5月の連休明けに浮かない気持ちで髪を切りに出かけた。4月の終わりからずっと猫のママンの病気のことで慌ただしくてくたびれてて、耳切除の手術をした直後くらいの落ち着かないタイミングだったのと、髪を切りにいったら「山田くん、連休は何してたの?」って絶対訊かれると思ったから、話さないわけにもいかないし気が重かったわけです。指を噛まれて包帯してたり手の甲が傷だらけだったりもするし。で、やっぱり猫の話になるわけだけど、その日偶然にも隣の椅子で髪を切られている僕より少し年上の男性のおうちの猫も4月の終わりから猫が体調不良で大変、というので、慰め合いというか「お互い大変ですね」と訥々と話しこんでしまった。そちらの猫ちゃんは18歳という高齢で、腎臓がよくなくてご飯を全然食べなくなったので3時間おきに強制給餌や水をあげたり家族付きっきりで介護しているそうで、お互い猫の写真を見せあって「かわいいですねえ」と目を細め合う。励ましの言葉やエールを交わし合うわけではないけれど、小さな生命を前にして翻弄される者同士での会話はひとときの癒しとなり、インスタグラムのアカウントをフォローしあって、それぞれの猫を遠くから見守ることになった。
それから2ヶ月と少し経ったつい最近、また偶然同じ時間帯にヘアサロンでその人に会う機会があった。ママンの耳の予後は想像以上に順調、しかし先方の猫ちゃんが少し前に命を燃やし尽くして亡くなったことを僕は知っていたから、インスタグラムに投稿された猫の顔を色鉛筆でスケッチして、その方へのプレゼントにした。その絵をとても喜んでくれたし「ママンよかったね」とねぎらってもくれた。多分僕ら二人ともちょっと泣いていた。それから猫の話やなんでもない世間話をして、またいつの日かの再会を約束して別れる。こないだまで全然知らない人だったのに、とても近しく感じるから不思議だ。僕は髪の毛が軽くなって足取りも少し軽くなって、都会のバスに乗って帰る。サロンと猫と人間模様、良い一日だったなと思いながら。
