猫が行方不明5


10センチの隙間から覗くとポチはこちらに背中を向けているようだった。手をいれてもシッポをつかむことしかできないし、そうこうしているとポチはじりじり奥のほうへ奥のほうへと身体を移動させていく。ホウキの柄の部分で追い出すようにすれば簡単に出てくるかと思ったがポチはこわばって重たい石のようにびくともしなかった。
「ぽっちゃん!おれやん!おにいちゃんやん!忘れたと?はよ出てこんね!ポチ!」真夜中なので僕は押し殺した声で、なぜか九州弁でポチを落ち着かせようとしたが数十分膠着。ポチにこれ以上のショックを与えたくないので腰をすえて慎重にやる、と決めた。
防寒のために着ていたコートを脱ぎシャツ一枚になって僕はマンションの廊下に寝そべって、ポチに僕の顔が見えるように10センチの隙間に寄り添った。やっと僕からもポチの顔が見えて、どこのドラ猫かと思うほど汚れていて目はカラーコンタクトをはめたみたいに空虚な感じになっていた。
僕の服もドラ猫かというくらいに汚れて、それでもやっと両手の肘くらいまで隙間から入れることができたのでポチの首とか頭とかあごをムツゴロウさんみたいにワッシャッシャッシャッと思いっきりなでまわした。しばらく硬直していたポチだったが、モノクロからカラーに変わるみたいな感じで(ホントにそう感じた)ゴロゴロゴローと喉を鳴らす音が聞こえてきて、ポチの身体もふにゃっと柔らかくなった。
なでるのをやめて両手を隙間からひっこめたら、ついにポチは顔を外に出したのだ。ぶるぶる震えながら。そして真っ黒になった両手、上半身とポチは這いずり出てきた。歓声をあげたい気持ちを抑えて冷静に小さな声で「おいでおいで。自分で出てこい」と呼ぶ僕。しかしポチのおなかから下がなかなか出てこない。10センチの隙間にポチの腹と足がつっかえて出てこない。
見かねて僕はポチに手を添えて身体を横向きにさせて、ついに両腕でグワッとポチをつかまえて胸に抱いた。こっちにも伝染するくらいポチはぶるぶる震えていて白い部分はすべて薄汚れていて瞳はまだ事態を把握していないような感じだった。
急いで部屋に戻って床に下ろすとポチはいろんな記憶をたぐるように回りを見回し少し水を飲んで「にいやああん(兄やん)」と鳴いて買ったばかりの黒いジャケットにすり寄った。そこでやっとホッとして僕も泣いた。ごめんなおれのせいで、ポチよ。でもおまえ、今史上最高に汚いからその黒のジャケットには触らないでくれ、と。
Posted by monolog at 16:52│
Comments(30)│
TrackBack(0) │
この記事へのトラックバックURL
良かった!
やっと安心しました。
ポチちゃん無事でほんとよかったですね(^^)ホッとしました!!
うわ〜んよかった(涙)
本当に無事なのかどうかわからなかったのでコメントしたくてもなかなかできませんでした!ホントよかった!
やたーー!ポチ無事で良かったですね。
早くキレイにしてもらって(笑)
山田さんお疲れ様でした(_ _)"
ずっとドキドキしながら経過を見ていました。
ポチはずっと兄やんがくるのを待っていたんですね〜。
遠くへ行かなかったなんて、賢いわ。
新しいジャケットじゃないので、お迎えに行けばよかったのに。(笑)
よかったです。。ポチちゃん家の中に帰ってこれて。ほんとよかった!!
あぁ〜〜。ポチ、本当に良かった。
心配で何回もこのブログを確認してました。
やっぱり家が一番いいよねぇ。
感情が込み上げてきました。不安な気持ちが消えて、その代わりに涙が流れました。あぁ、良かった。さっきから、それしか言ってない。
でも、それに尽きる。
山田さんのせいやないで!
女の子は単純なんやけど難しいねん。 男の子もそうやとおもうけど。きっかけは、大した事でもなかったけれど、ポチにとってはこんな大事件になっちゃいました…(反省)的な、甘栗剥いちゃいました的なやっちゃいました的なニュアンスがあるのかな。
2人とも再会出来て安心したわー。
安堵感(と笑いで)目頭が熱くなりました。
ほんまに、見つかってよかったですね!
