GOMES THE HITMANが茨城県で演奏するのはきっとこれが初めてで、東京から車で2時間半の水戸へ午前中から出発してお昼すぎに会場入り。ボージャングルスは1984年にオープンした老舗ライブハウス、バーでありレストランでもある。ドアを入るとそこは1階のバーラウンジ(?)で、ステージは見上げた2階にある。ステージ向かいの2階は座敷席になっていて・・・と説明してもきっとうまく伝わらないと思うけれど、とにかくステージに立って目線を下に落とすと1階から見上げているお客さんがいて、真正面には座敷席に体育座りのお客さんが目に入る、というこれまでに経験したことのない眺めなのだ。春先に初めてここを訪れたときにすぐ「ここで歌ってみたい」と思った。いよいよその日が来ました。
セッティングも音響もDIY、自分たちでやるスタイル。ステージ面積が狭いので堀越メンバーがいつも使っている88鍵のキーボードが置けないので小さめのシンセとギターで演奏することになった。けっちゃんは小さなドラムを持ち込んでセッティングしつつ、なぜかバンジョーとアコギとウクレレも準備。ステージ上が部室みたいになっていく。須藤さんはミキサーの回線を解明しようとつまみをいろいろ回す。無事音が出て、音量を調節してバランスを取っていく。さて本番どうなるか。

茨城水戸にどれくらいのお客さんが集まってくれるのか不安もあったのだけど満員御礼、茨城からも関東近郊からも遠方からもたくさんのご来場。みんなが会場に入るなりどよめく声を聞いた。そう、その驚きを楽しんでもらいたかったのです。2階座敷席は靴を脱いであがるスタイル、長机を挟んで座る“親戚集まり”みたいな風景。落ち着かないまま開演時間を迎えました。ステージに上がって全員が弦楽器のチューニングをする異例のオープニング。まだ夏休みは始まってもいないけれど“外は大雨、夏休みは終わったのさ”と歌う「way back home」から幽玄にスタート。
2曲目から堀越メンバーはエレキギターにシフト、バンド史上初めての楽器構成での「光と水の関係」、続けて「ストロボ」とデビューアルバムから夏の歌を息を切らしながら。7月にライブをやるとやっぱり『weekend』からたくさん歌いたくなる。「何もない人」もそんな歌のひとつ。「スティーブンダフィ的スクラップブック」も夏の風景をきれいにスケッチ、客席からのコーラスも美しかった(みんながいっぱい歌うライブになりました)。

キーボード堀越メンバーがエレキギターを弾くきっかけとなった「レモンティーと手紙」、網膜剥離療養中に書き上げた「blue hour」とギター×2、ドラムとベースと歌のGOMES THE HITMANが新鮮。「新しい朝のワルツ」も新曲だけれど、「Time to Rise and Shine/How I'm feelin' Fine」のフレーズをお客さんに担当してもらう。下からも上からもみんなとてもいい声。「会えないかな」では堀越アコーディオン、須藤さんがベースからアコギに、けっちゃんは杉真理さんから引き継いだバンジョーを弾く。僕はウクレレ。生音での演奏、途中から僕は会場を練り歩き、最後はみんな大合唱という見たことのないシーン。同じスタイルで「coffee」を続けて。
会場の一体感。個人的ハイライトは「明日は今日と同じ未来」でした。鳴ってほしいギターのフレーズを堀越ギターが奏でる。簡単に弾いているように見えるかもしれないけれどめちゃくちゃ練習したんだろうな(僕はほとんど指示出さず、須藤さんとZoomレッスンしたそう)。「サテライト」も「houston」もラウドでグリッターなギターサウンド。4人だけの演奏でこんなふうにできるなんて、新機軸がひとつ確立された感じもある。「手と手、影と影」もとてもエモーショナルに響きました。

本編最後は新曲「ポリフォニー」。この日は「雨の夜と月の光」を演奏しない日でしたが、そのかわりとなるディスコビート、ミラーボールもくるくると。アンコールは「僕らの暮らし」、水戸までのドライブで見た風景とこの歌が共鳴する感じがした。「僕はネオアコで人生を語る」、バンドが初めて世に出したCDのオープニングの歌を初めての街で鳴らす醍醐味。そして鳴り止まない拍手のなか、最後も堀越ギターリフで始まる「饒舌スタッカート」で大団円。こんなライブやったことなかった、これまで。とても面白かったです。
終演後はお客さんも参加する合同打ち上げがあるというのもボージャングルス名物。ご飯もとても美味しくてもうこのまま水戸に泊まってしまいたいくらいでした。納豆とか梅酒とか、お土産もたくさんいただいてしまった。またここで演奏できますように。春にライブを決めてずっとドキドキしながら迎えたこの日でしたが、終わってしまって少し寂しいです。あたたかく賑やかに迎えてくれたボージャングルスの皆さん、スタッフみんな、そしてご来場いただいたお客さんみんなに心から感謝。