1曲目はゆったりと「センチメンタル・ジャーニー」、今回のセットリストのなかで唯一メジャーデビュー前の歌だが、「ドラマのない夏などない」という歌い出しのフレーズはいつも夏の最初に似合う。「長期休暇の夜」も音源より幾分ゆっくりと(適正なテンポで)四半世紀の時間を経た演奏。「何もない人」「ready for love」と1999年『weekend』楽曲が続く。堀越ボーカル「お別れの手紙」から「train song」のメドレーで“あの頃”を切り取った。


リリースの時系列に沿ってセットリストは進んでいきます。『cobblestone』から「keep on rockin'」はステージ上から眺めた客席のニコニコした顔が印象的だった。みんなよく歌ってくれる。「思うことはいつも」もみんなでラララと。夏のギラギラした日差しを「太陽オーケストラ」のささくれたギターの音で描き出す。蝉も鳴き出して「20世紀の夏の終わり」が続いて夏を駆け抜ける。2000年代初頭の混沌時代を代表して「愛すべき日々」をセレクト。
現在進行形のGOMES THE HITMANを示す新曲群、「余韻」はすごくあっという間にいとも簡単にできた曲で、歌の勢いにようやく僕らが乗りこなせるようになってきた。「レモンティーと手紙」も演奏するのがとにかく楽しいロックチューン。バンド結成から30年、想像すらできなかった五十路の自分たちがこんな新曲をかき鳴らしているのが面白い。「新しい朝のワルツ」も試行錯誤を経てやっとGOMES THE HITMANの歌になったように感じた今回のステージでの演奏でした。「僕らの暮らし」のなかで夢想した将来像とは違う今があったとしても、今このときが一番面白いな、と思うのです。

今回個人的に一番感情過多になったのは「星に輪ゴムを」と「手と手、影と影」だった。少し今までの歌の感じと違うエモーションがそこにあった気がしました。2005年の『ripple』というアルバムは盛り上がりとか感情的になることを意図的に廃して淡々と冷静にリズムを刻んだ作品だったけれど、そこに思うままの感情を足してみたらそうなった。「サテライト」もそう。声が枯れたり息を切らしたりして歌う「サテライト」は19年目にして生まれ変わった感じがする。
最新オリジナルアルバム『memori』からは当初「baby driver」と「ブックエンドのテーマ」を演奏する予定だったのが、直前になって僕が「memoria」をやりたいと差し替えた。母親との離別を想像して書いた歌だったので母の一周忌に近い夜に歌いたくなったから。客席からのコーラスも心強かったな。本編の最後を一番新しい新曲で締めくくるというのも僕ららしいトライなのかもしれない。「ポリフォニー」というタイトルになったディスコチューンは僕らをいくらか若返らせるような力を持っている。


アンコールは思っていた通りにぐちゃぐちゃに。「光と水の関係」をアンコールでやるのは新鮮。「饒舌スタッカート」を4人でやるのもカロリー高くてがむしゃらにやらないといけなくて、そういうのもまた面白い。だから全然老成しない。記念撮影タイムに「僕はネオアコで人生を語る」を演奏したので25年で25曲のセットリストのはずが正確には26曲になった。本当に想定外だったのでハーモニカもナシ。最後の最後にミラーボールの光の雨が降るなかで「雨の夜と月の光」。この曲を1999年に書いた自分を猛烈に誉めたいと思う。いつも。ライブの最後の最後にいつも。
まだまだ面白いことができそうな気がして、GOMES THE HITMANというバンドはその面白いことのほうに向かってこれからも続いていくのだろう。そんなことを思うこの夜のステージでした。2時間半のライブが終わって達成感を感じつつも名残惜しかったけれど、また名古屋と大阪で25曲演奏することができるんだなと思うと嬉しい。たくさんのご来場、ありがとうございました。アンコールでオールスタンディングの客席のみんなは本当に楽しそうにキラキラして見えます。これからもお付き合いください。
あと15年くらい頑張りましょうね。