何か久しぶりにドキドキさせてくれました。
とにかくポチが無事で良かった。
本当によかったです!
ポチちゃんにとっても山田さんにとっても
まさに悪夢のような一夜でしたね。。。
あとはお二人で幸せな時間を☆
よかったです〜。
次の休みに探しに行こうかと思ってましたよ。
いやいや、本当無事でよかった♪
よかったです。
ほっとしました。
山田さんも風邪はひいてませんか?
今日は暖かくして、ポチとくつろいでくださいね。
しばらくブログ見てなかったら、大変なことになってたんですね。
でも、よかった〜。戻ってきて。
山田さんの腕の中で、安心してぶるぶる震えているポチ、、、。
泣きそうになりました。
あ〜よかった。ホッとしました。
お帰り、ぽちちゃん。
>「ぽっちゃん!おれやん!おにいちゃんやん!忘れたと?はよ出てこんね!ポチ!」
…すみません、不謹慎ながら、その情景がありありと目に浮かぶようで、
笑ってしまいました!(いつも思いますが、山田さん文章うますぎです)
なにはともあれ、良かったですね!
ポチがんばった!!ホントよかったぁ!!
仕事帰りに駅のホームで見てたんですけど、山田さんの書いた四コマ漫画
的な絵が面白くて笑ってしまいましたよ…家に帰ってまた見たらポチの
ほっぺの茶色がちゃんと書かれていてめちゃくちゃかわいい☆
ちなみに、早く見つかって欲しいという思いからか、ポチ(たぶん、恐らく
ポチだった)のふわふわお腹をなでている夢を見てしまいました!
ホンッッットに良かったですね!!!
この話が始まったとき、もしずっとポチちゃんが見つからなかったら山田さんはどうなるんだろう?
とすごく心配でしたが、見つかってホントに良かったです(^o^)
またライブ(できれば関西)でこの話をもっと詳しく聞かせてくださいね!!ホント感動です!!
なぜか九州弁になってしまうところに、
いかに山田さんが動揺していたかが、痛い程伝わりました。
とにかくに無事でよかったですね。
これから一層かわいがっちゃいますね!
ポチちゃんも山田さんもお体に気をつけて下さいね!!
良かった〜☆
でも、少しだけポチにじぇらしーー(笑)。
ネットおちしてて、全然知らずにいたのでびっくりでした。
無事帰ってきて、本当によかったですね!
良かったぁ〜!ポチが無事でホッとしました。
もう、ずっと手の中から離さないであげてくださいね〜。涙
ああ、ほんとにほんと良かったです。ポチちゃん。。
ymdさんもおつかれさま。ゆっくり一緒に眠ってくださいね。
ポチちゃんが無事に見つかってホッとしました。
今朝monoblogを見て、ポチちゃんが意外に近くで
見つかったことが分からなかったら仕事も手が付かない
ところでした。
ポチちゃんくらい可愛いと誘拐される心配もありますし。
ずっと山田さんと一緒にポチちゃんが幸せに暮らして
いけるといいなぁ
できるだけポチにショックを与えないようにと格闘している姿から、山田さんの愛情がつたわってきました。
今夜は二人仲よくまるくなって、ゆっくり眠ってください。。
ずっと笑って読んでました、スミマセン!?
「猫が行方不明」シリーズの内容が
♪あぁあの人を迎えに行くよ
♪今は何一つ確かなものなどなく揺れる心が痛むんだ
♪君に会いたくて〜〜君の名前を呼ぶ
・・・と「情熱スタンダード」の歌詞そのもので(笑)一層可笑しかったです!
本当に無事でよかったです。
当たり前のように思えることって大切ですよね。
これからは今までよりも一緒に過ごす時間が大切に感じられそうですね。
安心しました!ほっとして涙が出てきましたよ。。
ポチちゃんの震えとぬくもりが、こちらまで伝わってきました。良かった。ハッピーエンドだ。
よかったー。。。。。。。
大変でしたねー。でも笑って話せるようになって本当によかった。
これからも可愛いポチと素敵な山田兄さんでいてください!