吉祥寺スターパインズカフェでの今年初めてのソロワンマンから1週間が過ぎました。昨年以降のコロナ禍で変わったことといえばライブが終わったあとで改めて録画アーカイブを観ることができるということで、それまでも資料用に録った映像なんかはあったけど固定カメラだったり音がそんなに良くなかったりしてなかなか時間を割いて鑑賞しようとは思わなかったけど、今はもう何台もカメラがあって配信用に音もミックスされてるし、なかなか見応えがある。「自分のライブを見てみたいなあ」とはよく言う叶わぬ願いだけれど、こういう形で追体験できるようになったのは不幸中の幸いだなと思う。
ということで、ようやくアーカイブを全部観終えた。いいところも悪いところもあったが僕自身がとても楽しく観ることができました。オープニングを「僕はネオアコで人生を語る」、2曲目を「遅れてきた青春」にすることは随分前から決めていたことで、インスタライブでやっている全詩集楽曲制覇の企画と並走するようなシリーズとして「FAVORITE POET」を自分のキャリアの最初期からスタートしたかった。とにかく胸がドキドキしていて、僕のApple Watchは心拍数が測れるので舞台裏で「こんなにドキドキしてる…!」と一人深呼吸したりストレッチしたりしたあとでステージに出ていったわけだけど、やっぱりライブは楽しいなあと思った2時間だった。
「オレンジ〜真実」はフレーズを英語にしてスウェットを作ったことで改めて自分のなかで大きくなった歌で、学生の頃に書いた詩が何度目か生まれ変わったような感覚がある。スターパインズカフェでライブをするなら「吉祥寺ラプソディ」は外せない。歌詞の一節のネタばらしをしてしまった。久しぶりに歌った「一角獣と新しいホライズン」は季節をフッとシフトさせる歌。春から夏へと時計を進ませて「スティーブンダフィ的スクラップブック」から「coffee」まで。
この日一番歌いたかった曲が年末に書いた「月あかりのラストワルツ」。一番練習したのもこの曲。年末に歌ったときは感傷的になったけれど今はもう違う感慨がある。「ラストワルツ」とタイトルにあるけれどこの曲はワルツではなく、ワルツを導入する曲。続けて三拍子の「愛すべき日々」を繋いだ。「愛すべき日々」という曲もその詩のなかで感情が混然としていて、嬉しいとか悲しいとか優しいとか、明確なベクトルを持たない曲。僕はそういう曲を作るのが好き。本編最後「雨の夜と月の光」、この曲くらいみんなに立ってもらえばよかったなと後悔。
アンコールは「きれいな言葉で」。僕が40歳になったときに書いた歌だけれど、「FAVORITE POET」というタイトルのライブで歌うのに相応しいと思った。きれいな言葉、美しい日本語。そういうものを私は書きたい。最後に歌うのは「セラヴィとレリビー」にすることも随分前から決めていた。いつ歌っても自分を静かに奮いたたせてくれる歌。仕事部屋からのインスタライブと地続きの雰囲気を、と思って猫のパネルを持ちこんだのだけど、アーカイブを見ていてもずっとポチとポチ実の顔がそこにあり、たまに目があったりして、それはそれで面白かった。意図したことはうまくいった、と思う。
スターパインズカフェでひとり2時間歌うというのは初めての経験だったけれど、思ったとおりとても気持ちがよかった。音響の面もだけど、見知ったスタッフの皆さんと一緒にライブを作っている感じがすごくいいのだ。この空間は絶対になくならないでほしい。住み慣れた街で思い切り歌を歌える幸せを味わいながら。とてもいい夜でした。ご来場いただいた皆様、配信でご覧いただいた皆様、スタッフのみんなに心から感謝。また8月に。