2023年08月17日

夏のどん底で

水曜日、午後5時、僕はどん底で高校時代の友人に卒業以来の再会を果たした。「どん底」は新宿三丁目にある1951年創業の老舗洋風酒場だ。黒澤明、三島由紀夫をはじめ多くの文化人が愛したお店。数日前、突然に高校の同級生宮下が「お久しぶり」とLINEで声をかけてきた。1年のとき同じクラス(共学なのに男子しかいないクラス)でバレーボール部でも一緒だった宮下。入学して最初期の友だち、忘れるわけもなくはっきりその顔を憶えている。ひょんなことから高校の同窓会LINEグループに招待され、数十人いる名前のなかから僕のことだけ思い出したらしい。

久しぶりにもほどがあるけれど、彼のLINEアカウントが「宮下(どん底)」なのが気になって「なんなん?どん底って(ひどい暮らしをしてるのか?)」と問うと、「あ、おれ22歳のときから新宿のどん底っていう飲み屋で働いてます」との答え。衝撃の事実。どん底はレコード会社の人に連れていってもらって以来僕の大好きなお店で、いつかの年はバンドの新年会もここでやった。高校卒業以来会っていない宮下とずっとニアミスしていたことになる。「どん底、行く。今日行く!」と開店時間の17時にお店を訪ね、実に31年ぶりの再会。いろんなことを忘れていて、些細なことを憶えている。そして少しずつ欠けた記憶が蘇っていく感じ。1990年代からずっとお互い東京の街で暮らしながらも一度も交わることのなかった僕と宮下。「でも若くて何者でもなかった頃には知り合いに会いたくなかったよね」という意見で一致する。風の噂レベルでしか僕が音楽を生業にしてることを知らなかった彼、かかっていたお店のBGMをU2から『新しい青の時代』にしてくれたけれど、僕の歌をどう思っただろうか。

「お会計を」という頃に宮下が「LINEグループの名前見てて正直おまえだけ“会いたい”と思ったんだよ」と言った。照れるじゃん、バカ。50歳になる年の再会、またいつでも会えるっていうのが嬉しい。今度は誰をどん底に誘おうかと考えているところ。

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Posted by monolog at 23:27│Comments(0)