課外活動バンドのサトミツ&ザ・トイレッツで新潟県長岡にあるLIXILショールームでの演奏という、このバンドでしかまずありえない、スペシャルでクローズドなイベントのための遠征。毎年秋に訪ねる燕市の手前で新幹線を降り、メンバー全員が初めて降り立った長岡市。まだ雪がたくさん残っていました。とてもいい街だと思ったのはとてもいい人たちに迎えられたからだろう。お客さんは地元のトイレ関連や水まわり関連のお仕事の方々。こういうイベントに出るのは昨年から3度目(新宿のLIXIL本社、日本トイレ協会のシンポジウムに続いて)だけど、そのたびにトイレのことを真剣に考えている人たちの熱意に感動させられる。そんなときに僕の頭に流れてくるのはボブ・ディランの「Buckets of Rain(雨のバケツ)」という曲で、そのなかでディランは「やるべきことをやるだけさ/そうしたら、うまくいくんだよ」と歌う。日帰りの慌ただしい一日だったけど、心尽くしの歓迎と接待を受けて僕らは長岡が好きになった。次は花火を見にいきたい。
一ヶ月前には「punctual punk song」という歌がこの世に存在しなかったなんて信じられないくらい、銀行に行ったり請求書を出したり月末のいろいろをいろいろしながら、当たり前のように「めんどくさーい」とこの歌をフンフン鼻歌で歌っている自分に驚く。生活に寄り添う歌とはこういうことをいうのだろうか。1月は長い長い一ヶ月だったけど、2月は本当にあっという間だった。3月も矢のように過ぎていきそうで、そしたらまた年度末になって「3月に出直せばいいさ」と「calendar song」を歌うことになるのだな。
先週は『omni』パートだったのを、シングル収録曲「明日は今日と同じ未来」「GOLDEN 8」に。2000年代前半の歌は他者との繋がりを希求して別れを見つめる歌が多いのだな、と個人的に解釈している。「三日月のフープ」から始まるリクエストパート。「fielder's choice」という未発表曲がとても評判がよかった。「いつまで経っても子どもだと思ってたって/うちの猫も歳をとるさ」というフレーズがあるが、これはポチのことを歌っている。それが15年経ってそのままポチ実に入れ替わってとてもリアルな心情で歌うことができるから、GOMES THE HITMANでもまた試してみようかなと思った。
b-flowerのカバーから小沢健二カバーの流れも先週と同じだけど、前日に映画『リバーズ・エッジ』を観たこともあって最新曲「アルペジオ」に挑戦。復帰後の曲のなかで一番シンプルなコード進行のこの歌を家で練習していたら途中から「どこへ向かうかを知らないならどの道を行っても同じこと」に繋がっていったから、ライブでもそう締めくくった。まめぐカバーもこないだよりしっくりきたかな。歌うのが楽しい曲。パンクシングルから「interstate highway star」、そして「punctual punk song」もなんとかアコギで完奏。やり方が分かってきたけどやっぱりエレキギターでバンドでやりたい。
村田さんは2月22日に亡くなったから、2016年以来僕のなかでは猫の日はそのまま村田さんの日ということになった。今でも杉さんや杉ファミリーのみんなに会えば「村田が夢に出てさー」とか「むらっちゃんは…」という話になるから、いつだってそのビッグスマイルが思い出されるし、「Brand New Day, Brand New Song」をやるとなったら自然と僕にマイクが回ってくる。三回忌を迎えたけれど、「いないのに、いる」という感じがする。これはポチを亡くしたり、きょうこさんがいなくなったり、そして村田さんが旅立った後にわかるようになった感覚だ。「君がいないことは/君がいることだなあ」というサニーデイ・サービスの「桜Super Love」をふんふんと鼻歌で歌っていたら、庭の木に梅の花が開き始めていることに気づいた寒い日。
イベントタイトルを「猫町フェス2018ーnekomachi music and art festival」と大きく銘打ったのは(ウッドストックのオマージュでもあります)、いつも誘ってもらってばかりだった猫を愛するイベントを自分でも企画してみたいと思ったからです。ちよだニャンとなる会やむさしの地域猫の会の皆さん、猫好き作家さんたちにもいろいろご協力をいただいて硬軟併せて様々なことを考える音楽と猫のフェスになったらいいなーと思っています。チケット発売日、発売方法等の詳細は追ってお知らせします。
2018年8月17日(金)@ 吉祥寺 スターパインズカフェ 猫町フェス2018
