当たり前のことだけど、浜松よりも静岡は近い。都内の渋滞が始まる前の早朝に出発すればそれこそ2時間くらいで着くだろう。沼津や三島ならもっとだ。東西に長い静岡県の奥深さを思う。2020年に静岡のラジオ局K-MIXで「PRIMECATS RADIO」というレギュラー番組をやるようになって、年に一度は静岡でライブをやれるようになったけれど、静岡市内で演奏するのはとても久しぶりのことで、早めに静岡入りして街を散策したいと思った。お昼過ぎには静岡市に。
散策と言っても結局足が向かうのはレコード屋さんで、まずグッド・タイミン・レコードへ。ここは60年代ポップロックスがめちゃめちゃ充実している。骨董のような美しさを眺めながら、ひとつだけ異彩を放つインディ/オルタナコーナーがあって、そこから何枚か抜いてレジへ。「これはちょっと反りがあって」と店主さんがその場でレコードを試聴させてくれた。とても丁寧なお店。「あのコーナーは」と尋ねると近所のオルタナ音楽好きが何十年も集めたコレクションを毎月100枚売りにくるらしい。僕も通ってチェックしたくなる。サウンドキッチンは昔から有名なお店。街のレコード屋さんの顔をして異様な物量とジャンルで圧倒される。CORNERHOPも老舗レコードショップ、初めて行ったけれどネオアコの充実具合がすごかった。日本中のライラック・タイムのレコードがここに集められているのではないかと思うほど。本屋にも行く。会場の「風の街」のそばにあったヒガクレ荘はお店のセレクションも、バラエティに富んだ貸し本棚もとても面白かった。風の街の1階の大垣書店もクセのある古書店で、控室をもらったのに開演ぎりぎりまでそこで時間を潰してしまう。
さて、風の街というお店は思っていた通りの雰囲気でした。ライブハウスで会って友だちミュージシャンに紹介してもらって知り合ったという流れが美しく、初めての会場という緊張もなくてとても和やか。店主の黒川さんは自身がシンガーで楽器マニアでもあるので、会場にはドラム含めていろんな楽器が。特筆すべきは世界に665本しかないMartinのF-55という超マニアックなギター(僕が使っているエレキギターです)を所有していること。この日のためにメンテナンスして持ってきてくれたので、僕はそれを弾かせてもらいました。同じようで少し違う、不思議な感覚だったな。
当日券で来られたお客さんも多くて満員御礼、お店の常連さんもいらっしゃって、小さなバーはとても親密な空間になりました。黒川さんの歌も雰囲気を和やかにしてくれた。全体的なセットリストをアップデート、久しぶりに演奏する曲も多くて僕自身が新鮮な気持ちで。「歌いたい歌なんてそんなにない」とか嘯く「new sensation」、歌いたい歌は本当はいっぱい。「スティーブンダフィ的スクラップブック」は歌う予定がなかったけれど、あまりにもレコード屋さんでライラック・タイムに出会ったから急遽セレクト。「山で暮らせば」はリクエストをラジオ風に。ちなみにこの日富士山はまったく見えませんでした。

ライブ前日に書き上げた「one dayーなんということもないありふれた日々の話」という新曲を初めて演奏。静岡名古屋のツアータイトルが「looking for a summer in the spring」、新しい季節を見つけることがテーマだったのでそういう歌になった。とても手応えがあった。少しキーが低かったかな。昨日までなかった歌が今日存在する喜び。同級生が10数年ぶりにライブを見にきてくれたので「ブックエンドのテーマ」を。終演後にはご飯食べたりできてよかった。旅先で旧友に会う嬉しさよ。
店主黒川さんは教員免許を持っていて、お店を始める前は子供たちに音楽を教えていたそうだ。思っていたよりも随分年下で、美味しい魚をいただきながらたくさん話ができて充実した時間でした。朝早くから起きて疲れているはずなのに、夜になっても全然元気だった。旅から、風景から、街から、いろんなエネルギーをもらったのでしょう。楽しい一日でした。静岡、また来ます。
今週末は風の街でハックルベリーフィンがライブだそうです。静岡近郊の方、ぜひに。