奈良の朝、快晴。というかジリジリと暑い。ツアーで一番の敵は移動中の暑さ、太陽は僕の敵とはこれ然り、である。しかし大阪に辿り着いて向かった先は本屋、ここは毎度外せないスタンダード・ブックストア。スチャダラパーが「サマージャム'95」で唱えるところの「夏本番、海か?山か?プールか?いやまずは本屋」、それが正論である。この2日間でどれだけ本を買ったことか。お昼すぎにタワーレコード難波に到着、千日前道具筋がディープで面白い。しかし、暑い。
タワー難波のイベントスペースでリハーサルをしていると人が立ち止まって耳を傾ける。少し早めに来て手を振ってくれるファンの人も少なくない。2005年『ripple』リリース時以来のインストアライブ、どんどんいろんな感覚を思い出していく。『新しい青の時代』から6曲を演奏、お店の隅っこまで届け!と念を込めて。終演後のサイン会では「夜の雲州堂とあわせてハシゴです」という心強いファン、「◯年ぶりに観ることができました」という人や旦那さんと子どもを連れてきたお母さん、今回のアルバムが縁で繋がってラジオで取り上げてくれたディレクターさん、偶然大阪滞在の友人、そして偶然居合わせて初めて聴いたけど気に入ってCDを買ってくれた人といろいろな出会いがありました。
インストアライブ終了後、雲州堂へ移動。数日前にサポートを打診して快諾をくれた京都のバンドははの気まぐれのドラマー川本健士くんはすでにセッティングを終わらせていた。前日にはトモフスキーのステージでも叩いたという彼は関西圏の僕のライブにはだいたい遊びにきてくれる。自身のバンド以外にもムッシュかまやつ氏の信頼も得るナイスガイ、今年はレインボーヒルにもははきまで出演します。譜面もなく参考資料はCDだけ、という無茶ぶりだったのだけど何よりここ数年のライブの雰囲気を熟知してくれている川本くんへの信頼感は間違いないものでした。
開演直前まで手合わせと練習を繰り返し、この3日間最後を飾る雲州堂でのライブの始まり。川本くんはほぼすべての曲でリズムを添えてくれました。まず「光と水の関係」が普段よりダイナミックに鳴っている感じが楽しく感じて、そのあたりから文字通り音を楽しんでいる感覚になりました。誰かがアンケートにも書いてくれていたけれどもこれまで雲州堂でやったライブのなかでも屈指の夜になったと思います。ステージを降りて歌った「やまびこの詩」のお客さんとの掛け合いも楽しかった。
2回目の演奏になる新曲「太陽と満月」は僕ひとりで演奏。歌が少し長くなり、グルーブも少しずつ横揺れになっていく感覚。歌詞も変わって、できたての歌を歌う醍醐味を味わいながら。そして、ライブは本編を終え、アンコール1曲目は「月あかりのナイトスイミング」。もうひとりのゲスト、友人の肥塚学氏にチェロを奏でてもらう。チェロはすごい楽器。隣で鳴っている振動が身体に伝わってくる。音域が声と近いので一緒に歌を歌ってもらっているよう。この日のライブの副題は“ソーダ水の泡の魔法”だったのだけど、まさに夜に月を愛でて、夏の風物を嗜むような感じで歌を歌うことができました。
急なお願いにも関わらずステージを共にしてくれた川本くん、肥塚さん、おかげで5月とも6月とも違う内容の今年の春から3度目の大阪ライブを完遂することができました。この3度のライブでようやく大阪レコ発が完了したような気がします。また秋あたりに関西へ行きたいなと思っています。次に行くときも僕には頼りになるドラムとチェロの音楽仲間がいるということですね。わくわくします。