

京都から川本健士くんはすでに到着し、緊張した面持ちでセッティング中。「気負わずね!適当にね!」とか「何もしないという演奏法もあるからね」と言う僕の声も彼の耳を素通りしていたか。しかし音楽家は音を鳴らして会話をするのです。2時間のリハーサルで6人組のバンドがひとつの音の塊になりました。“楽しい”とか“嬉しい”とかでは伝わらない心の躍動がありました。あっという間に開場時間になり、その頃には楽屋ではリラックスした会話が繰り広げられていました。ボトムを司る者同士、イニシアチブを取ってアイコンタクトを投げたり、年下の綾香にお兄さんぶってコードやフレーズを確認したり、えびちゃんの頼もしさが目立ちました。
毎回恒例のオープニングムービーは『チャーリー・ブラウンのクリスマス』から「Chritmas is Coming」をBGMに2日前に撮り下ろしたもの。今年北海道から九州までともに旅した“猫のブルー”がサンタの格好をしてポチと語り合う映像で始まりました。「どこへ向かうか」でスタート、この歌のなかで僕は「誰の屋根にもクリスマスの幸せが降り注ぐように」と祈りを込めた1行があります。始まってすぐ「た、楽しい…」と思いました。皆さんもそうだったら本位。年末感謝の景品クジ引きをはさみながらの長丁場のライブ。メンバー紹介がてらの各メンバー賞は安宅くんが文庫本、エビちゃんがDVD、川本くんは京都タワースノードームと笛、綾香は地元熊本の高級もなか、上野くんは結婚式の二次会で一回使ったきりのチェキ、という珠玉混合なものに。






クリスマス曲と『新しい青の時代』の曲を織り交ぜながら進んでいくステージ、1曲終わるごとに「ああ、終わっちゃった」と寂しくなるような感覚。気仙沼から来てくれた“気仙沼”くんが提供してくれたフカヒレずんだ賞のあとに演奏した「予感」は安宅くんのクラリネットと上野くんのフルートのアンサンブルが心地良くずっと演奏していたいと思いました。「月あかりのナイトスイミング」では綾香に猛練習してもらってグランドピアノで再現。終演後に「ガクブルでした!」と発言した彼女にまわりの男たちが「若者言葉初めて生で聞いた。もっと言って!」と盛り上がる風景もなんだか可笑しく心和みました。
久しぶりに上野くんの鍵盤ハーモニカで歌った「home sweet home」もなんだか旅を何回りもして帰ってきた果ての歌のように響いて感慨深かった。上野くんはこの歌を2007年頃よく手伝ってくれたが「どんどん思い出してきました」という言葉とともにタンギングやフレーズが縦横無尽に広がっていったのです。僕の横でずっと弦楽器を奏でてくれてる安宅くんもこの日はペダルスティールを弾かずに立ち姿のステージで新鮮でした。「日向の猫」での会場全体の声の交わりはもはや1年頑張った音楽家へのご褒美のようでした。本編最後の「hanalee」も今までにない「hanalee」でした。そしてアンコール、再度メンバー紹介してからライブを見にきていた五十嵐メンバーをステージに呼び込み結婚おめでとうのサプライズ。そして一緒に「クリスマス・イブ」を演奏しました。





今年の景品の2トップは福田利之グッズが詰まった福田BOX賞、そしてオランダ製のミニギターでした。当たらなかった人にも今宵は音楽のシャワーを。アンコールでは渾身の力を込めて「sweet december」と「ハミングバード」を演奏しました。間奏の上野くんのティンホイッスル、光の粒のような安宅くんのマンドリン、えびちゃんと川本くんのリズム・セクションと綾香のオクターブユニゾンで締めくくり。楽屋に帰ってもみんなニコニコしていました。イトケンさん不在でしたが(ちょうどその頃彼はタイのステージの上でした)どこかで通じているようで、僕の30代最後の夜は満員御礼のお客さんとともに楽しい3時間となりました。




終演後は小さな忘年会のような雰囲気に。まだまだ僕のライブは年内も続きますが、だんだんと「もう次会うのは来年だね」という会話が増えていく。今年のバンド編成はこれで終了。この感じでいくと来年は夜の科学オーケストラはメンバー増員しそうな予感。引き合う相性、会場入りしたとき初対面だった面々もすでに友だちのように笑い合っていた。この日の五十嵐くんの日記はこちら、綾香の日記はこちら、あわせて読んでみてください。京都から来てくれた川本くんにはうちに泊まってもらう。ポチも猫カフェよろしく大接待、結局3時過ぎまで続くおしゃべり。なんとこの時点で翌8日に何を歌うか、なにも決めていなかったのである…。