

徳島のアアルトコーヒー庄野さんとの付き合いも長くなった。以前モナレコードで「ひなたのねこ」展をやらせていただいたときに、庄野さんにお願いして「ひなたのねこブレンド」というオリジナルの豆を焙煎してもらったのだけど、それがきっかけか、モナレコードとアアルトコーヒーの繋がりが発展して「コーヒーと音楽」というイベントが企画され、その1回目を僕と高橋徹也さんで、ということになった。庄野さんはGOMES THE HITMANも高橋徹也もデビュー作から聴いているという音楽バカ(褒め言葉です)なので、一番楽しかったのは庄野さんではないかな。この日も限定珈琲豆「paleみずいろブレンド」は完売。会場はコーヒーの香りが漂いました。
タカテツさんとの共演はもう何度目にもなるので、これまでやったことのないことをやろう、という話になって「お互いの曲を交互にやってずーっとふたりともステージ上にいるっていうのはどう?」「いいね!」ということになったのだ。多分僕もタカテツさんも座敷席でお客さんみんなで膝を組んで座ってもらって、親密な空間を想像していたと思うのだけど、実際のモナレコードは思った以上に広く、お客さんの数も想像以上に多かった。ふたりともLUNCHBOX ACOUSTICというアンプを持ち寄ってそれだけの音量でやろうと思っていたのが、PAのスタッフにお世話になることに。音決めで時間がかかり、ほとんど練習できないまま本番へ。どんなふうになることか。


まずは僕の「どこへ向かうかを知らないなら」、そして軽快にステージをキックスタートしたかったので新曲「ぼくのノート」を演奏。お互い2曲ずつ歌うことに。タカテツさんはデビュー時の楽曲「My Favorite Girl」、僕はアウトロのリフレインにハモりたくなってハミング。曲名を受けて僕は「my favorite things」とデビュー作から「アップダイク追記」を。庄野さんが「コーヒーと小説」という本を最近編纂したことから本の話へ。なんだかとても自然な流れで、会場もリラックスしてきた。カフェでおしゃべりしているみたいなMC。
タカテツさんがThe Smiths「Please Please Please Let Me Get What I Want」を歌ったのを受けて、当初「ASK」を歌って、自分の「スミス」という曲を歌うつもりだったのが気が変わって、「君の隣で死ぬ特権を持つなんてなんという光栄」と歌われるThe Smiths「There is a Light that Never Goes Out」をカバー(「スミス」のなかで「君の時間を僕が浪費してるなんてなんて素晴らしい日だろう」はこのフレーズに影響されている)。そしてもう一曲、b-flowerの「ペニーアーケードの年」を初めて歌った。
最初のセッションは「真夜中のドライブイン」と「ドライブ」。「ドライブ」はタカテツさんにも同名異曲があるが、これはGOMES THE HITMAN2005年の『ripple』収録の曲。ふたつの世界観が繋がっていく感じがとても面白かった。「ドライブ」は改めてもう一回トライしたいと思いました。後半も2曲づつ繋いでいく構成。こういうことをやるのは15年前くらいに杉真理さんとGOMES THE HITMANでジョイントライブをやったとき以来かもしれない。ライブアクトにストイックなイメージのあるタカテツさんがよくやってみようと思ったなあ、と「夏の出口」を聴きながらしみじみと考えた。僕は個人的には「光の葡萄」がこの日のハイライト、続く「saturday song」をタカテツさん含めみんながラララと歌ってくれたのも嬉しかった(日曜日だったけどね)。

最後のセッション、まずは「犬と老人」。大好きな曲だが同時にまったく理解のできない曲。いつも聴き終わったら「何の話だよ」とつぶやくことになっている曲。演奏してみるとわかることがあるかと思ったが、わからないところはわからないまま。しかしもっと好きになりました。最後は「幸せの風が吹くさ」、僕が1994年に書いた歌。きっと「犬と老人」も「幸せの風」もフィッシュマンズの影響が色濃い楽曲。それを2016年に並べて演奏することができたこの機会に感謝したい。ステージから見えるお客さんの顔も楽しそうだったな。僕ら自身がニコニコと楽しかくしてたからかもしれないな。
終演後、たくさんの握手とサイン。窮屈な思いをさせてしまったかもしれませんが満員御礼の会場、ご来場ありがとうございました。モナスタッフの皆さん、そしてイベント発起人の庄野さんに心から感謝。楽しい打ち上げを遅くまで。ライブ翌日にはすぐ庄野さんから同胞メールが来て、「同じメンバーで同じことを京都でやりましょう」との提案が。いつか実現したらいいな。
