5月からライブ会場と通販で販売を開始した『緑の時代』について、友人知人からもいろいろな感想をいただいています。今回のレコードに関しては、それぞれの感想のメールを読むたびに「へええ」とか「なるほど!」とか膝を打つことが多い。僕自身この“retrospective”なコンピレーション・アルバムを説明しあぐねていたのだけど、感想を聞くことにより自分のなかでも明確なイメージができてきた。
ハックルベリー・フィンのたけ兄は実家が八百屋さんだということもあって「サニーレタス」が印象的だったらしく「なぜか映画『エリザベスタウン』を思い出させる」と予想外なことをつぶやいてくれた(文字通り映画のなかで主人公とヒロインが朝まで長電話して結局そのまま待ち合わせするシーンがある)。さらには「グリーンカール」というサニーレタスの兄弟みたいな野菜があることまで教えてくれたのだけど、多分僕はもう「グリーンカール」という曲は書かないだろう。野菜の歌は人生のなかで1曲くらいのほうがいい。
シンガーソングライターの徳永憲さんは『緑の時代』のことを「風通し良くって軽やかで、いい曲ばっかりで『新しい青の時代』との対比も鮮やかな感じ。Toad the Wet Sprocket のレアトラック集『In Light Syrup』が実は名盤なことに近いの感じ、と思った」と評してくれたのですが、このToad the Wet Sprocketの『In Light Syrup』というCDのライナーには「天国と地獄のあいだにある歌の辺土(=SONG LIMBO)を漂っていた曲たち」という表現があり、僕は2000年代前半にこの文言からヒントを得てGOMES THE HITMANの「SONG LIMBO」シリーズを作ったわけで、もしかしたら『緑の時代』は山田稔明版の「SONG LIMBO」かもしれないので、徳永さんの指摘は極めて的を射ていると言える。
同じくシンガーソングライターの高橋徹也さんからのメールにはこう書いてあった。「去年、久々にライブでご一緒して『新しい青の時代』を聴かせてもらって、正直とても驚いたんです。この人は自分が会ってない間に、どうやってこんなに凄い奴になったんだろう、と。今回の作品「緑」は個人的にその謎を紐解くヒントにもなりました。要はずっと変わらず作品を作り続けている人の強さ、でしょうか」。僕も同じように高橋徹也という人の歌を久しぶりに聴いて「なんじゃこりゃ!」と驚愕した2013年だったのでお互いに同じようなことを思っていることが嬉しかった。
イラストレーターの中村佑介くんもCD聴いてくれた旨の連絡があったので気軽に「感想聞かせてねー」と返事を書いたら、とても丁寧に感想コメントを書いて送ってくれたのでここにそれを紹介したい。なんともいろんな点と点を線で結んでくれるような考察で、「へええ!」と何度目かの膝を打ったのでした。
みどり色の正体
『新しい青の時代』から1年も経たず山田さんからニューアルバムが届いた。
青の次は”緑の時代”こと『GREEN』。山田さんと緑色について思い出すのは
GOMES THE HITMAN時代『maybe someday e.p.』のジャケット。架空の
街を舞台とした長編3部作を締めくくる重要な1枚なのに、とても軽やかな
緑色の潔さに当時の僕は衝撃を受けた。また、その後の山田さんの音楽人生
の充実ぶりを見ているので、これもその予兆なのかと思うとドキドキする。
とは言え内容は肩の力が抜けて至ってシンプル。なんでもデビュー15周年の
間の未発表曲を集めた1枚とのこと。BEST盤のない山田さんにとって、この
1枚はとても貴重で、15年間の変わらないことと研ぎ澄まされたものが、
ミキサーの中でくるくる回転して面白い。また、自然や感情や演奏など、
収録曲の至るところにその緑色を見つけることが出来るが、とりわけ10曲目の
“サニーレタス”はタイトルの時点でもう緑色だ。
ただ内容は学生時代の楽曲だけあって、青すぎるほどに青い。逆立ちしても
青いくらいだろう。テクニカルに歌詞を書く山田さんの意図していないところ
だろうが、“雨も上がったみたいだし”の“〜だし”に集約されている心細さと強がりは
どんなに考え抜かれたフレーズよりも青春を現わしている。他の楽曲も最近の
山田さんの世界観より青い印象だ。ではなぜアルバムタイトルを『旧・青の時代』
としなかったか。おそらくそれはそんな様々な過去を振り返り、再び自分で光を
当てられるようになったからだ。青春の“青”、光の“黄色”。ふたつを足せば“緑色”。
うん、やはり納得のタイトルである。
イラストレーター 中村佑介
最近グリーンスムージーを作るときに、どんだけリンゴやバナナやイチゴやオレンジを材料にいれても結局はほうれん草や小松菜などの緑野菜の色に染まるのが不思議だったのですが、GREENは魔法の色なのでしょうか。引き続き友人知人、そしてファンの皆さんや諸関係者からの感想を楽しみにしています。