


あっけにとられていたらステージ真ん前の特等席みたいなところに座ることになった。まずネクタイを緩めたサラリーマンの方がふらっとステージに上がり歌本を見ながら70年代フォークを熱唱。歌い終わるとさっき僕にビールを運んできてくれた店員さんが「さあ、じゃあ次はどなたが?奥の鈴木さんと佐藤さん行ってみましょう」とか言って今度は働き盛りの二人組が完璧にハモって(ギターもそれぞれカポを使って効果的な響きで)コブクロの「ともにあーるきー」を歌い上げたのだ。
ここはお客さんが歌いたい曲を歌うフォーク居酒屋だそうだ。オリジナルと英語の歌は禁止、ギターが弾けない人は店員さんが弾いてくれるからハンドマイクで歌えばいい。時間が経つうちに「その歌ならドラムが叩けるぜ」とか「これキーはGマイナーで、だれか鍵盤弾けますか?」とバンドが結成されて平日の夜遅くなのに宴が終わる気配がない。最初はクスクス笑って見ていたんだけども、みなさん(40代50代くらいだと思う)ものすごい笑顔で良い顔で、なにより楽しんでやってるから歌が生き生きしていて、いろいろ考えるころがたくさんあった。
結局僕らは歌わずじまいで勘定をすませたのだが店員さんから「今度来るときは歌ってねー」と言われたから「練習してきます」と答えて店を出ました。帰宅後やる気が出て新しい曲のデモを1曲完成させた。音楽の力だ、と思う。