おととい、土曜日のこと。この日はもともとタワーレコード渋谷でのインストアの日だったのだけど、代官山蔦屋で小さなお祭りをやるのでそこで歌わないか?というオファーがあり、本屋好きの僕がそんなのを断るわけもなく「ヤルヤル!」と急遽決定したのです。代官山蔦屋では昨年末も『Christmas Songs』を大きく展開してくれた、大きくてきれいで素敵な出会いのあるブックストアなのです。朝早くから夜遅くまで開いていいて、地方から来た人が「と、東京ってこんなに都会なのか…」とびっくりするようなランドマークなのではないでしょうか。僕もたまに行くと数時間うろうろしてしまう空間です。
ライブはキーボーディスト佐々木真里さんとの2人編成で。演奏する場所は屋外、T-SITEと総称される空間のカフェテラスなどが並ぶ大ケヤキの木の下。この日の東京はこの夏一番の、あるいはもしかしたら至上最高の酷暑。荷物を運ぶだけで汗、ギターを持っただけで指板はぬるぬる、歌うと気が遠くなるほどの体感温度、湯気が見えました。これだけ暑いと屋外にいること自体がエクササイズ、にも関わらずあたたかい応援と熱心に聴いてくださったお客さんに感謝。5曲歌って海から上がってきたようにずぶ濡れ。サインしているときには自分の髪から蛇口をひねったように流れる玉の汗に唖然とした。確実に人生で一番暑いステージでした(こないだの岡崎mado cafeを抜いて。2トップがどちらも2013年…)。
ある種ゲリラ的なインストアだけども、偶然聴いてCDを買ってくれる人(「頑張って有名になってくださいね」と全然嫌味じゃなく言ってくれた方も)、普段のライブには来れないけど観にきてくれた人とか、「家内がいつもセミナーに参加してるんだけど、恥ずかしがって隠れちゃいました」と声かけてくれた旦那様やら。東京という街に、どこか希薄な人間関係や冷たい印象を持ってしまいがちな地方出身者の僕ですが、みんなとても優しいな、僕が出かけていく場所にいる人々は。
ものすごいスケジュールで進んだこの日。17時から30分のライブの後、タワーレコードへは18時入り。奇跡的に間に合ったけれども、こういうダブルヘッダーのしびれる日に一緒に付き合ってくれた佐々木真里さんに感謝(前回も東京ビッグサイトとin-kyo、トラベラーズファクトリーの2日4公演だった)。辿り着いたタワーレコード渋谷店内の涼しいこと!みるみる生き返ってきてフルート奏者上野洋くんも合流。『home sweet home』制作時に録音をアシストしてくれたエンジニア鈴木くんが限られた時間でステージの音を作ってくれて始まる前から「ああ、これは人生屈指のインストアになるな」という直感。リハの段階からタワーの担当バイヤーさんが感動しまくってくれて僕らも気合が入りました。
イベントはくじら杉林さんと共同で。まず杉林さんの杉林さんしか鳴らせ得ない歌、弾き語りから。20分ずつの演奏時間だったのを杉林さんと共謀してちょっと長めに(のちに担当者から「ほんとは20分ずつなんですけど盛り上がったらいっちゃってください!」と耳打ちが)。山田稔明セットは佐々木真里さんとアルバムの曲をまず3曲、そして「予感」と「月あかりのナイトスイミング」では上野くんのフルートも参加。もともとフルートが入っていない「ナイトスイミング」ではオーボエのパートを上野くんに担ってもらったのだけど、歌いながら未知の音像に触れて気分が高まって声がすーっとタワー3階の向こう側のレジ、そして階段を登って洋楽のフロアまで伸びていくような感覚。
あとで上野くんが「山田さんの歌で演奏するときはテクニックから離れて演奏できるみたいで、楽しい」というようなことを言ってくれて嬉しかった。お客さんもたくさん来てくれて盛り上がり予定になかったもう一曲、「ハミングバード」を。ライブ途中で「『新しい青の時代』でCDショップ大賞にノミネートされたい!(受賞はしなくていい)」と店員さんに向けてアピールをしたのだけど実は今年の選考対象は6月いっぱいのリリース分からなされるとのことで、次期に期待を。サインの長い列、こんなにインストアライブが楽しかったのはもしかしたら初めてかもしれないな。初めて観てくださった通りすがりの方も、「最近気になってて」と声をかけてくれた人も、新しいファンも昔からのファンも、皆さん本当にありがとうございました。人生最も暑いステージと最も楽しいインストア IN A DAY、という土曜日でした。
次は8月25日の恵比寿天窓switchでのバンド編成レコ発です。あと残り数席、ぜひフルサイズのライブにご期待ください。