで初演したのですが、やはりバンドでやると全然違うポップソングになりました。今年はもっとみんなをわくわくさせるような新しいことができたらいいな、と思いつつ。
もっと長く、4時間くらいのステージになるかと思ったこの日のライブでしたが、冷静に考えればアルバム1枚とシングル2枚、楽曲だけなら1時間半分。この時点で3時間ほどの演奏時間だったけど、もっともっとやりたかったな。最後まで付きあってくれた皆さんのために最後はもうひと盛り上がり、会場総立ちでの「雨の夜と月の光」で大団円。去年の再始動から4度目のライブでようやくここまで来ました。ものすごく楽しかった。また秋に会いましょう。皆さんの終わりなき青春に、僕らのこれからの青春に乾杯。
終演後は物販も大盛況、小説「コブルストーン」文庫本を作るときに「CDも売れない時代に文庫本がファンにアピールするのか」と少し躊躇したのですが杞憂でした。ライブを観にきてくれた清水浩司さんもすべての希望にこたえてサインをしてくれたし、いろんなみんなの思い出話を直接聞くことができてよかった。遠くから近くから、昔から聴いていた人もリアルタイムでは間に合わなかった人もご来場の皆さん、そして来られなかったけど気にかけてくれていた人にも心から感謝を。そしてメンバー、スタッフ、駆けつけてくれた友人たちにも目には見えない花束を。打ち上げも楽しく真夜中まで。次は15年後の30周年で、とMCでは言ったけど、またすぐにでもやりたいな。あんなに練習したからな。
大きなサイズの写真は祖父江綾子さんによる撮影
追記:MCのための「2000年とはどんな年か」メモには下記のような記述がありました。
<2000年のヒット曲>
サザンオールスターズ「TSUNAMI」
福山雅治「桜坂」
SMAP「らいおんハート」
大泉逸郎「孫」
モーニング娘。プッチモニ等つんくprod.
<世相>
小渕首相亡くなる
雪印集団食中毒事件
西鉄バスジャック事件
シドニーオリンピック(高橋尚子/田村亮子)