
これはディラン個人についての、というよりもアメリカポップカルチャーとアメリカの近代史のドキュメンタリーである。はにかんだ笑みを含みつつ当時の状況を語る年老いたディラン、客の反応に腹を立てたり不思議がったりする若いディラン、生前のギンズバーグのインタビュー、PP&M結成の秘話、そしてケルアックの影響とウディ・ガスリーの映像も驚異的だが、キング牧師が「I have a Dream」基調演説をした壇上でディランとジョーン・バエズが歌を歌うシーンがすごい。この映画を観るといかに1960年代のアメリカが混乱していたかがわかる。「ディランがロック」とはみうらじゅん氏が提唱したコピーだが、一般的にはフォークの神様と称されるディランがいかにロックの流れを変えたか、ということを痛感します。
5,000円くらいのお金で4時間のエキサイトメントと感動を何度も繰り返し味わえるなんて幸せだ。ディランを知らないリスナーの皆さんにも強くリコメンドします。雨の日は窓を全部閉めて大きな音でこの作品を繰り返し眺めようと思う。