2024年11月13日

シャーとニャーのはざまでーチミママのこと(1)

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チミママとの出会いは10年前にさかのぼる。2014年初夏に13年一緒に暮らした愛猫ポチを亡くし、意気消沈した夏を過ごして迎えた初秋、我が家の小さな庭に現れた仔猫ポチ実を保護するまでの狂騒のあとほどなくして塀の上でその涼やかな目で僕の家の灯りを見つめる猫を僕はチミママ、ママンと呼んだ。実際僕の住むエリアで数年にわたり野良猫を産み増やしているのがママンであることが判明、ポチ実の実のお母さんであるチミママはそれから娘の樣子を伺うかのように我が家の庭を頻繁に訪れることになった。猫は親離れ、子離れするのが早く、親子であるという認識はすぐになくなってしまうらしい。それでもしかし、チミとママンの間にはなにかしらの“魂の通信”のようなものがあり、僕はママンの眼差しに対峙すると「チミを連れ戻されてしまうんじゃないか」と少し怖く感じるときもあった。

翌年、また仔猫を産んだママン。僕は保護猫活動をされている知人に連絡して、2匹の仔猫と親猫ママンともども捕獲してもらった。2匹の仔猫は里親が見つかり、ママンはTNR(捕獲して不妊手術してもといた場所に戻す)された。野良猫や地域猫に関する考え方は人それぞれで「猫がかわいそうだ」と批判的な意見もあるかもしれないけれど、僕が一番いいと思った方法がそれだった。晴れて地域猫となって今後野良猫を増やすこともなくなったママンにこれでようやく堂々とご飯があげられるし、何より妊娠出産を繰り返すことがなくなったことでママンの身体的負担がなくなることが嬉しかった。しかし、その後ママンは約半年姿を見せなくなる。捕獲器で捕らえられたトラウマもあるだろうし、もう会えないのかなと思ったある日、またこつ然とママンはうちの庭に現れた。そのときの嬉しさ。チミも僕も大興奮してふたりしてガラス窓に顔を近づけたことが忘れられない。

それ以来、ママンは定期的にうちの庭にやってきてご飯を食べるようになった。僕が手を伸ばすとママンが「シャー!」と顔を般若のようにして威嚇するやりとりがいつ頃から始まったかはっきりとは覚えていないけれど、とにかくママンは野性味あふれるかっこいい猫として僕の視界に毎日現れた。夏になると蚊の問題が毎年の懸案になった。毛の少ない耳や鼻を狙って刺されたママンは蚊アレルギーで、痒くてかき壊してしまう。耳は血が出て真っ赤になり、鼻も喧嘩したみたいにボコボコに。塗り薬を塗れないかわりに病院で処方してもらった抗生剤をご飯にまぜてあげたりするけれど、6月から9月にかけてママンの姿はかなり痛々しかった。冬が来るとママンはとても元気になる。傷が癒えてまた薄い毛がはえてきて、とても美しい姿に戻るのだ。庭に作ったシェルターに「ママン・メゾン」という名前をつけて、防寒のアルミ素材とか電気アンカなどを仕込んだ。外で暮らすママンにせめてもの贅沢をさせたくて、その心地良さはママンもまんざらではなさそうで、冬から春にかけてはとても穏やかな暮らしが続く。そしてまた夏が来る、というのをこれまで何度も繰り返してきた。

2024年の夏の暑さは観測史上一番の暑さだった。みるみるうちに蚊アレルギーで見るに耐えない姿になり、食が細ってかなり痩せた。この暑さがあと2ヶ月以上続くのか…、今年でうちに通ってきて10年になるママンはどう見積もっても老猫の年齢。ママンの命を守りたい、と思って7月あたりから準備を始めてママンを保護する計画を進めた。窓を開け放った家の中にご飯をおいて誘いこんだり、ケージを用意したり。先住猫のポチ実がどう反応するか、10年野性のままのママンが人馴れするのか、外の自由な暮らしを謳歌している彼女を家に閉じ込めていいのか、など不安要素がたくさんあったけれど、ママンに生きてほしいという想いと天秤にかけて、命を選択した。果たして8月の最初の夜に、ご飯を食べて油断しているママンの背後の窓を光の速さで閉めた。うちに閉じ込めた。パニックになってうろたえるママン、アオンアオンと大きな声で鳴く。ママンがうちの猫になったとき、日付が変わって8月2日の真夜中になっていた。その不安そうな姿を眺めてママンってこんなに小さかったんだなと思った。いつの間にかママンは家のなかのどこかに隠れてしまってその晩は家庭内野良になってしまった。僕も疲れてソファで寝た。

さあ、新しい朝が来た。今日からどうしようかね、ママン。よろしくね。これからどうなるかを記録してきたいと思います。(気まぐれに続く)

*最上部の写真は保護する直前、昼間のママン。下記の写真は保護した直後のママン。最下部はうちの猫になって3ヶ月過ぎてソファでくつろぐ姿。ママンの気持ちや感情みたいなものがとても象徴的に映り込んだ3葉の写真。

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Posted by monolog at 23:09│Comments(1)
この記事へのコメント
写真を見比べると一目瞭然、保護直後ママンは痩せてるし、緊張(お家に閉じ込められたからね〜😅)したお顔だけど、3ヶ月経過したママンは穏やかな家猫のお顔だし、ちょっとふっくらしたのかな?
もう痒いのも、寒いのもなく、ごはんに困ることもないね〜✨
3人家族でずっと仲良く暮らそうね〜🤗
Posted by バニバニ at 2024年11月14日 22:30