2023年12月20日

“ゴメスの名はゴメス” vol.4 ripple in my heart/進化・深化(2023年12月8日 吉祥寺スターパインズカフェ)【ライブ後記】

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GOMES THE HITMANのライブから10日ちょっと過ぎて、あらためてあの日のステージを振り返りたいと思います。10月開催の予定が僕の網膜剥離によりスライドしたアニバーサリーライブの第4弾、『mono』『omni』『ripple』という2000年代のアルバムに焦点を絞った回。セットリストを作るのにとても難儀して、あれもこれもやりたい(これをやるのはしんどいけど、、とか)と最後の最後まで協議した。当時5人目のGOMES THE HITMANだったPLECTRUMアッキー(藤田顕)を迎えて5人でスタジオに入って音を鳴らすと“あの頃”の雰囲気と“今”の雰囲気が同居するとても不思議な感覚を味わった。

長時間リハーサルを3日やって、会場入りしてもまだ試してみる。つまり、この5人で演奏する楽しさ、面白さ、喜びみたいなものが大きいのだということに気付かされたライブだった。長男堂が用意してくれたお弁当がとても美味しくてみんな黙々と食べる楽屋。19時になって、12月恒例の「Christmas is Coming」を聴きながらステージへ。この日もたくさんのお客さんを前に演奏できる幸せ、ライブをひとつ飛ばしてしまったので改めて「当たり前なことではない」と感じます。音楽が止み『mono』のオープニング「6PM intro」が流れ始めてライブがスタート。

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「別れの歌」をきちんと5人で演奏するのは多分初めて。前ドラマーの脱退からの流れで打ち込みのリズムを使用したことや淡々とした曲調からずっとバンドでやることを避けていたのかもしれないけど、20年以上のときを経てとてもエモーショナルな曲だなと感じる。けっちゃんがこの曲のドラムを再現しようとずっと練習していたのが印象的でした。またやりたいと思った。続いて『mono』の曲順通り「夜明けまで」へ。自分がタバコを吸っていた頃に書いた曲を歌うのはちょっとくすぐったいけれど、間奏のギターフレーズをアッキーが弾くとやっぱり「本物!」ってテンションがあがってニヤニヤしちゃう。続けて『omni』から「愛すべき日々」、2000年代初頭、なんと濃厚な季節だったのかと感じる並び。楽曲を時系列に並べるかどうか迷ったけれど20年を経た物語を最構築しようと思いました。

『ripple』から「ドライブ」、この長尺の曲をこのメンバーでしっかり演奏するというのが個人的にはこの日のひとつの目標だった。だんだん音が重なって熱くなっていく演奏がまたサーッと引いていく感じ、『ripple』で表現したかったのはその波紋、20年経って少し掴めた感覚。「ドライブ」から「califorinia」へ。まさかこの曲を取り上げることになるとは思わなかった。最後のリハーサルでセットリストに加わった変わり種だけれど、演奏してみると「なんでもあり」だった2000年代のバンドを象徴しているような気がしました。ここから「情熱スタンダード」につながるジェットコースターみたいな流れ。そのまま「笑う人」へ続き、2023年に「mono・omni・ripple」が混ざりあった。

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この日は曲数が多かったからMCは少なめだったけれど、アッキーを含めて振り返る20年っていうのはなかなか味わい深い。結局「あの頃いろいろしんどかったよねえ」という話になってしまうけれど、今があるから笑って話せるのかな。「忘れな草」「それを運命と受け止められるかな」「carolina」とスケールの大きな歌のつづれ織り。あれから20年経ったからといって余裕しゃくしゃくからは程遠く、汗をかきながら夢中で必死に演奏。「このままこの時があと2年も続けばなあ」とか「電話よりも手紙よりも確かな声」とか、自分で書いた言葉がひりひりする。

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場面は変わって新曲コーナーへ。「余韻」はどんどんバンドに、体に馴染んできた。客演するミュージシャン(前回の哲さん、今回のアッキー)が「この曲好き」って言ってくれるのが嬉しい。今年たくさんゴメス用に曲を書くきっかけになった曲。そして今回初披露の新曲はできたてほやほやの「blue hour」という曲。朝焼けの前の空が群青色の時間をブルーアワーといい、そのひとときに想いを巡らせた。網膜剥離後に書いたから目の見え方が歌詞に内包されていて、きっとまたこの季節を思い出すことになるだろうと思う。アッキーにざっくりとTeeage Fanclubみたいなギターを弾いてもらうようにリクエストした。

