2014年09月10日

初秋の猫騒動(7日目〜1stシーズンの終わり)

9月に入って奇跡のような時と場所を選んでうちの庭にあらわれた三毛の仔猫は今年6月に旅だったポチとうりふたつの猫だった。ポチ実という仮の名前で呼ぶことになって彼女は日に何度も我が庭へ、そして家の中にまで踏み込んでくるようになった。ついに1週間、7日目を振り返るところから猫騒動日記を再開します(長いです)。前の晩は家に入ってきたところで迷いが出てしまいポチ実を驚かせて夜中は庭に遊びにこなかった。小さな失意のなかで始まった月曜日の朝。



ポチ実はお昼すぎにトコトコやってきた。「遊んでけろ!」というような目、猫じゃらしを投げるとものすごい勢いで遊ぶ。まるでポチ実釣りの様相。両手で上手に羽根のおもちゃをキャッチするし右に左に駆けまわるし、仔猫の運動能力とその量はさすがだ。1時間やっても2時間遊んでもやめない。先に僕がクタクタになる。そして再び僕の手からフードを食べてくれるようになった。これは出会いから4日目に僕の気持ちが先走り両手で抱いて驚かせてしまって以来だ。嬉しい。そして自分から頭を僕の手に押し付けてくるようになった。そっと撫でたら最初はちょっと警戒したが「なでていいよ」という感じでおしりを突き上げる。かわいい・・・。ポチが使っていたブラシを取り出して撫でたらとても気持ちよさそう。そのまま庭で居眠りしたりする。

見れば見るほどポチに似ている。背中の模様、しっぽの縞々は少しずれて右足に、逆にしっぽはぼんやりとしたマーブル。キレイな猫だ。もう僕の気持ちは決まっている。こんな奇跡みたいな物語、奇跡みたいな出会いの主人公役(あるいは猫が主役で僕が共演者か)を辞退するわけがない。しかしポチ実は野良猫としてすでに自我が芽生えて野性があり、こちらに興味を示しているとしても彼女自身は自由気ままな暮らしをしている。一緒に暮らすならば完全室内飼いにシフトしないといけないし、急な環境の変化に果たして順応できるだろうか。でもこのままにしておいて万が一のことがあって、事故にあったり病気になったり誰かにつかまったりして二度と庭に遊びにこなくなったら…と想像すると胸が張り裂けそうになる。

先日料理研究家の桑原奈津子さんにいろいろ相談しにいったときにお借りしてきた立派な2階建てのケージ(ハンモックまで付いている!)を組み立て、部屋のレイアウトを変えて布で覆って目隠しをしたり、ポチ実がどこかへ帰っていっているあいだにいろんな準備をした。まだ保護するタイミングに迷いがある。一度、二度と捕まえようとした手をポチ実はすり抜けていったし、失敗したらまた関係はイチからやり直しだ。そんな不安を相談しようとポチが最期の時までお世話になった動物病院へ2ヶ月ぶりに出かけていった。「ポチちゃんところの山田さん!どうされました?」と看護婦さんが目を丸くするので僕も「うちの庭にポチそっくりな猫があらわれて…」と事の経緯を。確実に捕獲するため貸出用の捕獲器はあるがバチーン!とものすごい音がするので今回のケースには絶対お薦めしない、と。自然と家に入ってくるように仕向けて遊ぶ時間を増やして、家のなかで眠るくらいになったら…というアドバイス。「会えるのを楽しみにしていますから頑張ってください!」とにっこり笑ってくれた。診察室には写真絵本「ひなたのねこ」を飾ってくれているそうで、それを聞いてまた泣きそうになりました。

病院を出て、その足でペットショップへ。そこにいる仔猫たちの大きさと比較してみるとポチ実はもう4〜5ヶ月くらいになっているのではないだろうか。気が早いかと思いつつ爪とぎ用の段ボールと新しいおもちゃも購入。トイレの砂も。家に帰るとまたすぐポチ実がやってきた。新しいおもちゃがものすごく魅力的らしくてまた全然遊びをやめない。おそるべき運動量。だんだん日が暮れてきて、十五夜の月は見えずに今にも降り出しそうな空。ポチ実はまた雨の夜をどこかでやりすごすのだろうか。僕はここ最近の睡眠不足のせいでいつの間にか寝落ちして、ポチ実もいつのまにか姿を消していた。カフェ長男堂で夕飯(「ポチにうり二つの仔猫が庭にひょこっと迷い込んできたらいいですね」と予言したのは店主でした)、僕の指先からはキャットフードのカツオの匂いが消えないままネバトロカツオ丼定食を召す。

