
ニューアルバム『pale/みずいろの時代』のメドが立ったので随分ゆとりというか、心の余裕ができてきた。朝早く起きて青空の下で洗濯物を干しながら「は!」と思ってiPhoneを指で撫でて、すみだトリフォニーホールでの「THE POET SPEAKS ギンズバーグへのオマージュ」を当日券で観にいこうと思い立った。パティ・スミスの声、フィリップ・グラスのピアノ、アレン・ギンズバーグの言葉、村上春樹と柴田元幸のトランスレーション。これは体験しないと後悔する、と思ったのだ。
僕がパティ・スミスを初めて知ったのは高校1年生のころ、U2のボノが『魂の叫び』というドキュメンタリー映画のなかでパティ・スミスの「Gloria」を引用して歌ったことがきっかけだった。僕のアイドルであるR.E.M.のマイケル・スタイプのアイドルは彼女だ。同じように高校生のときにボブ・ディランの映像の後ろに映る男がアレン・ギンズバーグだということを知った。「僕は見た。狂気によって破壊された僕の世代の最良の精神たちを」、東京の大学へ進んだ僕はビート文学を学ぶ授業を選択し『吠える』に出会った。それから四半世紀経っても言葉は更新され続けるのだ、ということに感動する。パティ・スミスは抑揚をつけて歌うように朗読し、祈りのように歌を歌った。「このことを忘れないように」とパティに即され「PEOPLE HAVE THE POWER」を会場全体が唱和するのは美しい風景だった。
新作に収録される、僕が1993年に自分で歌うために初めて作った「スミス」には「彼女の誕生日にはパティ・スミスのレコードをあげる」という一節がある。このタイミングで今日のステージを目撃することができてよかった。とても刺激的、猫背の背筋も伸びるように感じた。