来年で結成30年というからHEATWAVEというバンドは、僕が初めて佐賀で仲間とバンド遊びを始めた高校生の頃から真摯なロックンロールを鳴らしていたはずで、確かに音楽が好きになってレコードにお金を費やすようになって以来その名前を見慣れていたのに、知っているのは「満月の夕」くらいで面と向かって音楽に接したことはなかったのです。
めんたいロック全盛からは世代的に遠く、本格的なバンド活動を上京した東京で始めたからか僕は地域性とか同胞意識、故郷へのノスタルジーみたいなものに背を向けてふらふらと根無し草のように漂ってきた。井上富雄さんにプロデュースしていただいたときも“ルースターズのベーシスト”としてではなく“「犬は吠えるがキャラバンは進む」のベーシスト”としての富雄さんに接したような気もする。
今年最後の「夜の科学」が終わってぼんやりしてるうちに、なんの因果か、HEATWAVE(山口洋さん)の紡ぐ言葉がやたらと心に響いてどうしようもなく、最新スタジオアルバムとベスト盤を聴いてチケットを取って渋谷DUOでのワンマンを観にいった。果たしてそこにあったのは音楽を通じた希望とか祈りみたいなもので、何度も涙がわいてきて今年で一番僕の気持ちをわしづかみにするような歌でした。博多弁のMCも温かかった。ダブルアンコールの前に山口さんがジョー・ストラマーから言われた言葉を教えてくれた。とても素敵な言葉だった。
「トーキョー シティー ヒエラルキー」という歌があって、そのなかの「この街はムンクの手の中にある/誰かが叫び/何処かで渦巻き/とてもいとおしく/何故か美しい」というフレーズが好きだ。終演後渋谷の雑踏を帰るときにiPodからその歌が流れてきて、僕は谷の向こうのインフォスタワーを見上げながらうまく言い表せない気持ちを思いました。
混み合う駅からの帰り道、親からかかってきた電話にも昨晩は臆することなく田舎の言葉で話すことができた。このスピード感あふれる熱情のようなものはきっといろんな必然の結果なんだろう。心の洗濯みたいな夜でした。