2021年03月19日

サン・ラーとラナ・デル・レイ

映画『サン・ラーのスペース・イズ・ザ・プレイス』を観にいった。アメリカの音楽家、詩人、思想家であるサン・ラーの映像作品だというくらいの認識だけを携えて、なんだかすごそうな感じ…と思ってスクリーンと対峙したわけだけど、おれ今これ何を見せられているのかと終始くらくらするようなギラギラと奇天烈な刺激的な映画だった。近年のBLACK LIVES MATTERと絡めて語ることも無理やりならできるかもしれないけれど、とにかく鮮烈でユニーク、時空の歪んだ宇宙的物語だった。「アフロ・フューチャリズム」と呼ばれる思想がある。音楽家に限らず黒人アーティストたちによるこの思想は、アフリカという精神的故郷を失った黒人が「宇宙人に連れ去られた」「本来はわれわれは宇宙出身だ」と自らの暮らしや文化のルーツを宇宙に求めることで、ピラミッドやファラオといった、エジプト文明もそのモチーフとなる。P-FUNK一派やアース・ウィンド&ファイヤーのビジュアルに伺えるが、今も連綿と続くアフロ・フューチャリズムの系譜に興味が湧いた。

この日街へ出たのはラナ・デル・レイの新しいアルバムを発売日に購入するためだった。一昨年サンフランシスコに行ったときにレコード屋に並んでいた前作『Norman Fucking Rockewell!』で完全に虜になってしまった僕にとって1年半ぶりの待望の新作。間違いなく今年の個人的最重要作である。映画を見終わったあとついにアナログ盤を手に入れて早足で家まで帰り、ターンテーブルにレコードを乗せて針を落とす。歌詞を目で追うとなんとオープニングトラックに「Like Sun Ra/I feel small/But I had it under control every time」というフレーズがあり「なんだこれは」とそのシンクロニシティにびっくりする。Lana Del Rey『Chemtrails Over The Country Club』、ものすごく重厚で美しいレコード。ずっと聴いている。

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Posted by monolog at 23:35│Comments(0)