nekomachi music and art festival
山田稔明
1973年佐賀県鳥栖生まれ。1999年GOMES THE HITMANでのデビュー以来バンド活動と並行して、数多くの楽曲提供を行う。2007年からソロ活動を本格化。音楽以外にも、執筆、ワークショップなどその活動は多岐にわたる。愛猫家としても知られインスタグラムでも多くのフォロワーを持つ。愛猫との日々を綴った初の自伝的小説「猫と五つ目の季節」を2015年11月に出版。2016年11月3日には写真絵本『ひなたのねこ』を、2017年4月にはエッセイ集『猫町ラプソディ』(著作はすべてミルブックス)を出版。最新アルバムは『DOCUMENT』(2017年7月)。
夜の科学 in 下北沢ー小箱のなかの音楽25(2018年2月21日 @ 下北沢 lete)【SETLIST】
2018年2月21日(水)@ 下北沢 lete
夜の科学 in 下北沢ー小箱のなかの音楽25
1.東京午前三時(GOMES THE HITMAN『ripple』)
2.ドライブ(GOMES THE HITMAN『ripple』)
3.星に輪ゴムを(GOMES THE HITMAN『ripple』)
4.明日は今日と同じ未来(GOMES THE HITMAN「明日は今日と同じ未来」)
5.GOLDEN 8(GOMES THE HITMAN「明日は今日と同じ未来」)
第二部は「太陽と満月」「猫町オーケストラ」とテンポよく。「日向の猫」「小さな巣をつくるように暮らすこと」では会場の皆さんのコーラスが力強く響きました。言葉にならない「ラララ」という歌声はときに様々な意味を宿すのですね。大好きなものに囲まれて暮らす日々を謳歌する「my favorite things」はこの日々がずっと続きますようにという祈りの歌。「第2の人生」、そして「toi toi toi」という再生と幸運を願って祈るメロディで2018年の僕らのちよだ猫まつりは大団円となりました。長い時間をかけて(昨年の相当早い段階から)打ち合わせをして準備をして当日を迎えたちよだ猫まつり、予期せぬ出来事もありましたが、とにかく一日ずっと猫のことを考えるような、愛すべき日になったと思います。
怒涛のものつくり期間と3日間のライブが一段落して、久しぶりに終日ゆっくりできる日が2日続いた。リビングでだらだらしながら、去年亡くなったグレン・キャンベル、アルツハイマー告白後のラストツアーを追った映画『I'll Be Me』を鑑賞。とても感動的で素晴らしかった。思い出が消えていくというのは想像しがたい恐怖だが、彼の明るさと笑顔こそが希望であり救いかもしれない。「ウィチタ・ラインマン」がこれまでと違って聴こえてくる。
音楽映画に手が伸びるのはHMVキチレコをやってるからだろうか。久しぶりに観返した『メタリカ 真実の瞬間』。やっぱ自分にとって大事な映画だなと改めて思う。この映画のせいもあって、メタリカのなかで2番目に好きなアルバムは『St. Anger』、一番は揺るがず『Master of Puppets』だ。10年前、専門学校で作詞の授業を担当していた頃に生徒に2コマ使ってこれを鑑賞させたことがあったけど全員食い入るように見てた。授業で生徒たちに見せた映像作品にエレファント・カシマシの実像に迫ったドキュメンタリー『扉の向こう』があったが、これも壮絶なやつで、いつも居眠りする子も最後まで画面を見つめていたのが忘れられない。バンドって大変だけどやめないでいるといいことある。
夜の科学 in 下北沢ー小箱のなかの音楽 24(2018年2月16日 @ 下北沢 lete)【ライブ後記】
先週末のライブを振り返ります。バレンタインデイの喧騒のあと、2月16日は下北沢leteでの男性限定の弾き語り「夜の科学」でした。金曜日の夜でしたが、仕事帰りで遅れて来場する人が多かったのは、男性だからなのか、そういうことじゃないのか、とにかくいつもとは違う雰囲気の下北沢leteでの1年ぶりの“おとこ祭り”でした。この日しゃべるMCなどは門外不出、外にもらさぬようにという約束からライブはスタートしました。GOMES THE HITMANのVAP時代の音源が音楽定額制サイトで配信が始まったこともあり、『ripple』のオープニングから3曲を続けて。『omni』からも小気味いい2曲を。
