2024年03月19日

ゴメスの名はゴメス vol.5ーflashback & headlight/現在位置と近未来(2024年3月16日 @ 吉祥寺 スターパインズカフェ)【ライブ後記】

昨年4月から始まったGOMES THE HITMANの結成30年を記念したシリーズライブ、秋に僕が網膜剥離で伏せたことから1回延期になったために年度末の3月に最終回をリスケジュールして迎えた「ゴメスの名はゴメス vol.5」、現在位置と近未来と名付けたのは最新オリジナルアルバム『memori』と新曲群で構成したノスタルジーに浸らないセットリストを想定していたから。

この日はリハーサルからずっと気分も調子もよくて、自分の耳に聞こえる音が全部クリアな感じがした。思えば名古屋・大阪のツアーあたりから歌うのがとても楽しくて自分の声を客観的に聴いている気がする。この半年で目の見え方が変わったけれど、同じように耳の感覚も変わったのかな。本編は「baby driver」で始まる予定だったのを急遽アカペラの「metro vox prelude」をやりたくなってみんなでああでもないこうでもないと30分練習。こういうところがバンドの楽しさ。かくしてアニバーサリーライブの完結回がスタート。

DSC06546

アカペラのイントロダクションから「baby driver」「毎日のポートフォリオ」とアルバムの曲順通りのオープニング。「夢の終わりまで」はタカタタイスケプロデュースによるシングルバージョンで演奏。“やりすぎた”からお蔵入りになったというのはネタというかお決まりのジョークだけれど、演奏してみるととてもステージ映えする。あくまでもアルバムの全体像を考えたうえでの決断、タイちゃんは良い仕事をしたと感謝している。「魔法があれば」も彼が魔法をかけなかったらこんなカラフルにはなっていない。「night and day」も現在位置での等身大GOMES THE HITMANポップスだと感じる。「memoria」がもともと「maman」という仮タイトルだった話はどこかでしたことがあったかな。母親がいなくなることを想像して作った歌だった。いつかまた逢えないかな、ほんの少しすれ違うくらいでいいから。

ステージは4人だけになって「小さなハートブレイク」、今度は父親に捧げた歌。「悲しみのかけら」もなくしてしまったなにかについての歌かもしれない。そう考えると『memori』というアルバムは「目盛り、記憶、思い出」についての作品なのだなと今さら改めて考えている。アニバーサリーライブが年をまたいでスライドしたことによりメジャーデビュー25周年という熨斗もついた。25年前の未発表曲として「slope song」という、いわゆるボツ曲を演奏。これは3月の下北沢レテの弾き語り公演で初めて歌った歌、バンドメンバーも初めて聴く曲だった。小気味よいギターポップ、なかなかどうして、悪くないね。

DSC06560

DSC06596

DSC06587

四半世紀前からタイムスリップして、昨年から毎回書き下ろしてきた新曲へ。「余韻」はもう完全に体に馴染んだ感じでグルーヴを楽しむ余裕が出てきた。続いてけっちゃんが選んだ2004年リリースの「GOLDEN8」は卒業ソングの仮面を被った別れと旅立ちの歌、この曲をレコーディングして20年になるのかと感慨深い。名阪ツアーから堀越メンバーがギターを弾くことになった新曲「blue hour」、網膜剥離後に書いた“見え方”についての歌。続いて堀越が選んだ「拍手手拍子」は2000年代前半のGOMES THE HITMANを牽引したナンバー、みんなでシンガロングできる現在、とても尊いなと思う。アコーディオンの曲をもうひとつ、新曲「新しい朝のワルツ」もみんなで歌えて楽しい。

上から下まで衣装替えしたタイちゃんがステージに戻ってきて新曲「レモンティーと手紙」。どんどんテンポが早くなっていく。大人げないエモーショナルな歌がセットリストに加わったこの1年。ゲストで加わるミュージシャンがみんな楽しそうなのが嬉しい。みんなニコニコしてて。「ホウセンカ」からの『memori』後半戦はこれまでにないくらい感情の発露を表すような時間になった。個人的には「ホウセンカ」は重たい歌だから演奏するのがあんまり好きじゃないんだけど、この日はとてもいい歌が歌えた気がする。混沌からの「houston」も爽快だった。ここまで宇宙遊泳的になれるのはタイちゃん効果。本編最後は「ブックエンドのテーマ」。30年間で出会った人たち、みんなが元気で幸せでありますように。

DSC06597

DSC06605


杉真理さんがステージに。僕がラジオにサプライズ出演しにいったときに打ち合わせたことではなく、急遽当日朝の9時に決まったサプライズ。わーそしたら一緒に「夢を見るだけさ」を歌ってください!とお願いして承諾を得たあとにメンバーみんなに連絡したのに、演奏を始めたらみんなが伴奏をつけてきて感心した。GOMES THE HITMAN、さすがだな。初めてお会いして四半世紀、ずっと気にかけて優しくしてくださる杉さんにこの日のライブを観てもらえたことがとても嬉しい。ずっと背中を追いかけていきたいです。ハッピーバースデーを会場みんなと歌えたのも良かった。大先輩に心から感謝。

DSC06659

DSC06663

25年前のデビュー作から「tsubomi」を演奏してクライマックスへ、という前に、まっさらな新曲をもうひとつ。今回はとても苦労した。ギリギリまで書けなくて、もし新曲できなかったら「slope song」があるからいいよね、という話にもなっていたんだけど、ライブ前日に歌詞とメロディが完成して、最終リハーサルに間に合った。まだタイトルのない曲、「ディスコビートがいい」と誰かが言ったから作った。これからどうなるか楽しみ。“もう「あの頃みたいに戻りたい」なんて本当は思ってない”という歌詞が気に入っている。

最後の最後は「雨の夜と月の光」、ミラーボールが満を持して回って星がきらめく。ゴールテープを切るような最高な気分で歌えました。みんな立ち上がって、飛び跳ねてくれてありがとう。1993年にバンドを組んで、僕は初めてボーカリストになりました。1999年にデビューが決まって音楽だけで生活するようになって25年、良いことも良くないことも楽しいこともしんどいことも、いろんなことがあるけれど、まだまだ続けていきたいって思う。その気持ちに突き動かされてこれからも歌を歌います。メンバー、スタッフ、そしてスターパインズカフェの皆さんにも心から感謝。

また夏にお会いしましょう。

DSC06715

DSC06711

line_oa_chat_240317_072931


Posted by monolog at 23:26│Comments(0)