八月のベルカント企画の3回目、埼玉県川越市にある雑貨と音楽のお店amistへ。このお店へは今年の春にふらっと遊びにいった。僕のCDを取り扱ってくれているのをSNSで見かけて興味を持ったのです。観光地の“川越”からは車で15分くらいの、(良い言い方をすれば)質素な、味わいのある昔ながらの商店街に佇むおしゃれなお店という第一印象、マニアックなレコードがたくさんあるのも興味深かった。1階の店舗、2階はカフェスペース。2階でぜひライブを、という話が4ヶ月を経て実現したのがこの日のライブ。
吉祥寺から川越までは車で高速道路を使って50分くらい。行ってみたかったお店がひとつあったので寄り道。芽瑠璃堂というレコード屋さん、かつて50年前に吉祥寺にあった伝説のレコードショップなのだけど、近年はオンラインで、そして8月に川越に実店舗がオープンした。カフェを併設した素敵なお店だった。奇しくも前週に共演した近藤智洋さんのPEALOUT、R.E.M.の日本語カバー「世界の終わる日」が収録されたレコードを釣り上げ、ライブ前からホクホク。
開場前から1階店舗では物販が始まって、小さな空間にお客さんがたくさん集まってレコードや雑貨を眺める風景はいいものです。みんな小さなささやかなものが好きなのね。懸念されていた暑さは、やっぱりそれなりに暑く、しかし暑くなければ夏の日のライブではないわけだから、これはこれで、いいのです。満員御礼、立ち見も出るなかでまだ窓の外は明るいうちにライブスタート。
店主のアッキーさんのリクエストリストは『新しい青の時代』の曲から始まっていた。僕の音楽に最初に触れたレコードだそうだ。なのでオープニングは「どこへ向かうか」「一角獣と新しいホライズン」という流れ。僕は今年あと何回夏の歌をライブで歌うのだろうか、「夏の日の幻」「長期休暇の夜」、そして「目に見えないもの」の歌が持つ切なさが背景によく似合っているように感じた。「長距離ランナー」は誰かがリクエストしてくれた曲、「晴れた日のアスリート」はスポーツマンつながりで。首を振る扇風機、そして風鈴がいいタイミングで鳴ってくれて暑さをそっと冷ましてくれるよう。
amistのレコードをサクサクと眺めていて、「ここにはトラッシュキャン・シナトラズがありすぎますね」「うちでは全然売れないんです」というやりとりがあった。他にも「なんでBlueboyが何枚もあるんですか」とかなんとか、そういう話も。店主が好きなものを並べてそれをお客さんが買ってくれないというジレンマは音楽好きの僕にも痛いほど理解できる。なのでこの日はトラッシュキャン・シナトラズの名曲「How Can I Apply?」をカバー(終演後確認したら誰かが『I've Seen Everything』を買って帰ったみたいで嬉しかったです)。8月レギュラーのR.E.M.カバー、この日はアッキーさんリクエストで「Imitation of Life」からの「月あかりのナイトスイミング」。The Smiths「ASK」カバーからの「スミス」っていうのもレコード屋さんでのライブならではかなと思います。
ママンの話から「シャーとニャーのはざまで」。思えば春にこのお店に来たときも「ママンのシャーはたまりませんね」と猫飼いのamist安井夫妻と盛り上がったので、あれから4ヶ月でママンがうちの猫になったのは感慨深い。新曲「あいとわをん」そして、先週作った「八月のベルカント」もまた歌いたくて、でもギターアレンジにするのはちょっとずるいなと思ったので小さなキーボードを持ってきて膝の上で弾き語り。「glenville」で歌われる風景はまるでこの小さな旅の風景とリンクするよう。「小さな巣をつくるように暮らすこと」をマイクを通さない生音で。
アンコールは「baby driver」、amistでは『memori』をたくさん売ってもらいました。「my favorite things」もこういうお店の人が好きなものをかき集めたような空間ではさらによく響く気がします。「セラヴィとレリビー」で締めくくり。めちゃくちゃ暑かったけど爽やかさもあるような、とても素敵な真夏の夜の演奏会でした。冷たいレモネードが美味しかったな。一回きりにならないようなまた次は春か秋に歌いにきたいです。遠くから近くから小さな旅をしてamistにたどり着いてくれてありがとう。amist安井さん、アッキーさんにも心から感謝を。