いよいよ今日からです。吉祥寺コピスでオープン1周年を迎えるHMV record shopでのHMVキチレコ展。この機会に僕は『Punctual/Punk』という3曲入りニューシングル、新作Tシャツを2つ、新作トートバッグを2つ作りました。誰に頼まれたわけでもないのに、なんだか必死になっていろいろ作ってしまう自分の性分を呪いますが、とてもクオリティの高い、かわいくて面白いものができたと思います。ぜひ休日の吉祥寺へ。会期は3月4日までありますので、平日にももちろん。今日はオープニングということで、15時から店内ステージでライブがあります。僕は15時からと、もうひとつHMIバンドというのでイトケンやギタリストのまっちーさんなんかとセッション、サトミツ&ザ・トイレッツの歌も歌うことになりそうで、17時からはサイン会もあるという、なんだか盛りだくさんな日です。コピス吉祥寺というのは僕の生活圏内の根城のような商業施設で、そこに今日はお昼から一日中いる感じになるのでしょうか。不思議な感覚です。サイン会に関しては注意事項があるようなので、下記に転載しました。
夜の科学 in 下北沢ー小箱のなかの音楽 24(2018年2月16日 @ 下北沢 lete)【SETLIST】
2018年2月16日(金)@ 下北沢 lete
夜の科学 in 下北沢ー小箱のなかの音楽 24
1.東京午前三時(GOMES THE HITMAN『ripple』)
2.ドライブ(GOMES THE HITMAN『ripple』)
3.手と手、影と影(GOMES THE HITMAN『ripple』)
4.愛すべき日々(GOMES THE HITMAN『omni』)
5.day after day(GOMES THE HITMAN『omni』)
今年に入って『101 ESSENTIAL ROCK RECORDS』という写真集を買って、時間があると頁をめくって眺めているのだけど、見入ってしまうのがダムドとかベルベット・アンダーグラウンドとかラモーンズとかなのはなぜだろうか。そしてパティ・スミスの『Horses』が投げかける視線に手が止まって、ロバート・メイプルソープの写真の魅力を今改めて思う。僕は80年代末から90年代にかけてカレッジ・レディオとオルタナティブ・ロックの洗礼を受けたので、革ジャンや安全ピン、細いブラックジーンズなどのパンクミュージックやファッションを経験していない。それがゆえに憧れにも似た感覚がずっとあるのかもしれない。自分は優等生にも劣等生にもなれないで今まで生きている。そんなふうに今でも思うのだ。
映画『パーティで女の子に話しかけるには』を観たときに、パンクとは何か?という問いかけに「ブルーズの最終型」と答えるシーンがあって「なるほど」と思った。今までやったことがない、作ったことがないパンクに俄然興味が出たので、キチレコに託つけてパンクをやろうと思い立ったのだ。普段の活動では絶対やらないことをやるのに、音楽とユーモアをテーマにしたキチレコのような場は最適なのだ。エレキギターのシールドをアンプに突っ込んで歪ませて、中学生みたいなコード進行でかき鳴らすと胸がすっきりする。あっという間に曲ができたけど、問題は歌詞。パンクがブルーズの最終型ならば、「my favorite things」の真逆の歌を作ればいいと思ったから「めんどくさい」と悪態をつく歌ができた。それでも結局根が真面目な自分は体良くきちんとこなしてしまう、という等身大のパンク。几帳面、真面目という意味の単語を冠して「punctual punk song」というタイトルになった。ドラムはGOMES THE HITMANリハーサルのときに須藤さんに叩いてもらった。パンクには打ち込みは似合わない。
次に取りかかったのは10年前に書いた曲。たしかコンペのために提出して戻ってきた曲だったと思うが、僕はその焦燥感や突き抜けた感じがとても気に入っていた。言うならばメロコアとかエモとかパワーポップというカテゴリーに入る、パンキッシュな演奏が似会う曲、この機会を逃したら再演する可能性が低いと思ったので、10年前よりもキーを全音下げて、テンポを1.5倍早くして基本トラックを作り、個人練習でスタジオに入って自分でドラムを録音した。1時間ひとりでドラムを叩き続けて汗だくになったけど感じたことのない達成感がある。「interstate highway star」という曲、歌詞を今の心境で書き換えたので2018年の歌に昇華された、と思う。「punctual punk song」とこの曲はいつものレコーディングとは異なりハンドマイクで身体を曲げて揺れながら歌入れした。
