引っ越しの当日にまたお別れの挨拶に押しかけて、なにもなくなってガランとした家に入れてもらった。当然うちと同じ間取りなので奇妙な感覚に襲われる。こんなにこの部屋広いんだっけ?と思うし、僕が10年前に初めてこの家を内見したときのことなんかも思い出す。窓から見える庭もほぼほぼ同じ風景なのにまったく違う雰囲気に頭が混乱したし、なんだか面白かった。さよならの挨拶をして自分の家に戻り、物であふれて猫がゴロゴロ喉を鳴らすリビングを見渡してみる。僕はここ何年かで断捨離というのをあきらめてしまったが、意図せずしてからっぽのこの部屋を見る機会を得て、いろんなことを思ったのだった。
