
お店のある天神橋筋六丁目あたりは細い一方通行の道や長い商店街が錯綜する、今まで来たことのない大阪でした。お昼前にたどり着くと美味しい賄いを食べさせてくれた。紅茶もいい香り、コーヒー好きの僕のために食後にまたコーヒーを淹れてくれた。お店を営む姉妹もお友だちたちもみんなハードコアな猫好きなのも居心地がよかった(一番猫に楽な不妊手術の方法をディスカッションするのを聴きながら飲むコーヒーの味わいよ)。
お昼過ぎにスタートするライブ、あっという間に会場はぎゅうぎゅうの満席に。この日は先日の札幌同様に初めて僕のライブを観る人が多いようだったので、間口の広い演目にしようと思いました。ソロ作『pilgrim』『home sweet home』『新しい青の時代』『the loved one』とバランスよくセレクトした前半。そして中盤からは新作『pale/みずいろの時代』から。20余年前に書いた歌だけどレコーディングを経てライブで演奏するのは、やはり新鮮。最新曲「calendar song」は福岡、札幌に続き大阪でもハンドクラップが自然発生して掛け合いのコーラスも楽しい。こんなポップな曲を最新アルバムに収録できたことが幸せ。


「calendar song」には「時計の針は前へ前へ」という歌詞があるのだけど、そう歌ったときに客席の一番前でコソコソっと耳打ちするカップルの姿が目に入った。僕が2月に亡くなった村田和人さんの話を始めたらやっぱりそのお二人は村田さんの大ファンであることがわかった。「時計の針は前へ前へ」は村田さんの「BRAND NEW DAY / BRAND NEW SONG」に書いた一節を引用したフレーズで、もっと言うと同じ描写が小説『猫と五つ目の季節』にも登場する(本を読んですぐ杉真理さんは「山田くん、村田の曲に出てくるフレーズあったね!ライブでコーラスしてるからすぐ気づいたよ」と言った)。関西に来るドライブ旅で不意にカーステレオからチャットモンチー『告白』に収録された「CAT WALK」(高橋久美子作詞)が流れた。「私がいなくなったとしても/3分おきに電車は進み/きれいにきれいに花は咲き/戦いは止むことなく」と歌われるその曲を聴いて僕はなんだかわからないが猛烈に感動して泣きそうになってしまって、この日のライブで「BRAND NEW DAY / BRAND NEW SONG」を歌おうと決めていたのだ。もう泣かないで歌えるだろうと思っていたのに感極まって言葉に詰まってしまってかっこわるかったけど、とても素直な気持ちで歌えたのです。ハンカチもこれまでで一番ぶんぶん振り回されていました。
前の日にバンドで演奏した「keep on rockin'」をこの日は弾き語りでライブを企画してくれた方に捧げた。「光の葡萄」もこの日はちょっと違う響き方をしていたように思います。気づけばあっという間の2時間半。とても小さくささやかな空間だったのに、こんなに心の振れ幅が大きいステージは久しぶりだった。終演後は美味しいご飯をたらふくいただき楽しいおしゃべり。さっきまで明るかったのにもう夜でした。「スミス」を歌う前にさんざんThe Smithsの話をしましたがお店の隣の焼き鳥屋の名前が「スミス」というオチがついて楽しい一日が終わりました。田淵さん、お仲間の皆さん、本当にありがとうございました。この日が実現できて本当によかったです。また大阪へは7月に。奇しくも七夕、織姫と彦星の逢瀬。また必ず夏に会いましょう。
