2013年04月14日

WILCOとシンガロングの夜



等々力から渋谷へ移動してAXでウィルコ来日公演の最終日。このご褒美があったからこそ年明けからの果てのないようなレコーディング作業を頑張ってこれたのだ。ステージ前方、ジェフとネルスの間の場所を確保、3年前のZEPPで観たときよりも至近距離。21世紀以降個人的にウィルコはいろんな意味で音楽的指針になっている。ウェブの使い方、レーベルとの関係性、マーチャンダイズの意匠、アヴァンとオーセンティック、などなど。憧れのアーテイストを生声も聞こえるような場所で見られることが嬉しい。

もう長いことウィルコのファンでいるが、自分にとって一番の作品はなんだろうかと考えて(それぞれのアルバムがすべて愛聴盤なのだけど)最近特に聴き返していたのは『a ghost is born』というアルバムで、これは僕が肺気胸になって伏して休養していた2004年のある時期に、初めて買ったiPodでそれこそ擦り切れるほど聴いたレコードなのでした。地味で静かで意味深な。そしてこの日のライブは定番曲以外の『a ghost is born』からのセレクトが多くあり嬉しかった。

とても小さな音で始まったライブはどんどん音楽が大きく膨らんでいって、ステージ上はみんなとてもリラックスしていた。「Impossible Germany」という強靭なサウンドスケープの定番曲があるのだけど、それをニコニコしながら演奏する猛者たちよ…。そして嵐のようなトリプルギターのアンサンブルを抜けたあとの開放感に両の手をあげて嬌声をあげて応えるオーディエンス(僕たち)、なんと素晴らしい音楽のケミストリー。「Via Chicago」はドライブウェイを進む車のなかで静かに話をするような、そんな風景、どんな雷鳴が轟いても会話は淡々とイン・テンポで続いていく…。などと、いろいろ脳内再生の映像は移り変わっていくけれども、ただただ楽しい2時間強、シンガロングして声も枯れるほどでした。そして今回もジェフは一口も水を飲まなかったのだった。

たくさんの知り合いが大阪と東京の3公演に足を運んでいて感想を述べ合うのも楽しく、全公演でセットリストを変えてきたウィルコのホスピタリティにも感動しました。ああ、でも欲を言えば「Hummingbird」と「Spiders」が聴きたかったな。一度でいいからアメリカで観てみたい。2日続けて圧倒的な音楽の魔法にかかって随分とふわふわした気持ちになっています。

Posted by monolog at 12:13│Comments(0)TrackBack(0)

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