映画『アザー・ミュージック』を観た。思っていたより全然エモーショナルなドキュメンタリーで、涙が出てびっくりした。一度も行ったことのないお店なのに、20余年の時間と空間が濃密に愛されたことがひしひしと伝わって、その場所の消失にため息をついた。ひとつの伝説的なレコードショップの物語であると同時に、音楽業界あるいはレコード業界の過去・現在・未来の話だ。魅力的な店員さんがたくさん出てくる。映画「ハイ・フェデリティ」のなかのジャック・ブラックとトッド・ルイーゾみたいな、週3で雇われてるのに毎日レコード屋に現れるスタッフみたいなめんどくさい音楽狂いたち。めんどくささこそ「愛」なのである。
「四六時中音楽を聴いていたいんだよ。好きな音楽も好きじゃない音楽も」という言葉に強く共感する。好きなレコードを買うのは当然だけれど、好きじゃない音楽だって聴きたいのだ。好きじゃない部分にも意味がある。生きているうちに少しでも多くのレコードを聴きたいって思っている僕みたいな人間には「アザー・ミュージック」はまた新しい扉のような、底なしの沼へ誘うような映画だった。レコード屋散策が好きな人、音楽にたずさわりたいと思っている人は絶対観にいくといい。
3年前にサンフランシスコを旅したとき有名な観光地にはひとつも行かないでサンフランシスコ市中の開いてるレコード屋を2日かけて全部まわった。またそういう旅がしたい。買い付け旅行で駆け回って、いつかレコード屋さんをやれたらなんて簡単に妄想したりするけれど、その大変さを思うとなかなか叶わない夢だなあと感じる。毎日レコードを買う僕自身が同時に「こんな時代に誰がレコードなんて買うの?」とも思う(おれとか彼とかあいつくらいだよ、と)。この映画を観たタイミングで今週末、トラベラーズファクトリーでのアニバーサリーイベントで2日間限定の中古レコードショップ「TRAVELER’S RECORDS STORE」をやることがとても楽しみではしゃいでいる。昨日はエプロンを買った。今日はこれから推薦コメントカードを書く。週末、中目黒でお会いしましょう。