オープニングの「ready for love」「アップダイク追記」のみセットリストは決まっていて、「クジ引きで」と発表したときの会場のどよめき。活動の時系列でパートをわけて抽選し、ライブとしての流れを考慮して曲順はその場で決めました。ホワイトボードを三枚使ってライブなんて初めて。どんな流れだったかは公開されているセットリストをご覧いただきたい。「hello hello」を久しぶりに演奏したのが楽しかったな。


後半「sound of science〜愛すべき日々」からも同様に進み、バンドの歴史を辿ります。「かげおくり」にリクエストが複数あって、しかしこの曲をバンドで演奏した機会というのがほとんどなく(あったとしてもみんな忘れている)ほぼほぼ“新曲”のように練習、「三叉路から」もそうで、この2000年代中盤の楽曲は僕がひとりで作ったデモで立ち止まっているものが多い。だからそれを「レモンティーと手紙」を核とする未発表曲パートにした。あの頃の記憶はとても曖昧で、曲を作ったときの気持ちも忘れていて、だからこの日は「三叉路から」のエピソードを“捏造”した。もしかしたら本当にそういう曲だったのかもな、と思いながら(ウソついてごめんなさい)。
大阪でもそうだったけれど、リクエストを募った結果嬉しかったのは最新オリジナルアルバム『memori』楽曲へのリクエストが多かったこと。2019年末にリリースされたこの作品はコロナ禍の憂き目にあってじゅうぶんな演奏を重ねられていないから、あれから5年経った今もう一度立ち返ってみることにも意味があった。個人的には本編を「ブックエンドのテーマ」で終われたら美しかったのに!ということだけれど、アルバム収録バージョンで演奏した「夢の終わりまで」がとてもエモーショナルだったこと、「memoria」の客席からのさえずりがとても美しかったことが印象に残りました。ありがとう。


大阪と同じく、一番たくさんのリクエストを集めたのは「手と手、影と影」だった。僕がこの曲を書いたのは2004年肺気胸という病気に倒れて活動を半年休止した時期でした。「ひとつしか叶わない願い事を〜立ち尽くした影と影」という歌いだしの8小節だけのデモを繰り返し聴いて膨らませていった病床の思い出。明るい歌でもスカッとする曲でもない、深く思考して立ち尽くす歌に一番リクエストが来ること、GOMES THE HITMANというバンドの性質、山田稔明というソングライターの性格をファンの皆さんが受け止めてくれているんだなと感動しました。最後まで付き合ってくれてありがとう。「maybe someday ep」で大団円。3時間半の今年最後を飾るGOMES THE HITMANオールリクエストライブでした。
リハーサルをしていて、本番でやらないかもしれない曲を練習しながらメンバーそれぞれが「これやりたい!」と何度唸りをあげたことか。来年のライブでもリクエストに応えるコーナーをやろうと思います。この日は満員御礼で、久しぶりにライブに来てくれた人、初めてライブに足を運んでくれた人、いつも来てくれている人、友達、スタッフみんながどうなるかわからない展開のライブを最後まで見守ってくれました。あらためて全方位的に感謝の言葉を。本当にありがとうございました。また来年もよろしくお願いします。
この日のライブのセットリストをSpotifyとApple Musicのプレイリストにしました(新曲など除く)。この日のステージを思い返しながら、あるいは想像しながら、年末年始にぜひお楽しみください。