7月7日に全国発売となる山田稔明『the loved one』の全曲を解説する連載の2回目は「太陽と満月」です。これは2013年の3月に書いた曲。当時数回に渡り行っていた「はじめてのソングライティング」というセミナーの3回目で初披露した曲。D/A/Bm/Gという4つのコードの繰り返しで簡単に歌は作れる、という話の流れで、「そこに自分が好きなものとかいつも思っていることを忍ばせれば、それがソングライティングだ」と、それらしいことを言った気がする。このセミナーに参加した方はプロトタイプの「太陽と満月」音源を聴いたことがあるかもしれない。
それから大サビを付け足した「太陽と満月」はライブの定番曲となり、コード進行が簡単なこともあり共演者とのセッション曲としてよく演奏されるようになる。2014年3月の共演時、高野寛さんがこの歌に投げ入れたアルペジオがとても新鮮で忘れられず、1年後の今年もギターソロに唸った。そしてステージでの《夢》の話から転じて今回高野さんにレコーディングでギターを弾いてもらうことが実現した、言わば夢の続きのセッション。その日の記録はここに記してあるが、優しい先輩からいろんなことを教わった日として僕の記憶に記録されるだろうな。高野さんが重ねた数本のギタートラックがこの曲の色合いを決定づけました。
ポチが一番お世話になったのはいつも留守を見てくれたイトケンさん。「ポチに捧げるようなイトケンさんらしいビートを」と託すと、生ドラムの躍動感と打ち込みの面白さとを兼ね添えた、今までにないようなドラムトラックを提供してくれた。ドラムを受け取ってすぐハックルベリーフィンたけ兄に借りたFenderジャズベースでひとり数時間格闘した真夜中、「やっぱりこの曲エビちゃんが弾いたほうがいいと思うんだ」と翌日に呼び出して海老沼崇史くんに屋台骨をまとめてもらったのでこの曲はライブでの雰囲気をありありと湛えている。僕はジャック・ジョンソンの気分でアコギとエレキを。真里さんには「曲について詳しく知らないセッションミュージシャンがふらっとやってきてコード譜だけを見て陽気に弾いたオルガン」をリクエストした。
結果、太陽の光が空気中の水分に乱反射するような、満月の光が海の底の水泡に映り込むような、そんなキラキラとした「太陽と満月」ができあがりました。そう、こういうふうになりたかった、というような。
山田稔明/the loved one
2015年6月19日発売(全国流通開始7月7日)
GTHC-0007 定価2000円(税別)
1.my favorite things
2.太陽と満月
3.ポチの子守唄
4.些細なことのように
5.small good things
6.猫町オーケストラ(album mix)
『the loved one』プレオーダーはこちらから。