もう1曲、これは僕自身が忘れていた、化石のような曲。1993年、GOMES THE HITMANを結成して最初のライブで演奏するために書いた英語詞の曲があって、イントロのギターははっきり憶えていた。うろ覚えの歌詞を繋いで、見つからないパーツは想像しながら補完していく。「僕は白旗をあげる/そして寄贈するんだ」というフレーズは忘れたことがなかった。「スミス」という同時期に書いた曲はその後も頻繁に演奏され、2016年には『pale/みずいろの時代』できちんと音源化することができたが、この「endow」という幻の曲を録音するなんて思わなかった。ミドルテンポのメロウな曲だけど、19歳の僕の初期衝動で書かれた歌はパンク精神にあふれていたと思う。「endow (high five song)」と改題して収録。
誰に頼まれたわけでもないこの音源だけど、つまるところ自分自身と向き合うことになった。4日間で録音とミックスを終わらせたことで疾走感あふれるものになったと思う。多分僕はこれから先、月末になるたびに「punctual punk song」を口ずさむのだろうな。アートワークはパティ・スミス『Horses』のオマージュ、ポチ実にも頑張ってもらって半日かけて撮影した。ロバート・メイプルソープの写真を見つけて研究して影の具合もかなり近づけたと思う。ギリギリまで作業したのでCDではなくCDR作品になったが、2018年の最初の熱のようなものが確実に封じ込まれたレコード(記録)になったと思います。HMVキチレコでご購入できます。ぜひお手にとってみてください。
山田稔明 new single
Punctual/Punk(GTHC-0011/1200円税別)
1.punctual punk song
2.interstate highway star
3.endow (high five song)
written, performed, recorded and mixed by toshiaki yamada
drums on M1 by toshiaki sudoh(GOMES THE HITMAN)
recorded at kichijoji in feb 2018 for “HMV kichireco vol.1” exhibition
artwork by hoopline
inspired from “patti smith / horses(1975)”
昨年から仲間にいれてもらったキチレコ、HMV record shop吉祥寺の1周年コラボイベントを行うということで、またなにか面白いことができたら、と趣向を凝らしてTシャツやトートバックを新しく作りました。トータスの名盤『TNT』へのオマージュのポチ実イラストは去年はポチの顔で描いた、お気に入りの絵。愛猫をモデルにパティ・スミス『Horses』風の写真を撮ったのが、なんだかロバート・メイプルソープの写真みたいでカッコよくて、それもTシャツにしてみる。ジャケットを羽織ったらオシャレな感じになるようなシュッとしたデザインだなあと思います。
しかし自分の本業はあくまでも音楽家。去年は4曲入りのカセットテープ作品『INOKASHIRA』というのを作ったけれど、今年はどうする?と自問自答していたらピンとくる啓示があった。映画『パーティで女の子に話しかけるには』というジョン・キャメロン・ミッチェル監督作品を観たこと、そして『101ESSENTIAL ROCK RECORDS』という写真集を古本屋さんで買ったことがきっかけだったのかもしれない。
3連休の締めくくりの月曜日、夕方17時10分頃から地元吉祥寺のむさしのFM「むさしのエアーアプリ」のゲストコーナーに生出演します。これは今週末からHMV record shop吉祥寺で始まる「HMVキチレコ vol.1」関連のもので、HMV record shop吉祥寺の1周年を去年から仲間に入れてもらったキチレコで楽しくお祝いしようという展示販売企画です。この1週間ずっと「HMVキチレコ」のためのグッズ等の制作をしていて、新作Tシャツやトートバッグ、そして気分が盛り上がってしまってこの期に及んで新しい音源を作っているところです(間に合うでしょうか…)。去年『INOKASHIRA』というカセットテープ作品を作りましたが、今回も普段だったら作らないようなものに挑戦しています(まだできてないからなんとも言えないんだけど)。そのことも話せたらいいなと思いつつ、ギリギリまで作業して休日の吉祥寺へとおしゃべりしに行きたいと思います。キチレコリーダーの木原庸輔さんと一緒に。
