仙台SENDAI KOFFEE CO.でのライブで9都市ツアーが終了。この日はなぜか仙台の宿が取れなかった。人気アーティストのライブとかイベントのせいとか。
で、僕はあえて東京に帰らずに仙台から離れたところにホテルを予約することに。せっかくの東北だ、自分へのご褒美の旅を、と北上し大崎市というところで宿を取りました。
翌日は良く晴れて観光日和。この日の目的は鳴子のこけし観光。9月に六本木でコケシの展覧会を観て以来なにかと心惹かれるものがあった“こけし”を思いっきり堪能しようと思ったのだ。
こけしはマトリョーシカにも似た独特の風情があり、連綿と繋がる歴史もそこにはあるはず、きっと。車が鳴子に近づくとやたら大きなこけしとか、こけしのカントリーサイン的なものが車窓をかすめていく。雲ひとつない青空、野焼きする畑、とてもさわやかな気分だ。
日本こけし館(おじさんがこけしを実演制作しててテンションあがった)、鳴子峡と歩きまわり、鳴子駅の前に車を停めてこけしストリートを右往左往。そこかしこに温泉が湧いている街。足湯はもちろん、手を浸すための“手湯”があった。昨日のライブでこそっとつったりしてた指、かなり熱めのお湯が効きそうでしばらく浸してみました。
これでもかというほどのたくさんのこけし。こけし、コケシ、KOKESHI、という感じ。僕は念願の絵付けを体験。こじんまりしたお店を選びおじいさんにレクチャーを受けながら、まゆ、目、鼻、髪と伝統的なルールに沿って描いてゆく。どんなこけしになったかは12月のライブでお見せします。
普段僕はツアーに出るときには近所の図書館で観光ガイドとなる“じゃらん”とか“まっぷる”とかそういう類のものを借りて旅に備えるようにしているのだが、今回手配した“まっぷる”2011年号を朝食時にぺらぺらとめくって眺めていたらアッと目を釘付けにされるスポットを発見した。
映画「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」のロケで使用された旧佐野社宅というのが鳴子から車で50分くらいのところ(栗原市)にあると。往年のリリー・フランキー信奉者である僕がそこに行かない理由がひとつでもあるだろうか。否、行かない理由はないのである。
暗くなる前に、と鳴子を昼過ぎに出発。山をたぶん3つか4つくらい越えて「こんな田舎町、見たことないかもしれないな・・・」というような風景をいくつも眺めて辿りついた旧佐野社宅は「東京タワー」の筑豊時代まんまの昭和30年代の風景でした。
その歴史はWikipediaなどに詳しいが、“近代化産業遺産”という名のとおり戦後昭和の時代に翻弄された街だったのだろう。まるで取り残された凪のような風景でした。
圧観。観るところが多すぎる。あっという間にどんどん日が傾いていく。諸々整備されて今年から公開されたというオープンセット、懐かしさとか新鮮さとか童心に帰る時間でした。地元スタッフのおじさんは頼んでもいないのにバシバシ写真を撮ってくれるし、帰り際に「東京から来た」というとおばさんが箱ティッシュをくれたり。「栗原市を宣伝してくださいね」と笑顔で手を降っていました。
余談だが東京に戻って最初にしたこと、それはDVDで「東京タワー オカンボクオトン」を観直すことでした。そこにはついさっき眺めた風景まんまの物語が。東北で北九州の筑豊、小倉の景色に対峙する不思議さよ。行ってよかった。
往路と同じだけの山を越えてもう一度鳴子に戻る。とてもきれいな夕焼けと山の稜線を見ることがきた。鳴子での目的はもうひとつ、日帰り温泉。昼間も側溝から立ちあがる湯気と硫黄の匂いに気もそぞろだったのだ。
ディレクター前沢さんからも「鳴子は温泉地としては東の横綱」とお墨付き。まず滝の湯という総ヒバ造りの小さな温泉に。とても熱いが歩き疲れた身体に心地良い。欲張ってもうひとつ、早稲田大学の学生が掘り当てたという早稲田桟敷湯にもトライ。芯からあったまりました。
9都市ツアー終了記念という気持ちで挑んだみちのく旅でしたが、とにかく宮城の自然と工芸にノックアウトされた道程でした。また再訪したい街がどんどん増えていく。一日かけて“命の洗濯”ができました。
ありがとうございました。