7月7日の『pale/みずいろの時代』のリリースから今日で2ヶ月となりました。この夏はよく車でこのCDを聴いた。自分でも妙に客観的に聴けるのはほとんどの曲が随分昔に書いた曲だからでしょうか。鬱々とした淡い青がだんだん澄んでいって夏の水色に変わっていく音像、きっとこのアルバムが僕に最新曲「saturday song」を書かせたのでしょう。改めて2016年にこのレコードを作れたことがとても嬉しいし、必然的な結果だなあと思っています。
リリースから2ヶ月経ったことを記念してSoundCloudに「スミス」を公開しました。ダウンロード販売や定額制音楽サイトに提供していない作品なので、この機会に新しい出会いがあれば嬉しいなと願いつつ。この「スミス」という曲は1993年、僕が大学2年のときに書いた歌です。初めて自分でボーカルをとることになって(それまでも作曲の真似事はしていたのですが、僕はギタリストだったりベーシストだったりしました)書いた自分で歌うための初オリジナル曲。四六時中大学で英語を勉強していた僕にとって英語詞の曲を書くのは当然の流れでした。当時夢中になって聴いた<The Smiths>の影響を色濃く写した歌なのでタイトルもそのまま「スミス」となりましたが、同時に<The Sundays>からの孫引きの影響もありました。今回レコーディングするにあたってエンジニアの手塚さんにはThe SmithsとThe SundaysのCDをリファレンス・ディスクとして参考にしてもらいました。
この曲の間奏部分に鳥の鳴き声が聴こえると思いますが、これにはいろんな理由があって、まずThe Smithsの「ASK」という曲の話をしなければならない。この「ASK」の間奏で僕の耳にはカモメが鳴いているようにしか聞こえない部分があって、でもきっとそれは多分ギターのフィンガリングノイズかスライドバーの音かもしれないのだけど(歌詞との脈絡もないしな)港で戯れるPVの影響もあって僕には「ASK」といえばカモメの鳴き声という強烈なイメージの刷り込みがあったのです。だから「スミス」を録音するときに僕はオマージュとして、間奏部分(だいたい2:00くらいのとこです)にウミネコの声を忍ばせました。で、仕事部屋でウミネコの声を混ぜて作業していたらポチ実が不審そうな顔をして抜き足差し足でやってきたのです。「おまえも歌っとく?」と彼女の声を録音してウミネコと一緒に合唱団を結成、結果として僕にはウミネコに翻弄されて「ニャー」と鳴いて追いかける風景がそこに広がることになりました。僕にはスピーカー左寄りでポチ実が鳴いているのがわかりますが、皆さんには聞き取れるでしょうか。取るに足らない、些細なエピソードですが、「スミス」についての裏話をお届けしました。あわせて僕自身が書いた歌詞対訳を掲載したいと思います。
スミス
うちのお母さんは「息子が堕落した」と近所に触れ回っている
それは本当 僕はあの女の子に夢中で いつも電話をかけている
今度の土曜日はどうだい?
車があるから君が行きたいところへドライブしようぜ
きっと晴れていい日になるよ 君をハイにさせるような
ああ なんて美しい日だ
君の時間を僕が浪費しているということがとても嬉しいよ
毎晩誘いの作戦をたてるんだ
想像するんだ 真新しい車に君とふたり
今度の土曜日はどうだい?
車があるから君が行きたいところへドライブしようぜ
きっと晴れていい日になるよ 君をハイにさせるような
ああ なんて美しい日だ
君の時間を僕が浪費しているということがとても嬉しいよ
うちのお母さんは「息子が堕落した」と近所に触れ回っている
そして僕はあの娘の誕生日に パティ・スミスのレコードを
プレゼントするんだ
今度の土曜日はどうだい?
車があるから君が行きたいところへドライブしようぜ
きっと晴れていい日になるよ 君をハイにさせるような
ああ、なんて美しい日だ
君の時間を僕が浪費しているということがとても嬉しいよ
(スミス/toshiaki yamada 1993)
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