僕は家についてすぐスマホで撮ったチラシに書いてあった電話番号にショートメッセージと写真を送ろうと試みたけれど、ショートメッセージでは画像が送れない。メールアドレスも併記してあったけれどコピーチラシの文字がつぶれて写真からは判読できず。僕はもう一回そのチラシが貼ってあった電柱まで歩いていってなんとかメールアドレスを読み取った。そこに写った猫と、僕がさっき撮った猫、見比べてみて残念ながら「眉間の模様が違う気がするなあ…」と思った。僕が撮ったのもズームアップして画像の粗いものだったから100%の確信はないけれど、でも少しでも可能性があればと思って写真とともにその猫のいた場所を詳細に記してメッセージを送った。
「とても似てるのでうちの猫の可能性があります!ありがとうございます!」と返事が来たけれど、僕は似てないと思っているわけだから、なんとも複雑な気分だった。早く見つかりますように。数日後、うちの近所に猫の捕獲器が置かれるようになった。あの尋ね猫の飼い主さんが仕掛けたものだった。何箇所くらい置いてるんだろうか、大変な作業である。「一日に何度か見回りにきます。ご迷惑をおかけしてすみません」という旨のメモが貼ってあった。そこから2週間くらいその捕獲器は設置された。一度はヒヨドリがその捕獲器のなかでピーピー鳴いていて、罠をほどいて逃がしてあげた。捕獲器を触ったのは初めてだったけれど、開けるのがすごく難しかった。ものすごい勢いで飛んでいったヒヨドリよ。
「猫が見つかりました」と飼い主さんからメッセージが来たのは先週の日曜日、大阪でのライブが終わった後だった。3、4日前から自宅近くに戻ってきたところを例の捕獲器で捕まえたそうだ。どこかでご飯をもらっていたのか元気で健康体。なぜか一緒に茶白の猫も付き添いでやってきたんだって。僕が見たトラ猫はきっと帰ってきた猫ちゃんとは違う猫だと確信しているので、やっぱりこの町にはまだ猫がたくさんいろんな物陰に潜んでいるだろうなと思う。
僕は飼い主さんに「よかったですね!!!!」といっぱい感嘆符をつけて短い返事を送った。一度も自分の名前を名乗らないままのやりとりだった。猫が帰ってきて本当によかった。
