2012年03月06日

この雨がやんだら/OWEN来日公演




昨日のこと。「この雨がやんだら新しい季節が...」と三寒四温の毎日、冷たい雨は夕方までやまず。庭の梅は暑いコートをいったん脱いだはいいがタイミングを見誤った!という感じで寒そうにしています。ずっと事務仕事など。気付くと何時間も経っていて、その間うちの猫はずっと寝続けている。寝過ぎて疲れないか、おまえ、と声をかけてしまうほど。おなかが減ったなあと思ってふと見るとなっちゃんが前日袖に忍ばせてくれた佐賀の金柑のバターケーキがあって、「ぐう」の音が出るほど美味しかった。

夜から井の頭線に乗って新代田へ。シカゴからOWENことマイク・キンセラ(Joan of Arc、American Football)の来日公演を観にいく。新作がとても良くて前回の来日を見逃していたこともありなんとしても観たかったのだ。指弾きとピック弾きを併用してとてもテクニカルな弾き語りだったけれども、技巧が鼻につかないのは朴訥とした声とセンチメンタルなメロディのせいか。あっという間の1時間ちょっとを堪能。かなり前列のほうで観ることができて、その変幻自在なオープンチューニングを解明しようと曲間の弦調整に目を凝らしていたけれどもいつのまにか音楽にゆらゆら揺れていました。

マイク・キンセラはお客さんとのコミュニケーション・ブレイクダウンに若干ナーバスになっているように見えたけれども、OWENの音楽はナーバスでなければ鳴らし得ないようなリリシズムがあるのでこの夜に限ったことではないのだろう。それでも「君らこのショーが終わったらなにするんだい?」とか「みんなは普段どんな仕事してるの?」とか問いかけてシーンとしている会場は変な緊張感もあって「いやいや、日本語でそれをステージで問うたとしてもお客さんは答えにくいよ」とも思ったが、総じて会場内はとてもウェルカムな雰囲気だった。ドラムを叩きながらダイナソーJr.のぐだぐだなカバーも最後の静謐な一曲のための前置きとして良かった。

お客さんの反応でパフォーマンスが想定していたのよりも良くなる(あるいはその逆)ことがある。特にひとりで弾き語りしているときはとても孤独なので客席に笑顔があったり自分の発言に無言でうなづいている顔を見つけると嬉しくなるし、大きな手拍子やしっぽの長い拍手が鳴ると安心する。反面、とても厳しい顔をしたり終始無表情でそこにいるお客さんが気になっても終演後にワナワナと熱い感動を伝えにきてくれたりするから人それぞれの反応の仕方は十人十色で、難しくて、そして面白い。

春にひとつ近づく雨があがった新代田で僕はマイク・キンセラに見えるように曲が終わるたびにちょっと背伸びしてニコニコしながら大きな音で拍手をした。終演後、彼にサインを求める列は長く、僕も一番好きなCDにサインをもらったのだけど(『I do perceive』というアルバムを『TOSHIAKI does perceive』と書き換えてくれた)、「サインペンを貸してくれませんか」と僕に頼んできた男の子は「緊張して手がプルプル震えちゃって」と本当に手をプルプル震わせて僕のペンを受け取ったのでした。いい夜だった。

OWEN、今日が京都で明日は大阪です。HP

Posted by monolog at 11:07│Comments(0)TrackBack(0)

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