





















写真:近藤研二
昔のゴメスを知らずに山田ソロから入った口で、しかも山田バンドでここのところギターを弾かせてもらっている立場からコメントします。
ゴメスでもすべてのソングライティングを山田くんがしてるようなので、彼のソロ名義での活動との違いは、表面的には演奏メンバーが違うだけということになり、どうしてもアレンジに耳がいってしまうのだけれども、一聴してその違いが分かる。なんだか若い。10数年ぶりにアルバムをリリースした中堅バンドとは思えないほどの初々しさ。文字通りエバーグリーンを音にしたような。
夏の終わり頃、既に曲順通りに並べられた全曲のラフミックスを聴かせてもらい「忌憚のない意見を」と聞かれたので、いくつか率直な感想を言いました。「歌が大きすぎるんじゃない?」「バンドとの距離をちょっと感じるかな」など。そして完成したものは、ぎりぎりまで歌が抑えられているようで、バンドのグルーブが前に出ていて、僕は好みだったけれど、あくまで過去のゴメスのことは知らなかったし、山田ソロとの違いってなんだろう、バンドってなんなんだろうと僕なりの希望と解釈が入った意見だったかもしれない。かき鳴らされるギターの音は彼の体型に似てシュッとして少しせっかちに疾走し、ゲスト陣のプロデュースもあってギターポップのお手本になるほどカッコいいなと思ったけれど、その日はあまり褒めないでおいた。
それから、今年のグッドデザイン賞をとるんじゃないかと思うほどジャケットまわりのアートワークが秀逸で、デザイナーの里枝さんに開口一番「腰、痛かったでしょう!?」と言ってしまった。物撮りのディテールよ。山田くんの好きなアメリカの乾いたロックの風が吹いてるし、かと言ってオルタナシーンのジャケほど抽象的過ぎず、しっかりポップで、ちゃんと猫まで出てきて。
今、これを書きながら考えついたのは、山田ソロとの差別化を図るために、あえて今作はポップに振り切ったのかなあと読むこともできる? ただ二足のわらじを履くには今の山田くんは忙しすぎて、2つの活動が渾然一体となっていることは否めないのかなあと思いました。いや、同じ人がやってるんだから渾然一体でいい、むしろそれが面白いのかもしれないけれど、少なくとも、ソロ名義のライブで「こんにちは、ゴメス・ザ・ヒットマンです」と間違って自己紹介したり、ゴメスのライブで「山田稔明と愉快な仲間です」って言うのやめた方がいいと思う。結ちゃん、堀越さん、須藤さん、みんな優しいね。それに尽きる。こうやって時を経てバンドとして音が出せてるの。
ここにひとつのメモリを刻んだことで、GOMES THE HITMANの次のステップに期待したい。身体はひとつなんだから大事にね。
僕の好きなトラックは『ブックエンドのテーマ』『memoria』です。
近藤研二(音楽家)