そしてムクッと起き上がり、路面電車に乗って松山駅方向へ。モアミュージックという広いレコード屋さんで気が済むまでレコードハンティング。手付かずの宝の山にショベルを持って出かけていってそのままミイラ取りがミイラになってしまうような男が、僕。知らない街をiPhoneの地図を頼りに歩くのは心細く寂しく、しかし楽しい。この日僕が松山へ来たのはToad the Wet SprocketのボーカリストGlen Phillipsのライブを観るためだ。音楽を欲する心が僕をこの街に連れてきた。
夜になってライブが行われるbar TAXIへと向かう。松山は日本一バーが多い街だそうで、雑居ビルにはたくさんのネオンや看板が揺れる。お店は2,30人入ると満員になりそうなスペース。手が届くような席から25年聴き続けているシンガーの歌を味わえる喜び。お客さんもたくさん、グレンのライブが始まりました。2曲目にToadの「Walk on the Ocean」、そらで歌える大好きな歌。ギターと歌のシンプルなサウンドだけど、彼のギターはベースとリズムとメロディのすべてを兼ね備えているので物足りなさを感じない。一緒に来ていた12歳になる娘のフレイアちゃんとのセッションも微笑ましかった。
休憩を挟んで2時間少しのステージ、ジェイムス・ブレイクのカバーという意表を突くセレクトも良かったが、ポール・サイモンの「American Tune」を歌い始めたときには息が止まるかと思った。Toadの新曲はもちろん、「ALL I WANT」「FALL DOWN」など思春期に熱中した音楽はこんなに気持ちをハッとさせるものか。終演後にグレンにサインをしてもらうときに『新しい青の時代』を渡しました。すると彼は「Oh!君はGOMESの!」と昔渡したCDのことも憶えていてくれてとても嬉しかった。彼に「こないだToadのカバーを歌ったんです」とiPhoneで徳永憲くんと一緒にやった「Way Away」を観てもらう。ワオ!とにこにこしながら。フレイアちゃんからは「素敵な声!」と言われたので「You too!」とお返し。夢のようなひとときでした。あー、幸せだったな。松山まで来て正解だったなあ。