そして新曲コーナーの最後は「レモンティーと手紙」、堀越メンバーがついに前に出てきてギターを弾いた。アッキーがいてもリードを弾くのは堀越。須藤さんも途中で前に出てきて竿(ギター)が4本並んだのも壮観でした。この期に及んでこんなアッパーで疾走感あふれる曲を書けるなんて思わなかった。今年の収穫のひとつかもしれないな。新曲群は今年秋からレコーディング作業をやっているのでそんなに遠くない未来にお聴かせすることができるかもしれません。
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飛び入りゲストとして上野洋くんを呼び込んで「blue bird」で後半スタート。『ripple』のなかでも印象的で軽やかな曲はやっぱりこのすべてのパズルのピースが合わさったかたちでこそ相応しい。上野くんとの付き合いも長く、僕はアニメ関連の仕事ソロでも彼にお世話になっている。今年は『Christmas Songs vol.2』のマスタリング作業を担当してもらった。

「男なら女なら」も上野くんとバンドで録音した曲。後奏のバンド演奏を聴きながらなぜかしみじみと感じ入ってしまった。「そばにあるすべて」は『omni』の表題曲と言っていいかもしれない。バリトンサックスのソロをフィーチャーした曲を上野くんのフルートに変換して。個人的なハイライトはこの「そばにあるすべて」でした。時を越えて己の背中を押す言葉たちよ。

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あらためて6人のメンバー紹介、上野くんを送り出して「手と手、影と影」。久しぶりにアコースティックギターで演奏した。この曲も自分にとってお守りのような、とても大きな歌。この日は特に熱を帯びて響いていたように思います。「サテライト」も当時よりも爽快に前に、遠くに向かって鳴る感覚。なにが変わったのか、と考えてみて思うのは止めずに続けてきて手に入れた魔法かも、って思う。アッキーのアルペジオにいざなわれて本編最後は「happy ending of the day」。おやすみなさい、昨日の夢の続き。

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アンコールで「明日は今日と同じ未来」。2000年代半ばに活動休止に至るGOMES THE HITMANのクロージングテーマはこの歌だと感じていたので、違う意味を込めて前向きな歌に塗り替えたかった。「もう答えはどこにもない」って歌いつつも本当は答えがなにかをわかっている、みたいな。解釈は僕次第なのだ。この日誕生日でいよいよ50歳になる僕の耳に鈴の音が聞こえてきて…、サプライズゲストもうひとり、PLECTRUMタカタタイスケがケーキを持ってステージに登場。会場全体で誕生祝いをありがとうございました。タイちゃん含めて「sweet december」、この曲もバンドで2005年から演奏しているのだな。もう18年にもなる。このときのミラーボールがとてもきれいでずっと天井を見上げていました。

ここまで来たらもう大騒ぎするしかない。時系列でバンドの歴史を振り返ってきた“ゴメスの名はゴメス”、「饒舌スタッカート」をついにここで演奏。タイちゃんも含めてトリプルギターで、お客さんも総立ちになって、この日一番大きな音で最後の曲を。結成30年も、あれから20年もなし崩しになるような大人げない演奏で締めくくり、大団円。僕らもPLECTRUMも大学のサークルで結成されたバンドだから集まるとそこは部室みたいになるのだな、結局。

2時間半を超える長い夜になりました。20年前みたいに真剣に楽曲に向き合って付き合ってくれたアッキーに感謝。上野くんとタイちゃんにも心からありがとう。メンバースタッフはもちろん、スターパインズカフェの皆さんにもリボンをつけてお礼を。この日のステージ、ベースイトケンこと伊藤健太が素敵な写真をたくさん撮ってくれました。

年を越えて、次は来年3月にタイちゃんを迎えて「ゴメスの名はゴメス」完結回を行います。また吉祥寺でお会いしましょう。ご来場の皆様、配信でご覧いただいた皆さん、ありがとうございました。

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photo:伊藤健太

Posted by monolog at 12:00│Comments(0)