2018年01月28日

“音楽と音楽” 東京編(2018年1月26日 @ 西早稲田 BLAH BLAH BLAH)【ライブ後記】



高橋徹也との共演ライブ、最初はアアルトコーヒー庄野さんが企画した2016年10月のモナレコード「コーヒーと音楽」でした。せっかくだから絶対普段やらないことをやろうということになって、ふたりともステージに出ずっぱりで交互に演奏、カバー、セッションと、なんだかやたらチャレンジングなことを詰め込んだ内容になったのが、多分僕もタカテツさんもくたくたになりながらも楽しくて面白くて病みつきになったのだと思う。その後名古屋、京都、大阪、宮城、福島と回数を重ねて、東京編ということで急遽開催決定となった西早稲田 BLAH BLAH BLAHでの「音楽と音楽」を振り返ります。今回は大阪で合流したおおくぼひでたかくん(a.k.a.おおくぼあおいもなか)のライブペインティングをステージ中央に据えてのスペシャルなものになりました。

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26年前に大学進学のために上京した僕が初めて住んだ街は高田馬場から一駅行った下落合、なので高田馬場と早稲田界隈は自分にとって“初めての東京”、この日の個人的テーマを「TOKYO」としてセットリストを考えました。演奏は僕から、1曲目は「光の葡萄」これは故郷で過ごした時間と東京で暮らした時間が同じになった年にできた曲で、僕が書いた歌のなかで一番東京的な風景描写。続けてGOMES THE HITMANの古い歌「週末の太陽」は仮タイトルが「weekend」、もっと遡ると「WASEDA」という名前で呼ばれていた曲。当時巣鴨(西ヶ原四丁目)にあった母校の東京外国語大学の小さなキャンバスでは夢見た景色が見られなくて、僕は早大生を気取ってよく早稲田へぶらぶらと遊びにいっていたのです。対するタカテツさんは漠然と「幼年期」というテーマで歌を連ねます。

続けて歌った「東京午前三時」は猫に問いかける歌。言葉探しで悶々と眠れないうら寂しい真夜中、薄暗いキッチンにいたポチに「なに?そこでずっと待ってるの?」と話しかけた瞬間にこの歌が浮かび上がったのを忘れない。「ドライブ」も真夜中から明け方にかけての歌で、太平洋を右手に眺めながらある町から東京までのドライブの行程を綴った。「ドライブ」をタカテツさんとセッションするのは何度目かだが、毎回ハッとする新しい発見がある。僕が滑り込んだ、植え込みで猫が鳴くドライブインは「真夜中のドライブイン」と似たような景色や雰囲気だっただろうか。「ハリケーン・ビューティー」はこの日初めて手合わせをした曲。音源で印象的だったので僕もシンセを持ち込んで「なるようになるさ」と曲はスタートしたのだけど、本番の演奏がとてもグルーヴして興奮した。もうこれ以上のことはできないのではないか、というくらい。

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ふたりの共演で恒例となった日本語カバーの応酬。今回僕が選んだのはHEATWAVE「トーキョー・シティ・ヒエラルキー」で、大好きな曲だけど自分で歌ったことはなかった(だから年始から暇さえあればずっと練習した)。2回転調するこの曲はだんだん熱を帯びてゆくのだけど、僕はその言葉を丁寧に歌うことにフォーカスした。いつもこの歌を聴いて思うのは、東京はそんなに無慈悲な街じゃないな、ということ。「山田くんじゃなくてオレが小沢健二カバーしたら意外でいいよね」とタカテツさんが言ったとき、歌うなら「昨日と今日」しかないなと思った。当日もぎりぎりまでやるかどうか彼は悩んでいたけど、やってよかったですね「昨日と今日」。オザケン大学出身の僕はギターでサポート。ばっちりかっこいい演奏になりました。

この時点で背景の絵はかなり育っていた。おおくぼくんは描いたものを塗りつぶして、またその上に新しい絵を足していくスタイルなので、ステージ上の僕らより客席の皆さんのほうがその変遷をきちんと目撃したことになります。この日おおくぼくんが完成させたジンを題材にひとネタ。「コーンポタージュスープ」という文章をモチーフに3人でセッション。おおくぼくんはラップスティールギターを、タカテツさんは朗読、途中からサイケでアシッドな演奏になってきて、無国籍な歌へ昇華。最高に面白かったな。「猫とホテル」も3人のコンビネーション、さらに猫コーナーという括りにして僕の2017年に出会ったなかで一番好きな歌、むぎ(猫) の「天国かもしれない」まで3人での化学反応を楽しみました。おおくぼくんも猫2匹と暮らしているから、否応なしに猫の話題になる。最近タカテツさんが心酔しているパンダのシャンシャンの話をさせてあげられなくて申し訳なかった。

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ここからMCを挟まず「小さな巣をつくるように暮らすこと」「夕暮れ星」「セラヴィとレリビー」と交互に続き、それぞれの曲に対してそれぞれがコーラスを重ねたりして、こういうことが自然とできるようになっていることに、やっぱり驚く。ともに孤高、というよりもひたすら孤独な活動を長いこと続けてきた歌い手なのに、こんな構成のライブをストレスなくやれていることが面白い。「スタイル」「幸せの風が吹くさ」「My Favoutrite Girl」「my favorite things」とアップテンポな曲で本編が締まったので楽しい印象が色濃く残りましたが、かなり硬派なシーンも含む、“攻めた”ライブだったなあと改めて思いました。こういうのはタカテツさんとしかできないことなのかもしれません。

アンコールをいただいて最後に演奏したのはこの新しいお店を仕切ることになったベーシスト鈴木淳さんの大学の先輩であるフィッシュマンズの「エブリデイ・エブリナイト」。急遽開催を引き受けてくださった淳さん、BLAH BLAH BLAHのスタッフ皆さんに感謝とお祝いを。2時間半の「音楽と音楽」にお付き合いいただいた満員のお客さんたちにもお礼を。当初は、ずっと続いてきた二人旅の総まとめになれば、と考えていたけど、また新しい旅に出たくなるような充実した夜になりました。誰も僕らのことを知らないような、最果ての町みたいなとこでやりたい。

2018年がうまくキックスタートできた。今年もよろしくお願いします。

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Posted by monolog at 12:54│Comments(1)
この記事へのコメント
HEATEWAVEの曲を知らなかったのでネットで調べて色々聞きました。音も山口洋さんの声も宝石みたいにとても良くて、いくつになってもこんな瞬間はワクワクします。山田さんのおかげで好きな音楽が増えました。ありがとうございます。
Posted by Atsuko at 2018年01月29日 01:00