PCやスマートフォンで全国でお聴きいただけます。休日の夕方の時間のお供に。僕は週末18日の展示初日にHMV record shop吉祥寺店内でライブも。
次の週末2月16日はいよいよ昨年に続いて2度目の男性客限定ライブ「夜の科学 in 下北沢ー小箱のなかの音楽 24」です。申込時にも伺いましたが、引き続きご来場の方からのリクエストを募集します。男性陣が何を聴きたいのか、その傾向が知りたいのですよ。リクエスト曲名とその理由をコメント欄に、あるいはinfo@gomesthehitman.comにメールにてお伝えください。セットリストの参考とさせていただきます。今年はバレンタインに一番近いライブがこれになりますね。暑苦しい、面白い夜になりますように。
2018年2月16日(金)@ 下北沢 lete
“夜の科学 in 下北沢ー小箱のなかの音楽 24”
19:00開場 20:00開演 料金3500円(ドリンク代別途)
出演:山田稔明
本日はGOMES THE HITMANの、今年初となるスタジオリハーサルでした。1月にミーティングという名の新年会があり、そして2月にリハーサルとなると、3月にはライブかレコーディング、ということになるのだろうか。昼に集まって夜になるまでの、なかなかタフな長時間のリハーサルで合わせたのは、結成当時演奏していた曲や今までほとんど合奏したことのない曲も含めて、すべて正式音源になっていないものばかりだった。GOMES THE HITMANの秘めたるポテンシャルよ。
GOMES THE HITMANを結成したのは1993年、大学2年生のとき。山田稔明は19歳だった。4月の新入生歓迎コンサートでデビューしたかったので、もしかしたらちょうど今頃、春を待ちながらメンバー探しをしていたのかもしれない。それまではギタリストで、歌を歌ったことがなかった僕が、自分で作詞作曲をして歌も歌うバンドを作ろうとして組んだのがGOMES THE HITMANだ。4月の新歓コンサートではLEMONHEADSの「It's a Shame about Ray」、そして僕の記憶が正しければ「Endow」というタイトルを付けた英語詞のオリジナルをやったと思う(その曲はこのとき以外は後にも先にもやったことはないはず)。それはToad The Wet Sprocketの「JAM」とほぼほぼ同じ曲、いわゆるパクリだったから当時のベーシストだった遠藤さんが後にひどく怒ったことを憶えている。「Endow」という曲を一生懸命思い出そうとしているけど全部は思い出せない。「Raise High the White Flag(白旗を高く掲げろ)」というフレーズがあって、それはサリンジャーの『大工よ、屋根の梁を高く上げよ』から引っぱってきたものだった、と思う。でもそれもこれも、もしかしたら僕の都合のいい思い出の辻褄合わせかもしれなくて、本当のところ正確には思い出せない。それくらい長い長い時間が、GOMES THE HITMANには流れているのである。あれから25年も経った。
ポレポレ東中野で観た『人生フルーツ』、途中からずっと泣いていた。くたびれてしまうほど素晴らしい映画だった。この映画のなかで3つの言葉が紹介されるが、一番好きだったのはフランク・ロイド・ライトが言った「長く生きるほど、人生はより美しくなる」という言葉でした。いつか「実」という漢字一文字を「fruit」と訳しているのを見たときに、いわゆる「フルーツ」の概念が少し自分のなかで変わった感覚があった。この映画も英語題が「Life is Fruity」となっていて、長く生きればそれだけ何度だって朽ちてもまた生まれ変われる、ということなのかもしれない。ポチ実の「実」には思っていた以上の意味があるのだよ。
この勢いのまま今週末2月3日(土)はアリオ西新井で観覧無料のフリーライブがあります。西新井という町に初めて出かけていきますが、いわゆるショッピングモール、不特定多数の往来がある場所での演奏なのでしょう。デビューして20年近く経ちますが、この歳になってもそういう武者修行的な環境でのステージには文字通り武者震いがします。心折れないように頑張りたい。遠くから近くから初心に帰った僕(僕ら)の姿を目撃しにきていただけたら。こないだの練習ではキンモクセイの「二人のアカボシ」へのリクエストの声があったということで、それならGOMES THE HITMANの「饒舌スタッカート」もやろうよ、ということになってセッションしてみたのがすごく新鮮で楽しくて、バンドのポテンシャルの高さに改めて感心したのでした。