吉祥寺で用事をすませて帰路の途中、異様な行列に出くわす。異様というのはやたらとみんな赤と白のボーダーシャツ、かと思うとおどろおどろしいイラストのTシャツを着ている人もたくさん。それは吉祥寺にある某ホテルのホールで開催される楳図かずお先生のお別れ会に向かう列だった。吉祥寺に20年以上暮らしているから、何度楳図先生と道で遭遇したかは数え切れない。嬉しくていつも「こんにちは」と小さな声で会釈したり、良きタイミングのときにはひとことふたことお話させてもらうこともあった。
佐賀の田舎の、小学生のときの溜まり場だったお好み焼き屋さんで「漂流教室」を読んだときの衝撃を忘れない。なぜだろう、楳図先生がいない世界を生きているという実感がわかないのだ。地上からふわりと少し浮いたところを先生はいつも歩いていると思っていたけれど、案外今もそのまま、少し離れた浮世にいるのかもしれないなと感じる。赤と白の花を持って、みんなニコニコしていた。

Posted by monolog at 23:08│
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