グレン・フィリップス2日目、思い立って車で鎌倉へ。ドライブ日和の暖かい春の日でした。バンド時代の、特に『Pale』と『Fear』という2枚は僕の大学受験勉強のBGM(歌詞と訳詞を徹底的に読みふけることで当時僕の英語の成績はグンとあがった!)だったので、十数年後の2006年に第三京浜から横浜横須賀道路の風景を眺めながら爆音のカーステレオで聴いている状況が不思議な感じ。
カフェ・ゴーティーは30人強で満員、マイクもスピーカーもつながない完全な生音での弾き語り。これ以上の幸福感はないな、というシチュエーションでした。アンプリファイされてない繊細なギターの爪弾きや囁き声や張った声やブレスとか、グレン・フィリップスという生身の人間を感じられてクラクラしました。グレン本人も前日よりリラックスして見えたし、スタッフや会場の皆さんのピースフルな雰囲気がいい磁場を醸し出していたような気がします。
途中僕は「Walk on the Ocean」という曲をリクエスト、グレンは「ハーモニーを歌える?」と聞き返してきて僕は「Yes」と答えました。1991年発表の『Fear』という、僕の人生の何枚かのひとつに入るだろうアルバム1曲目の曲、いたるところから自然発生的にハンドクラップやシンガロングが聞こえてきた。リリカルで深遠な彼の歌詞を少なくない数の人々が口ずさんでいる空間を僕はすごく愛おしく思ったし、遠い異国の地でのシンガロングをグレンはどう感じだだろうか。
「I Will Not Take These Things for Granted」という曲でグレンはセカンドアンコールをしめくくりました。これはアルバム『Fear』のクロージングソングで、庭の花や廊下の笑い声や公園で遊ぶ子供たちとか寝室で流れる音楽とかそういう類いのものを当たり前のことだとは思わずにこれからはひとつずつすべてのことを大切に思うようにしよう、という内容。僕の大好きな歌で、『omni』収録の「california」の英語詞と『ripple』収録の「ドライブ」のサウンドはこの曲から大きな影響を受けています。
2時間強のライブはスティービー・ワンダー「Sir Duke」のカバーで盛況のうちに終了。その場にいたみんなが満足で楽しくて幸せだったと思います。僕は歌詞のネタ帳として使ってるモレスキンの五線譜手帳にサインと「美しい音楽を書こう!」というメッセージをもらいました。嬉しかったです。ありとあらゆる神に感謝したくなるような夜でした。ネタ帳を開くたびにそのメッセージを読み返してこれからも頑張ろうと思います。