大阪、街並み、思い出
先週の関西ツアーで大阪阿倍野区の本屋亜笠不文律を訪れたとき、路面電車が走っている風景に出会って記憶が蘇った。阪堺電車というやつで、大阪府下に唯一残る路面電車。「チン電」の愛称で市民の足として親しまれている。通天閣のすぐそばにある恵美須町から、堺の浜寺駅前までを結ぶ阪堺線と、天王寺駅前から住吉までを結ぶ上町線の2線。
記憶が蘇った、というのは父親がかつて暮らした天下茶屋の町はこの沿線にあったからだ。僕が10歳のときに両親が離婚したあと、僕は母と九州で暮らし、父は大阪へ生活の拠点を移して中古自動車屋を営んだ。中学生になると僕は夏休みに父の住む大阪へたびたび遊びにいくようになる。ドキドキしながら佐賀の田舎から大阪の大都会へ。父の住む天下茶屋は雑然として生活感あふれる町で、佐賀にはない風景だった。なにをするでもなく滞在する1週間と少し。父は昼間はもちろん仕事なのでお小遣い1000円を渡され僕は好き勝手に父が帰宅する夜が来るまでを過ごす。
今日はどこへ行こうか。昼ご飯なに食べようかな。パンで済ませて残ったお金でマンガ本でも買おうか。電車に乗ってどこかへ行ってみようかな。ちゃんと帰ってこれるかな。中学生の僕にとって一人で未知の町を散策するのは冒険みたいなものだった。雨が降って出かけられない日は父のアパートの部屋で仰向けになって、野球の軟球ボールを壁に投げてそれを受け止めて時間を過ごした。僕のその遊びのせいで階下の住人から父が「音がうるさいねん」と怒られて謝りにいったことを憶えている。35年くらい前に坊主頭の僕が無邪気に駆け回った町はこのあたりだったのだろうか、と想像しながら阪堺電車と並走しながら車を走らせた。今度来るときにはこの電車に乗ってみたい。
父と母が眠る一心寺もそこから車ですぐのところにあったので、今回のゆとりのない旅スケジュールにもかかわらず手を合わせて“お墓マイレージ”を貯めることができた。一心寺はいつ来ても人がいっぱいで花が溢れてお線香が煙たく、とても賑やかだ。天気もよくて気持ちがすっきりした。ほんの一瞬の時間旅行みたいな、心がじんわりするようなマインドトリップでした。

Posted by monolog at 23:23│
Comments(4) │
是非、次回はチン電乗ってみて下さい。
私は大阪在住で子供の頃、祖母の家が浜寺近くの石津ってとこだったので夏はチン電乗って浜寺ジャンボプールに遊びに行ってました。でもそれ以降は乗ることも無くなり存在自体も忘れてました(笑)でも数カ月前に急に懐かしくなり、何十年かぶりに乗りに行きました。こんな感じやったかなぁ?とあまりピンと来なかったけど、こんな感じやったんやろなと自分に言い聞かせてチン電を降車しました(笑)
天下茶屋も今でこそ駅前にマンション出来たり、小洒落たお店ができ、民泊などで外国人も多く、にぎやかでキレイな街になりつつありますが、山田少年の頃の天下茶屋はなんともいえない独特な空気の町だったのではないでしょうか?まさか山田少年が天下茶屋で過ごしていたとは…(驚)
ちなみに私は日曜と祝日のみ天下茶屋で仕事してます。一心寺さんも母がいてるので手を合わせに行きます。一心寺さんの近くに堀越神社ってあって、その前を通る時、心の中で堀越さ〜んって呼ばずにはいられません(笑)以上です。長々すみません(汗)
35年前の稔明少年とお父様の笑顔を想像しながら読ませていただいて、こちらも心がじんわりしました☺️
中学生の頃の大阪での山田さんのワクワクドキドキと少しの不安、手に取るようにわかります。
離婚されたけれども時を経て今また同じお寺に眠るご両親。再会されて山田さんのお話をずっとされているのだろうなと想像してしまい感慨深いです。
山田さんの少年時代のお話ありがとうございます。
中学生で知らない土地を冒険するの毎日がワクワクドキドキですね。こちらまで楽しくなりました。
ご両親が一心寺に眠られてるなんてビックリです。
主人の両親も一心寺なので今度お参り行った時にご挨拶させて頂きます😊