2015年11月12日

好きなものを好きでいつづけること



こないだ高橋徹也氏とメールでやりとりをしているときに僕が「おれ何でも好きな人とか、あれもこれもどれも全部熱く語りたがる人とかあんまり信用しないようにしてるんだ」と言ったらタカテツ氏も「おれも」と返事をしてきた。高橋徹也新作『The Endless Summer』に寄せたコメント(ここで読める)にも書いたが、その人の好き嫌いで仲良くできたりできなかったりするものなのではないか、と結構僕は昔から考えている。自分の人生を変えるような偶像(アイドル)はそんなにたくさんいないはず、と僕は個人的に思うから。しかし、今日は好きなモノの話をする。存在しなかったら自分の人生が変わっていたかもしれない好きなモノだ。

ベースの海老沼崇史くん(えびちゃん)から「山田さん、11月11日何していますか?」と連絡が来て、それが「MIKA RANMARU」という、ボーカル中島美嘉さんにギター土屋公平さん、ドラムは池畑潤二さんという猛者のなかにベースえびちゃんが抜擢された4人編成ロックバンドでの新宿ロフトでのライブへのお誘いだと聞いて興奮した。土屋公平さんは僕にとってストリート・スライダーズの“蘭丸”である。中学生になってすぐ夢中になり、中学卒業とともにエレキギターを買って組んだバンドでコピーしたのはスライダーズだった(最初に組んだバンド名「Empty Heart」は彼らの曲名に由来した)。僕はボーカリストじゃなくてギター担当だったのでコピーしたのは蘭丸さんのほうのギター。久留米や福岡までコンサートも何度も行ったけど、いつも席が悪くてオペラグラス越しに煌めくバンドを眺めたものだ。あれから25年経って蘭丸を新宿ロフトの近さで観れるなんて。

そしてやってきた11月11日、昨日のこと。ざわざわと熱気あふれる新宿ロフト、ここへ来たのはいつぶりだろうか。定刻に始まって1時間でアンコールもなく駆け抜けたMIKA RANMARUはアングラで危険な香りのするパンクバンドのような風情があった。引き寄せられるようにフロアの前のほうに進んでいった。えびちゃんはオールバックでグラサン、そりゃこのなかで演奏するならそれくらいのペルソナを被らなきゃ太刀打ちできないよな。「僕が死のうと思ったのは まだあなたに出会ってなかったから」と歌われる歌が印象的で、ふと隣に立っている女性を見たら頬にツーっときれいな涙の筋が流れていて、音楽の力を思った。

終演後、蘭丸さんに会うことができた。かっこよくて優しくて感動した。タイムマシンで舞い戻って中学生の僕の耳元で「おまえ、25年後に蘭丸と会えるよ」と囁いても信じないだろうな。もじもじしている僕に「サインするよ」とレコードとペンを受け取った蘭丸さんが「これはなかなか見ないレアなやつだ」と見入ったのは僕がついこないだ新潟の中古レコード屋で見つけて小躍りした1988年のシングル盤だった。サインをもらって握手をして、ふわふわと浮足立った僕は一瞬にして中学生の頃の自分に戻ったように感じた。「一緒に写真を撮ってもらってもいいですか」とはついに言い出せなかったが、蘭丸さんが「またおいでよ」と笑って言ってくれたからまたいつか必ずライブを観にいこうと思う。機会をくれたえびちゃんに感謝。

帰宅後すぐ九州の友だち(Empty Heartを一緒にやっていた仲間)にLINEで報告した。明けて今日はずっとストリート・スライダーズのレコードを聴いて過ごしたのだけど、ストーンズマナーのシンプルなロックンロールは時を経ても古くならない。リリース順に聴いていって3枚目のときに思い出した。僕が日本語で初めて作った「プロポーズ大作戦」という歌はスライダーズの「Feel So Down」のベースラインを引用して(真似して)作った歌だった。好きなものを好きでいつづけることは果てのない宝探しのようなものだと感じる。

あなたが好きになったものはきっとあなたを裏切らない。

Posted by monolog at 23:57│Comments(0)