学生時代は練馬の豊玉北という街に住んでいたから江古田は隣町という感じで、でも江古田に出かけるのはもしかしたら学生時代以来かもしれない。大学時代の先輩のバンド「遅れてきた青年」が7年ぶりのライブをやるというので土砂降りの雨の中を向かった。ボーカルの東さんは僕の4つ歳上だったか。文字通り憧れの先輩だった。憧れ余って僕はバンドに入れてもらってギターを弾いていたこともある。「遅れてきた青春」という曲はもちろんこのバンド名から触発されたもの。この日は前座に「遅れてきたスミス」というスミスのコピーバンドの出演も発表されたのだけど、僕は遅れてきたスミスの演奏で初めてThe Smithsの曲を聴いた。そして大好きになってこのバンドでもベースを弾かせてもらっていたことがある。演奏するのは推定30年ぶりというのだから、この日のライブは是が非でも目撃したかったのです。
小さなカフェはぎゅうぎゅうの満員。一緒にバンドをやっていた先輩、同級生、後輩と同窓の知った顔がたくさん。GOMES THE HITMANからは須藤さんがバンドメンバーだし、堀越メンバーも来てて、あとは初期メンバーの山田靖くんと久保公平くんまで現れてびっくり。期せずして、というかそういう予感もあったけれど同窓会みたいな雰囲気に。それでもこの日のメインは音楽で、遅れてきたスミスが演奏を始めると小さなカフェは薄暗い地下のライブハウスみたいになった。遅れてきたスミスもボーカルは東さんで、ドラムが田口さん(この人とはお湯というバンドを一緒にやっていた。凄腕女性ドラマー)、ベースが元メルトバナナのリカさん、ギターが須藤さん。僕も参加したかった。
遅れてきた青年が演奏した曲のほぼすべてを知っていた。カセットテープを何度も聴いたのがもう30年も前なのだ。東さんは大学に入学して最初に出会った詩人であり、その後に他の詩人は現れなかった。影響を受けて自分も歌詞を書いたし、その演奏を聴いていてGOMES THE HITMANの超初期の楽曲は多分に遅れてきた青年の影響を受けてるんだなと再確認しました。僕の好きな「一番高い塔の歌」という歌があって、それを聴くともう今は存在しない北区西ヶ原4丁目の東京外国語大学のキャンパスを思い出す。先輩はずっと先輩。この日もちょっと緊張しながら談笑してまたそぼふる雨の中を帰路につきました。良い夜だった。