この日は旅の行程のなかで一番つらい朝だったかもしれない。前夜のライブが19時半スタートで、ライブは決まって2時間半越えして、それから物販やサインしたりする時間、ご飯を食べて気づけば日付をまたいでいる。睡眠時間が一番ないがしろにされるのだ。京都へ向けて出発するために6時に起きて7時半には車の中に。みんな無口、というかどんな話をしたかよく憶えていない時間だった。ふと気付くと車窓の外は京都の風景だったことだけは憶えている。おとんにステップワゴンを借りなかったらこの移動はかなり厳しかっただろうな。
渋滞もなく予定よりも早く京都に到着したので僕らは進々堂で朝ごはんを食べることにしました。ああ、ここはこないだテレビで永六輔さんが宵々山コンサートの折にイベントをやられていた喫茶店だ。永さんは「京都で3時間あったら何処に行きますか?」と聞かれたら「進々堂で三時間本を読む」と言うほどの場所らしい。果たして足を踏み入れた進々堂は貫禄のある喫茶店でした。濃いコーヒーも美味しかった。この旅はBBツアーという略称で呼ばれていたのだけどツアーリーダーの藤原さんに任せていれば間違いなく素敵なお店に辿りつける。
朝の10時に恵文社一乗寺店にイン。恵文社でのウクレレワークショップ、どういう感じになるのかまったくイメージが浮かばなかったのだけど、“恵文社の離れでひそやかに作戦会議”という趣き。なっちゃんは恵文社横のガレージで臨時営業のお菓子屋さんを設営。


大阪では「sweet december」を練習したが京都のワークショプは「カフェの厨房から」をマスターする。京都ははのきまぐれのドラマー川本くんも参加してくれたが弦楽器に苦労してて面白かった。親子連れで来たシャイな小4の女の子としっかり者の“まえだまえだ”みたいな小6の男の子のおかげで和やかさに拍車がかかり、楽しい90分となりました。大阪受講生のみんなはその後のライブでステージデビューすることができましたが、京都はワークショップのみ。さてどうするか、となって思いついたのがdans la natureの応援隊としてお菓子売り場で練習の成果を披露することでした。ワークショップ受講者に通りがかりのウクレレ少女隊3人も急遽加わり課外練習と成果披露。なんだか和やかなシーンでした。


イベントもつつがなく終了、いそいで恵文社のなかを目を凝らして散策。大好きな本屋。あれこれと目移りするなかで心を撃ち抜かれた写真集が。伊藤美代子「みさおとふくまる」という本、とにかくネコ好きには見て欲しい1冊。疲れが吹き飛びました。どんどん日が暮れていくなかステップワゴンは一路奈良へ。今年のお正月は、僕は奈良にお参りしたがそのときにはこの街でライブをすることになるとは思わなかった。キャンペーンでも来たことがない奈良でのライブ。体はクタクタ疲れきっているが心はワクワクしていた(この時点ではクタクタがワクワクに勝っていたが)。
ならまちの細い道を通って辿りついた風の栖、僕らを迎えてくれたのは店主宮川夫妻の笑顔とスタッフの皆さんのテキパキとした気持ちよさ、そして階上から鳴き声とともにあらわれた猫の“ひなた”ちゃんだった。「みさおとふくまる」として風の栖のひなた、猫は僕を元気にさせる魔法を持っているのだな。口角が上がっているのがわかる。
ツアー最後のここはツアー最初のアアルトコーヒー同様まったくPA機材を使わないアンプラグド。アンプラグドで演奏する会場では映像や音響効果など一切を切り詰めてギターの音と声だけを伝える。様々な形態で歌うことができた旅でした。奈良にも観にきてくれた“ははきま”川本くんがニール・ヤング「Harvest」のTシャツを着ていたので急遽1曲目を「harvest moon」にしました。「手と手」を高校生の頃携帯電話にダウンロードして聴いていました!と興奮気味に話してくれたスタッフの方も。嬉しい。長くやるもんだな、なにごとも。




最前列には僕の母親よりご年配の女性。僕のMCにも歌にも全部頷いてものすごい集中力で聴いてくれて、僕はなんだかそれがとても嬉しかった。この日はなっちゃんとのトークも僕の演奏もツアーのハイライトという感じでした。初めて訪れた街でのライブでこういうふうにできるんだなあと驚いた。京都のウクレレワークショップ参加者が何人か来てくれていたので「カフェの厨房から」はウクレレカルテットとともに演奏。
このツアー中で初めて歌った「些細なことのように」で年配の女性が泣いていた。若い子も泣いていた。僕も泣きそうになったけど我慢した。「SING A SONG」の“ハンドクラップを3回”におばあちゃんがついてこれなかったのでできるようになるまで繰り返したら嬉しそうにニコニコ笑ってくれたのも世代を越えたコミュニケーションのようで感動しました。
とても素晴らしい空間。また奈良に来たいと思いました。こうやって大好きな場所がどんどん増えていく。徳島から始まったツアー、僕はライブとワークショップあわせて正味13時間くらい歌ったり喋ったりしたことになる。奈良で最後まで歌を歌えたのは猫とお客さんと同行したスタッフ全員の心遣いのおかげでした。ありがとう。


この日のアンケートより抜粋
「1999年に毎朝私を起こしてくれていた山田さんの声。ここ風の栖でこんな近くで山田さんの声を聴けたこと、本当に幸せに思います。(37歳・女性)」
「初めてライブに参加しました。“人は神様から息を吐いて生まれ、息を吸って神様のもとへ帰る。その間どこから来てどこへ行くのか”という言葉を聞いたことがあります。自分の好きなこと、嬉しくなることを大切に指定来ていくことってとても大事だなあと考えながら聴いていました。(31歳・女性)」
「残業前に食べるおやつをいっぱい買えた。疲れたときに今日のことを思い出してがんばろうと思います。(40歳・男性)」
「人生の先輩おばさま方がMCにウンウンうなづく姿も印象的でした。(女性)」
「仕事とか母親の体調とかいろいろあって今回のライブも最後まで参加を迷っていたのですが本当に来てよかったです。(43歳・男性)」