






このように「子どもか!」というほど楽しんだ境港。おそらくはシャッター商店街だったであろう街ごと盛り上げる水木しげる先生のパワーはすごい。資料館も圧倒的で神話の地に行く前に妖怪たちの洗礼を受けることになりました。道端にいた鬼太郎、髪の毛のバサバサ具合がよくあるホストのような風情で、しかも立ち居振る舞いがチャラくてチューインガムをくちゃくちゃ噛んでるみたいな適当さで観光客と写真を撮っているのがなんだか微笑ましくてよかった。
お昼ご飯にイカ丼を食べていよいよ島根県、松江市へ向かう。とにかく雲の形がすごい。雲のパターン全部入りという感じ。「雲が出る」と書いて出雲と言うが、なにか地形的な特色があるのだろうか。風景がパッと切り替わる感じ、僕はよく「神様の管轄が変わった」と表現するがこの日もそういう感覚があった。まずは松江の象徴とでも言うべき宍道湖を眺める。いつの間にか空は晴れわたり、自分の晴れ男神話に身震いがして、やはり名刺の肩書に「晴れ男」と入れなくてはと思う。

辿り着いたアルトスブックストアは聞きしに勝る素晴らしい本屋さん。メールや電話でやりとりしていた西村さん夫妻とご挨拶。本屋好きな僕が本棚をバックにしての演奏、良いライブにならないわけがない。隅から隅まで本をぐるっと見てまわる。ここでのイベントはなかなか演者がリハーサルを始めないらしいのだけどそれも納得。あれもこれもと欲しいものが見つかった。さっと準備をして夕方16時半に開場、ライブがスタートする17時半はまだ外も明るい日差しが。



この日の演奏はもしかしたら今年一番だったかもしれない。生音に少しだけアンプリファイした音を加えた心地よい音量でリラックスして自宅で演奏しているような感触がありました。ぶり返したように汗をかかせたこの日の天気に導かれタンスにしまったはずの「夏の日の幻」を。そしてせっかくの本屋さんでのライブなので学生時代の本にまつわる話をしました。「カプチーノを二つ」というデビッド・アップダイクの本について。そしてウクレレでの「アップダイク追記」で秋の気配も忍ばせて。
どんどん日差しが暮れていって、時間の経過が目に見えるような中でのライブはとても印象的で1曲歌い終わるごとに影の長さが変わる。そして歌うのに夢中になっていてハッと我に返ると外にはとっぷりと夜の帳が降りていました。時折正面にディスプレイされてあるファッション誌LEE表紙の広末涼子と目があったりしつつ、本と音楽の相性の良さを感じながらすでにもう「またここに来たいな」と思っていました。素晴らしい時間でした。電池を交換して猫のブルーもひっくり返るくらい踊っていたことを記しておきます。





終演後のサインの列も長く、たくさん遠くから近くからお越しくださった皆さんに感謝。初めて島根に来るきっかけがこの日のライブだったという方も多かった。そして僕は閉店後のお店でビート・ジェネレーションの本をはじめさんざん散財。打ち上げはその本棚に囲まれて松江のおでんで。店長の西村さんともたくさん話ができて、いろいろな繋がりが点在したものが一気に集約される感じで、ホントに今回このお店でライブができてよかったなと思いました。
このお店と僕を繋いでくれたのがチャッツワース岸本さんで、「アルトスさんで山田くんのライブが見たい!」とコンタクトを取ってくれたのでした(岸本夫妻もたっぷり本を購入していました)。それ以前の2009年にも僕のCDをアルトスに渡してくれて熱心に働きかけてくれたファンの方がいて(そのときに「アルトスさんへ」とサインをいれた『pilgrim』とも再会しましたよ)そこから数えると実に4年ほどの時間を経ての邂逅、こうやって実際お会いして足を運ぶことの大切さが身にしみてわかった一日。ダンラナチュールなっちゃんやアアルト庄野さん、中川ちえさん、tico moon、ディモンシュ堀内さんと親しい人たちがみんなアルトスで繋がるのだ。アルトス西村夫妻、お手伝いいただいたお二人、そして岸本夫妻、そしてご来場の皆さん、どうもありがとうございました。夜遅くまで食べて飲んで、ホテルに帰ったら寝落ちしてしまい気づいたら朝に…。

