



今年から思い切って個人的な年賀状を書かないことにした。そのかわりポストカード企画の年賀状をたくさん書いて手描きの文字や絵はやっぱりいいなーと思ったりもしました。クリスマスカードはあっという間に全国に届いたみたいなのに年賀状っていうのはなかなかタイムラグがあるものですね。北海道から九州までちゃんと皆さんのもとに届いているでしょうか。
大晦日から元日をだらだらと東京で過ごし、1日の午後に新幹線で大阪へ。今年のお正月は父親とともに何をしゃべるでもなく黙々と静かな時間でした。2日には奈良へ行き大仏を見上げ、3日には京都へ趣き清水の舞台に目を細め、期せずしてとても“ニッポン”的な年始めになった。清水寺でひいたおみくじは大吉。大吉をひくなんていつぶりか。もしかして初めてではないか。坂本龍馬のお墓に「ニッポンの夜明けをありがとう」とお参りして満足しました。
年末に映画「ノルウェイの森」を観たことで自分が前向きな回顧モードにシフトしていることに気付き、今年最初の旅に携帯したのは村上春樹の「遠い太鼓」という本でした。電車での旅には細切れのエッセイが読みやすいし相応しい(藤原新也「黄泉の犬」と迷ってこっちにしたが「遠い太鼓」で正解だった)。
その「遠い太鼓」は村上春樹が「ノルウェイの森」「ダンス・ダンス・ダンス」「TVピープル」を書く3年間のヨーロッパでの暮らしを綴った旅日記のようなもので、ずいぶん昔に刊行された本だが多分僕は初めて読んでいる(まだ読み終わっていない)。とても外国に行きたくなる本。(追記;本のちょうど真ん中くらいにある「午前三時五十分の小さな死」という短文にものつくりをしている人間としてとても共感共振しました。)
ワタナベという、「ノルウェイの森」の主人公は37歳で、小説を構想したときの村上春樹も37歳だったそうだ。昨年末12月に37歳になった僕が2011年の始まりに「さあ、今年をどうしよう」と考えるときにパラパラと頁をめくるのにはうってつけの本で、とてもたくさんの、まだ言葉にまとまらないイメージが手を伸ばせば届くところに漂っているような気がして興味深かった。
自分史をまとめるとしたら2005年から2010年(『ripple』から『home sweet home』ということだ)は、ひとつの季節だった、ということになるのだろうな、とぼんやり考える。僕は『pilgrim』も『home sweet home』、もっと言えば2010年の夏に書いた新曲群も含めて、『ripple』というアルバムを作ることで絶えず浮かび上がるようになった“光と影”の風景描写に言葉を尽くしてきたような気がします。
2011年は新しい視点と文法を手に入れることができたらいいなと思います。書いたことのない言葉や歌ったことのないメロディ、鳴らしたことのないコード(だいたいそういうものはあんまりないのだけどね)なんかにはなかなか巡りあうのは難しいかもしれないが、違う角度から光を当てたり上を下から見たりしていろんなことを更新していけたらいいな、と。
1年をいくつかにわけて考えるときに最初のシーズンはすでに始まっていて、今年もいろんなとこに行ってたくさんライブをしようと思って計画が進んでいますが、1stシーズンの答えあわせ、あるいは成果経過報告は恵比寿にて3月26日と27日です。みなさんの手帳にカリカリと書き込んでおいてください。
2011年も全方向的によろしくお願いします。