2013年10月22日

“brand new blue” tour 2013(DAY24:10月20日 長崎 諫早 オレンジスパイス)



ずっとずっと先のことだと思っていた長崎は諫早でのライブ。どんなにゆらゆら過ごしても時間は規則正しく前に前に進んでこの日を迎えることになりました。朝早い飛行機でのフライトで4時過ぎに起きて空港で「まよいながら、ゆれながら」著者の中川ちえさんと合流。神戸空港経由の便だったので乗り降りが2度あり、ずいぶん遠くへ来たような感覚で九州にランディング。実際九州出身の僕にとって故郷は遠くにありて思うもの、なんやかやと理由をつけて帰省を先延ばしにしてしまうくせがあるので2ヶ月連続での九州旅は自分のDNAを強く刺激しました。

空港に着くとオレンジスパイス店主の平湯さんが迎えてくれた。平湯さんとは去年の12月にイラストレーター福田さんとともに諫早を訪ねたときに初めてお会いして、先月は下北沢で知人のライブをご一緒した。頻繁なメールのやりとりもあってもうずいぶん古い知人のような気持ちになっている。空港から諫早までは20分ちょっと。雨に煙る東京を抜けだしてきたので長崎の秋晴れが嬉しい。雲がうろこのように空高くに紗をかけて秋らしい。2度目ましてのオレンジスパイス、お店の向かい側のメタセコイアの風景も気持ちがいい。お店のスタッフ皆さん全員が優しく迎えてくれた。店内で鳴る音楽は『新しい青の時代』だった。お昼ごはんは手作りのタッパーがいくつも。長崎独特の蒲鉾もきれいな色。手を尽くした“おもてなし”の始まり。

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ここオレンジスパイスでは前週から福島あんざい果樹園、札幌たべるとくらしの研究所を営む安齋一家の震災後の2年間を描いたフォトエッセイ『まよいながら、ゆれながら』(中川ちえ・文 馬場わかな・写真)の発売を記念した馬場わかなさんの写真展が行われていて、そのクロージングのイベントがこの日のトークライブでした。安斎伸也さん家族が福島を離れて身を寄せたのがオレンジスパイスの平湯さんのところ、それを橋渡ししたのが中川ちえさんでした。つながりがつながって辿り着いたこの日。

イベント準備始めまで時間があったので車を借りて、薦められたwaranaya cafeまで行ってみることに。車で30分ほど大村市にある山中の古い納屋を改装して作られたカフェ。車同士すれ違うのが難しいような道を登っていくとまず山羊が出迎えてくれた。そして対州馬のサトコも悠々と草をはんでいました。ハイジみたいなブランコがあったり、木漏れ日も心地よく、寝不足でくたびれているはずなのにどんどんテンションが上がっていく。石窯で焼いたピザもとても美味しく、さっき賄い飯をいただいたはずなのにおなかの別のところへ収まる。このグッドヴァイブレーションは紛うことなく地面と木々と空気の力だ。

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と、ライブをしにきたことを忘れてしまいそうな時間を過ごして再びオレンジスパイスへ戻りみんなで会場設営。音響機材も東京から運んできてセルフオペレーション。スクリーンを用意していただいたので僕のiPadからわかなさんの写真をスライドショーで投影。さっきまでお客さんたちがくつろいでいたカフェが「つながって、輪になって」の空間に変わりました。ご来場の方のために簡単な食事や由布院からのnicoドーナツも提供されたり、開演までの間に僕とちえさんへの質問を皆さんに募ったりお店からの演出も心にくいものでした。

僕のライブからイベントはスタート。山田稔明のライブを初めて観る人、初めて聴く人がたくさんいらっしゃったので丁寧におしゃべりをしながら『新しい青の時代』を1曲目から4曲目まで曲順通り演奏。新曲の「太陽と満月」ではハンドクラップも鳴って、「やまびこの詩」での輪唱は僕も生音生声でみんなの音と溶け合う。熱心に耳を傾けていただけて嬉しい。僕の声もどんどん伸びていくようでした。

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中川ちえさんを呼び込んでのトーク。そもそもなぜ今ここにいてこのイベントをやっているかということの説明を。ちえさんとこうしてステージで話をするのは福島、東京に続いて今年3度目。2011年からの時系列をさらうたびに感慨深い思いになる。皆さんからの質問をいくつかピックアップ、「諫早の印象は?」という問いに僕もちえさんも「オレンジスパイスとメタセコイアの街」という失礼千万な答えにも会場は笑いに包まれて、僕の猫の話やちえさんのちょっと伏し目がちな、しかしとても真摯で真面目な話など一期一会の時間。ちえさんの朗読にも皆さんが猫のように耳をピンと立てて聴き入っていました。

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後半の僕のステージ、「お薦めの音楽は?」という質問にR.E.M.を紹介して「月あかりのナイトスイミング」を、「幸せだと感じる瞬間は?」との問いの答えに「日向の猫」を演奏。あっという間のステージでした。アンコールをいただいて「SING A SONG」で高らかに手を鳴らして、最後は店主平湯さんにも心のこもったお話をしていただいた。すべてのつながりに意味のある素晴らしいイベントになりました。たくさんの長崎の皆さんにも挨拶できたり、物販にもサインにも長い列ができ(ほんとにたくさんのお買い物ありがとうございました!)長崎初めてのライブがここでよかったなーと思いました。終演後はオレンジスパイスで打ち上げ。たくさんのスタッフさん、さらにはこの日シフトに入ってない人たちもこぞって参加してくれたそうで賑やかな宴に。

この日の宿は“おもてなし”の極み、諫早から30分ほど車で移動して佐賀の嬉野温泉。素晴らしいお湯。ああ、ここで安斎家も一緒だったらなーと思ったところで札幌から送られた安斎明子さんのメールに気付く。そこには「震災後言葉で伝えることの難しさを知り、つくづく芸術の、芸術家の偉大さを知りました」と書いてあったのだけど、この夜は謙遜せずにそう言ってもらえたことを嬉しくほくほくと受け止め、自分の仕事をあらためて見つめなおそうと思いました。温泉につかってビールを飲んで読んだせいか明子さんの次の言葉にゆらゆらと感動してしまった。「新しい青の時代/暗い時代なのに明るい。明るいけどしみじみしてる。/なんか、わたしたちの今だと、思っています」と。春までに札幌にも行きたいな。

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Posted by monolog at 14:23│Comments(0)TrackBack(0)

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