ソロではできないこともバンドでならできる、しかしバンドでしかできないことがソロではやれる、しかしひとりでできないことをバンドでなら・・・、という自問自答を繰り返していた去年のある時期に、Andrew Birdのパフォーマンスをネットで見て驚き開いた口がふさがらなかった。それから1週間のうちに手に入る音源をすべて手に入れて、さらに彼が使っている足元の機材(LINE6のDL4)まで購入してしまう。それ以降確実に違う気分で演奏している、と思う。
当然去年の個人的ベストアルバムはAndew Birdの『Noble Beast』だったのだが、それこそ雑踏で見つけた自分だけの宝物みたいに感じていたのです。そのアンドリュー・バードが来日するというのでわくわくしながら渋谷クアトロに出かけていきました。会場は盛況。
息を飲むような美しいキセルのオープニングアクトの後、アンドリュー・バード登場。ソロ、ドラムとデュオ、トリオ編成というパターンのパフォーマンスをネットで見かけていたので今回はどんなふうかと思ったら、完全に一人での多重演奏。ヴァイオリン、グロッケン、エレキギター、そしてハンドクラップと口笛と声。幾重にも重ねられていくヴァイオリンの音を聴いていて、変な話だが初めてソニック・ユースを中野サンプラザで観たとき窒息しそうなノイズに立ち尽くしたときの印象がデジャヴュ。
足元がよく見える位置からステージを観ていたのだが、フットスイッチをストンプする仕草がこの世界のどこにもないダンスのステップを踏んでいるみたいに見えて、これを生で体感できてよかったなーと思いました。神経質そうな立ち居振る舞いと音楽のスリリングさでライブ終了後はぐったり疲労してしまったのだが、なんかものすごいものを観た、という感じで一晩明けて僕の耳は改めてアンドリュー・バードを聴いていて、僕の足はループマシンをストンプするイメージトレーニングを繰り返しているのだ。