2018年05月21日

“夜の科学 in 下北沢ー小箱のなかの音楽 26”(2018年5月19日 @ 下北沢 lete)【ライブ後記】



2ヶ月に1回のペースで続けている下北沢leteでの弾き語りワンマン「夜の科学 in 下北沢〜小箱のなかの音楽」も26回目になった。前回の2月、そして今回5月ということで、様々な作業やレコーディングの真っ只中になることはわかっていたけれど、いったいそのタイミングで自分がどういう内容のステージをやるのか全然想像できなかったから“狭間の季節”という言葉を使った。果たしてライブの日が近づいてきて、この日は誰も聴いたことのない歌や数年俎上に載らなかった“辺土をさまよう曲”を歌おうと思いついた。GOMES THE HITMAN『SONG LIMBO』の再録作業やアーカイブス整理の過程で再会したり思い出した歌たちをセットリストの中心に置いて全21曲、2時間強の内容になりました。

久しぶりに土曜日の夜の下北沢lete、満員御礼。この日も朝から晴れて暑かった。僕は夕方までレコーディングをしてたので、もうすでにたくさんの汗をかいていました。5月なのに夏を感じる夜、GOMES THE HITMANのサマーソングを紐解きます。「スティーブンダフィ的スクラップブック」は定期的に歌いたくなる歌。「僕は悲しいんだ/元気なだけで」というフレーズは何日か前に書いた「悲しくてもお腹は減るし、お腹いっぱいになっても悲しい」っていうことと同じこと。「down the river to the sea」には「universal student」という違う歌詞の前身があり、それは僕が学生時代にアメリカ人に向かって「僕は大学生です」と言おうとして「宇宙の生徒です(あるいは、普遍的な学生です)」と言い間違えたことに由来するんだけど、その歌詞で前半を歌って、後半は実家近くの夏の風景描写を歌ったオリジナルの歌詞で歌った。

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ここから先が怒涛の未発表曲コーナー、まず「君の街まで」という曲は2007年頃書いた曲で、自分のなかでは春からハマっているNHKの朝ドラ『半分、青い』の世界観と共通する(と感じる)曲。一度立花綾香バージョンのデモを録ったことがある。「the loved one」というのは、自分でもまったく忘れていた、『omni demo』と記載されたCDRに入っていた小曲で、2001年頃ポチと暮らし始めて書いた「娘よ」という曲と同時期に書かれた小さな幼い誰かのことを歌ったラブソング。「魔法があれば」と「毎日のポートフォリオ」は数年ぶりに聞き返してみて印象がガラッと変わった。これはバンドで演奏したらすごくよくなるんじゃないかなと思った。2000年代後半、10年前くらいに書いたポップな曲だけど、歌詞が重たく響く。

「かげおくり」は2005年に書いた。すごく良い歌になった。熟成とかそういうのが音楽でもあるものなのか。「逃避行へ」という曲も10年前くらいの曲だけど、人前で歌ったのは初めてかもしれない。「誰かが投げた赤いフリスビー/カモメが飛ぶように消えてった/きれいな石を固く手のひらに閉じ込めて/逃避行へ」という歌詞をてらいもなく今書けるだろうか、と思う。キラキラしている。この「逃避行へ」という曲は土曜日に海へと“逃避行”する曲だったが、数年前に書いた「saturday song」という曲はもっと等身大というか、憧れとかそういうのから解き放たれて、晴れた土曜日にふらっと海へ出かけようぜ、という歌だ。葉山とか伊東とか、鎌倉よりももう少し遠くの海へ、7月になって無事リリースが完遂したら出かけたいなと思う。そしてまた9月には外国へ行きたいな、という思いを込めて「ただの旅人」を歌いました。

クラウドファンディングも継続中の『新しい青の時代』から「月あかりのナイトスイミング」「一角獣と新しいホライズン」。このアナログリイシューに伴うボブ・ディランの話の流れから高野寛さんが日本語訳詞をつけて歌っている「時代は変わる」をカバー。高野さんが原詩を離れて独自の解釈で書いた3番の歌詞は僕もオリジナルの言葉をつけてみた。「何もかもが変わっても/何ひとつ変わらないものもある/命果てても終わりじゃなく/時間とか距離を越えて/僕はなにひとつ忘れはしない/時代は変わってゆく」というのが僕の書いた詩。カバーは続いて小沢健二の「フクロウの声が聞こえる」を。5月の日本武道館を一緒に観た友だちに僕がぼそっと「素晴らしいね…」という言葉をもらしたのはこの曲の直後だった。その日だけ最後の最後にもう一度演奏されたこの曲が僕の一番好きな小沢健二になった(でも家でCDでは聴けないからライブのことを思い出さないといけない)。そして村田和人さんの7月に出る“新作”から「(Nothing's gonna change)Lovely Days」をカバー(半分セルフカバーっていうことになるな)。サマーアンセムになってほしい。本編最後は『MUSIC FOR MUFFIN CAFE』の話をしたあとで「新世界のジオラマ」、もともと「sesami sweets」というインスト曲だった歌。

アンコールで「セラヴィとレリビー」、そしてGWの巣巣での15周年記念イベントで朗読した「きれいな言葉で」、そのオリジンである歌を久しぶりに。実はこの歌は僕が40歳になってから初めて歌った曲だった(全然憶えてなかった…!)。またいろいろ組み立てなおしたり、やりなおしたり、唇になじませたりしていきたいなと思いました。きれいな言葉と美しい日本語で愛すべき日々の機微や本当のことを綴っていきたいのですよ、僕は。最後は「ハミングバード」。もともと『新しい青の時代』というアルバムは僕のギターとハーモニカで始まって終わる、10曲入りのレコードを想定して作られたのですが、5年という月日を経てその物語が結実する日をもうすぐ迎えるということに心のときめきを感じます。たったの5年でもいろんなことが変わっていくし、もちろん変わらないものもたくさんあるのです。この日のライブはとにかく最初から最後までずっと歌っていて自分自身が楽しい時間でした。この日限りにならないように“辺土をさまよう曲”たちに光を当てる時間を持ちたいと思います。

終演後にはタカテツさんとかギャラリー芝生のユサさんが遊びにきてくれてしばし歓談。芝生とleteは雰囲気が似ていると思っていたので、lete町野さんにユサさんを紹介できてよかった。週末、遅くまでのお付き合い、ご来場ありがとうございました。次は梅雨が明けた7月に。

Posted by monolog at 12:31│Comments(0)