網戸を開けたまましておいた真夜中。猫じゃらしの竿をガムテープで固定した仕掛けに惹かれてポチ実登場。遊ぶ気まんまんだ。「おまえどんだけ…」と呆れるほどドタバタしたあとおなかが空いたらしく、僕の手からフードを。そして撫でさせてくれた。背中、そしておしり。距離をとって様子を見ていたらびっくりすることが。ポチがいなくなってからもうちでは“キャットファウンテン”という流水濾過式の水飲み器に電源が入って水が循環しているのだけど、ポチ実はその水をペロッとなめたのだ。ポチだって慣れるまで時間がかかったキャットファウンテン。大きなポスターのなかからポチはこの部屋の騒動をどう見たか。僕にはお盆にこちらに帰ってきたポチがうちの近くでミャーミャー鳴いていた、今よりもっと小さかったポチ実に目をつけてそれに乗って舞い戻ってきたように思えてなりません。



そして決意の時はやってきた。ポチ実は僕に背中を撫でてほしくて体を押し付けてきてそのままリラックスして寝転んだりしはじめたから、いつでも両手で捕まえることができる体勢に。ここで捕まえたらポチ実はもう野良猫として自由に外に出ることはできなくなる。彼女の気ままな生活は一変する。僕に対する不信感も抱くだろうしケージに閉じ込められてパニックになって鳴き騒ぐかもしれない。それでもポチ実は絶対に僕に保護されて一緒に暮らすほうが今のままよりも何倍も幸せになれると思うし、ポチ実のなかには確実にポチが憑依しているとしか考えられないから僕には義務と責任がある。僕は光の速さで手を伸ばしポチ実の首根っこをぎゅっと掴みました。そしてケージへ。ポチ実を保護、日付が変わって9月9日になっていました。

9月2日にうちの庭にひょっこりあらわれた三毛の野良仔猫をついにうちで飼うことになった。名前は仮の名前からそのまま「山田ポチ実」で決定。そもそも13年連れ添ったポチだって、先代の猫にそっくりな仕草や風貌から写真家斎門富士男さんが名づけて2代目ポチを襲名したのです。ポチ実は3代目の“ポチ”ということになります。満月の晩を境に具合が悪くなっていったぽっちゃんが呼び込んだ(としか考えられない)ポチ実はまた満月の晩(厚い雲の向こうに確かに昇っていたでしょう)にうちの猫になりました。奇跡みたいな物語ですが、まだまだ猫騒動は続きます。ポチ実は今うちのなか、ケージのなかで眠っていますが、カチコチに固まってしまったポチ実の心をこれからほぐして仲良くなっていくネクストシーズンが始まります。また猫のいる暮らしが始まりました。

今回たくさんの猫友だちに助言をいただきました。特に桑原奈津子さんからは有益な体験談と立派なケージ、そして坂本美雨さんからは保護したあとの仔猫の検査やケアのことなどアドバイスを。同じころ愛猫を亡くした友だちからは「ポチ、長い散歩やったな。おかえり」とメールがきました。そしてインスタグラムやTwitterでのたくさんの皆さんからのメッセージにも助けられました。ありがとうございます。昨日のライブのMCでも言いましたが、6月にポチを亡くしたときに「介護って本当に大変なんだな」という今までにない感覚を味わい身近な者を失う悲しみを初めて知りました。そして先週からのポチ実との駆け引きのさなかで「初恋ってこんな感じだったかも…」と胸を焦がし、そして今は小さく丸まって不安そうに鳴く頼りないポチ実を見て「親になるってこんな感じか…」と新しい季節を迎えています。猫とはなんと人の心を揺さぶる美しい生き物か。

またいろいろご報告を。秋の猫騒動が続きます。




Posted by monolog at 13:13│Comments(1)TrackBack(0)

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この記事へのコメント
まあ、そうなりますわなぁ♪

落ち着くところに落ち着きますわなぁ♪(^0_0^)

僕も今の猫さんを保護(捕獲または誘拐)する朝はずっと『猫泥棒の朝』という言葉が頭をグルグルとまわっていました!!(*ToT)(笑)

はてさてこれからどうなりますやら♪(^0_0^)
Posted by ドラム猫 at 2014年09月10日 14:57