視力の悪さには下げ止まりはないようで、裸眼だとあんまり気にならないけど(もうどうやったって何も見えないからな)矯正した視力に関して、やっぱり歳を経るごとに見えない目がもっと見えなくなっていく感覚が、ある。映画館で映画を観るのも最近は後ろからだと字幕が読めなくて前の方で観るようになっていたし、今年は車でツアーすることが多くて道路の青看板の表示が見えにくいのも問題だなあと感じはじめた。そして最近、何座かの流星群だという夜に空を見上げたときに星が滲んで見えにくくて、嗚呼もっと目が良く見えたらどんなに素敵か、となった。
思い立って眼科に行ってきた。コンタクトレンズをネット通販で購入するようになってもう何年経つのかわからないが、僕のコンタクトレンズの度数はもしかしたら10数年前に調べたままだったかもしれなくて、きちんと視力を調べてもらって、今のレンズよりもかなり度をあげたレンズを装着してみると…、なにこれ!めちゃくちゃ見える!なんか視野も明るい気がする!と静かに興奮するオレ。わー、この度数、これにします!と伝えるも、今まで感じたことのなかった感覚がひとつ。遠くは良く見えるけれど手元の文字にフォーカスが合わない。もしかしてこれがいわゆる…。看護師さんに「今まで老眼という概念が自分のなかになかったんですけど、これ近くが見えない感じって、これが…」と尋ねると「老眼ですね。35歳くらいから誰でも老眼になります。山田さんは遠くも近くも見えていなかったから気づかなかったんでしょうねえ」と言われた。僕の目はとにかく節穴だったのである。僕の目は左目が利き目みたいで、裸眼だと左目のほうが右よりもよく見えるから「星に輪ゴムを」の “よく見えるほうの目” を歌うときは右目を閉じることにしている。かなり見え方も違うのに、なぜコンタクトレンズになると左右同じ度数をつけて大丈夫なのかがずっと不思議。
めちゃくめちゃ見えるようになった目のまま病院を出て、雲ひとつない冬晴れの街を歩いて、目に見えるものがすべてクリアで世界が変わったみたいだった。紅葉した木々、空の青、彼方に飛ぶ飛行機がこんなにはっきり見えるのも初めてじゃないかな。目を細めてなにかを睨むことが極端に減る。これは表情も変わるかもね。ちょっとしたことだけれど、この感覚は久しぶりに自転車のタイヤに空気を入れてもらって「わあ自転車、えらく軽やかになったな!」と足取りが軽くなる感覚に似ている。49歳からの山田稔明の目はこれまでと違ってもっと遠くまでよく見えるようになった。そして人生で初めてのリーディンググラスを自分への誕プレに贈る。あらためて、毎日の暮らし、愛すべき日々の機微を見つめて書きとめていきたいと思います。

